【2024年度改定版】後発医薬品調剤体制加算の算定要件や改定内容をわかりやすく解説

後発医薬品の使用率は年々増加していますが、後発医薬品の使用割合が薬局の運営にどのような影響があるかご存知でしょうか。後発医薬品を推進していく上で、自店舗における後発医薬品調剤体制加算の算定状況を正しく理解することは大切です。本記事では、後発医薬品の算定要件や施設基準、届出に必要な後発医薬品の使用割合やカットオフ値の計算方法についても詳しく解説します。また、近年の後発医薬品供給不足に伴う対応についてもお伝えしていきます。
後発医薬品調剤体制加算とは
後発医薬品調剤体制加算とは後発医薬品の使用を推進していることに対する加算項目であり、調剤基本料にかかります。後発医薬品調剤体制加算1・2・3の3区分あり、後発医薬品の使用割合が高い薬局ほど高い点数が算定可能です。
患者の負担や医療費軽減が主な目的
後発医薬品の普及は、患者の薬にかかる費用の負担軽減と、医療費の削減が主な目的とされています。後発医薬品調剤体制加算で後発医薬品の使用推進を後押しすることで、こういった問題を解決していくことが期待されています。
後発医薬品普及の現状
厚生労働省は後発医薬品の普及に向けて、2013年4月に「後発医薬品の更なる使用促進のためのロードマップ」を策定しました。主な概要は以下の通りです。
○ 後発医薬品の数量シェアを平成30年3月末までに60%以上にする。
また、達成状況をモニタリングし、その結果を諸外国の動向を踏まえ、適宜見直す。
○ 後発医薬品の更なる使用促進のための取り組みについてもモニタリングを行い、その結果を踏まえ必要な促進策を適宜追加する。
【後発医薬品の使用促進のための主な取り組み内容】
① 安定供給
② 品質に対する信頼性の確保
③ 情報提供の方策
④ 使用促進に係る環境整備
⑤ 医療保険制度上の事項
⑥ ロードマップの実施状況のモニタリング
その後も後発医薬品の使用割合については、2017年に70%以上、2020年9月までに80%以上といったように段階的に目標を定めてきました。
2024年、「後発医薬品の更なる使用促進のためのロードマップ」を「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」として改訂し、数値目標も以下の通り新たに立てられました。
【新たな数値目標】
- 主目標:医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上(旧ロードマップから継続)
- 副次目標①:2029年度末までに、バイオシミラーが80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上
- 副次目標②:後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上
参照:後発医薬品(ジェネリック医薬品)及びバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進について /厚生労働省
参照:後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ
参照:安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ
後発医薬品調剤体制加算の算定要件・点数
後発医薬品体制加算では、区分によって算定点数が異なりますので、それぞれの算定要件と点数を確認していきましょう。
後発医薬品調剤体制加算1・2・3について
後発医薬品調剤体制加算は1〜3の3区分です。
施設基準を満たし、適切に届出を行った薬局が以下の点数を調剤基本料に加算することができます。
区分 | 点数 |
後発医薬品調剤体制加算1 | 21点 |
後発医薬品調剤体制加算2 | 28点 |
後発医薬品調剤体制加算3 | 30点 |
参照:調剤報酬点数表 /厚生労働省
特別調剤基本料A・Bを算定している薬局の算定要件は以下の通りです。
調剤基本料の区分 | 後発医薬品調剤体制加算の算定要件 |
特別調剤基本料A | 後発医薬品調剤体制加算の所定点数を100分の10にし、 小数点以下第1位を四捨五入した点数を算定 |
特別調剤基本料B | 算定不可 |
後発医薬品減算について
後発品の使用割合が低い薬局は、調剤基本料から5点を減算することと定められています。
直近の3ヶ月の後発品置換率を翌月に判断し、同月内に必要な届出を行った上で、翌々月から減算します。
【後発医薬品減算の要件】
- 後発医薬品の使用割合が50%以下
-
直近1年間に地方厚生局長等に後発医薬品の使用割合について報告を行っていない
(※報告を行った場合は、翌月より減算しなくてよい。)
ただし、以下の場合は減算の対象外となります。
- 処方箋受付回数が1ヶ月に600回以下の場合
- 直近1ヶ月の処方箋受付回数のうち、先発医薬品の変更不可の記載がある処方箋の受付回数が50%以上の場合
