【2026年改定版】病棟薬剤業務実施加算の算定要件をわかりやすく解説
病棟業務の中で、薬剤師の役割がますます重要視されてきています。病棟薬剤業務実施加算は、医療従事者の負担削減や患者ケアの質向上に貢献する病院薬剤師の専門性を評価したものです。2026年度(令和8年度)の診療報酬改定においても見直しが行われています。
今回は、病棟薬剤業務実施加算の算定要件や施設基準、2026年の改定内容について解説していきます。
病棟薬剤業務実施加算とは
病棟薬剤業務実施加算とは、医療機関が診療報酬を請求する際、入院基本料や特定入院料に加算できる点数です。
病院薬剤師が入院患者さんに対して適切な薬剤管理業務を行うことで、医療従事者の負担削減や患者さんの安全な薬物治療がさらに強化されることを目的としています。
2026年度診療報酬改定における変更点
2026年度(令和8年度)診療報酬改定では、新たな区分が新設されました。
| 改定前 | 改定後 |
| ー | 病棟薬剤業務実施加算1(週1回300点) |
| 病棟薬剤業務実施加算1(週1回120点) | 病棟薬剤業務実施加算2(週1回120点) |
| 病棟薬剤業務実施加算2(1日につき100点) | 病棟薬剤業務実施加算3(1日につき100点) |
新区分は従来のものよりも大幅に点数が高く設定されていますが、その分算定のハードルも高くなっています。
そのため単に病棟での薬剤管理業務を実施するだけでは十分ではなく、実績も求められます。
病棟薬剤業務実施加算の算定要件
薬剤師が病棟において病院勤務医等の負担軽減及び薬物療法の有効性、安全性の向上に資する薬剤関連業務(病棟薬剤業務)を実施している場合に算定できます。
病棟薬剤業務実施加算には3区分があり、次のような違いがあります。
算定点数
| 区分 | 算定点数 |
| 病棟薬剤業務実施加算1 | 300点(週1回)【2026年新設】 |
| 病棟薬剤業務実施加算2 | 120点(週1回) |
| 病棟薬剤業務実施加算3 | 100点(1日につき) |
病棟薬剤業務実施加算1・2・3の違い
病棟薬剤業務実施加算1・2とは一般病棟入院料、療養病棟入院料等を算定する病棟が対象となり、病棟薬剤業務実施加算3とは、救命救急入院料、特定集中室管理料等を算定する高度急性期医療に係る治療室が対象となります。
ただし、すべての場合において加算できるものではなく、以下の入院基本料または特定入院料を算定している患者さんが対象となります。
【病棟薬剤業務実施加算1・2の算定対象】
- A100:一般病棟入院基本料
- A101:療養病棟入院基本料
- A102:結核病棟入院基本料
- A103:精神病棟入院基本料
- A104:特定機能病院入院基本料
- A105:専門病院入院基本料
- A304:地域包括医療病棟入院料
- A307:小児入院医療管理料
【病棟薬剤業務実施加算3】
- A300:救命救急入院料
- A301:特定集中治療室管理料
- A301-2:ハイケアユニット入院医療管理料
- A301-3:脳卒中ケアユニット入院医療管理料
- A301-4:小児特定集中治療室管理料
- A302:新生児特定集中治療室管理料
- A302-2:新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料
- A303:総合周産期特定集中治療室管理料
また、A101療養病棟入院基本料、A103精神病棟入院基本料、A104特定機能病院入院基本料(精神病棟に限る)を算定する患者さんについては、入院した日から起算して8週間を限度とします。
参照:別表第一 医科診療報酬点数表 /厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項 /厚生労働省
病棟薬剤師に関わるその他の評価項目について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
病棟薬剤業務実施加算を算定するために実施するべきこと
病棟薬剤業務実施加算を算定するために実施するべきことは主に以下の通りです。
1)患者さんに関する情報収集と処方設計・提案
2)他職種へ重要な医薬品情報を提供
3)必要な薬学的管理
ひとつずつ確認していきましょう。
1.患者さんに関する情報収集と処方設計・提案
患者さん又はご家族から、過去の投薬・注射・副作用発生の状況等を聞き取り、持参薬も確認した上で、処方設計・提案をすることがまず必要な業務となります。
2.他職種へ重要な医薬品情報を提供
医薬品緊急安全情報や医薬品・医療機器等の回収に関する情報など、最新の医薬品情報を外部から入手し、医療従事者へ周知することも重要です。
さらに、当該医療機関において投与される医薬品について、以下の情報を入手した際には、当該患者さんの診察を担当する医師に文書にて情報提供しなくてはいけません。
- 緊急安全性情報
- 医薬品・医療機器等安全性情報
- 医薬品・医療機器等の回収等
3.必要な薬学的管理
2種以上(注射薬及び内服薬を各1種以上含む)の薬剤を同時に投与する場合における投与前の相互作用の確認、ハイリスク薬等に係る投与前の詳細な説明、流量又は投与量の計算、退院時の薬学的管理指導の実施も病棟薬剤業務を行う上で必要な薬学的管理となります。
参照:医科診療報酬