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて /厚生労働省
後発医薬品調剤体制加算の施設基準
後発医薬品調剤体制加算の施設基準は、全区分共通の要件と区分ごとの後発医薬品の使用割合(後発品置換率)がそれぞれ定められています。
【全区分共通の施設基準】
- 調剤した薬剤の規格単位数量に占める後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品を合算した規格単位数量の割合(カットオフ値)が50%以上
- 薬局の内側及び外側の見えやすい場所に「後発医薬品の調剤を積極的に行なっていること」を掲示
- 薬局の内側の見やすい場所に「後発医薬品調剤体制加算を算定していること」を掲示
【区分ごとの施設基準】
共通の要件に加えて、基準となる後発医薬品の使用割合(後発品置換率)が区分ごとに定められています。この数値が高い薬局ほど高い点数で後発医薬品調剤体制加算を算定することができます。
直近3ヶ月の後発品置換率を翌月に判断し、同月内に必要な届出を行った上で、翌々月から所定の点数が算定可能です。
区分 | 後発品置換率 | 算定点数 |
後発医薬品調剤体制加算1 | 80%以上 | 21点 |
後発医薬品調剤体制加算2 | 85%以上 | 28点 |
後発医薬品調剤体制加算3 | 90%以上 | 30点 |
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて /厚生労働省
後発医薬品の使用割合の算出方法
後発医薬品の使用割合(後発品置換率)は、2013年の「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」で新指標が示されて以来、その計算方法に則り算出されています。
後発品置換率 = 【後発医薬品】 【後発医薬品のある先発医薬品】 +【後発医薬品】
参照:後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ /厚生労働省
カットオフ値とは
カットオフ値は以下の方法で算出することができます。
後発医薬調剤体制加算の算定にあたっては、全区分共通で50%以上である必要があります。
カットオフ値 = 【後発品のある先発医薬品】 +【後発医薬品】【当該保険薬局において調剤した薬剤】
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて /厚生労働省
後発医薬品調剤体制加算の除外品目
後発医薬調剤体制加算において、後発品置換率やカットオフ値の計算で用いる「後発医薬品(の規格単位数量)」を算出する際に一部の医薬品は除外されます。
※「後発医薬品の規格単位数量」とは、薬価基準上の規格単位ごとに数えた数量のこと
【後発医薬品の規格単位数量の割合を算出する際に除外する医薬品】
ア 経腸成分 栄養剤 |
エレンタール配合内用剤、エレンタールP乳幼児用配合内用剤、 エンシュア・リキッド、エンシュア・H、ツインラインNF 配合経腸用液、ラコールNF配合経腸用液、エネーボ 配合経腸 用液、ラコールNF配合経腸用半固形剤及びイノラス配合経腸用液 |
イ 特殊ミルク 製剤 |
フェニルアラニン除去ミルク配合散「雪印」及びロイシン ・イソロイシン・バリン除去 ミルク配合散「雪印」 |
ウ 生薬 | 薬効分類番号 510 |
エ 漢方製剤 | 薬効分類番号 520 |
オ その他の生薬 及び漢方処方に 基づく医薬品 |
薬効分類番号 590 |
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて /厚生労働省
先発医薬品に対する後発医薬品の有無や、上記のような除外品目のリストは、厚生労働省が常に最新の情報をホームページ上で公開していますので、定期的に確認をするようにしましょう。
参照:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について /厚生労働省
後発医薬品調剤体制加算算定に必要な届出
後発医薬品調剤体制加算を算定するためには、別添2の様式87を地方厚生局へ届け出る必要があります。
この書類には、後発医薬品の使用割合やカットオフ値も記載する必要がありますので、正しく算出して届出を行いましょう。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて /厚生労働省
後発医薬品の供給不足と使用割合が下がった場合の対応方法
近年、薬価引き下げや一部メーカーによる後発医薬品の供給停止といった影響から、多くの品目において後発医薬品の供給不足が起こり、薬局運営にも大きな影響を与えています。
後発医薬品の使用を希望する患者に対しても先発医薬品での調剤を余儀なくされ、後発医薬品の使用割合が下がるケースも増えています。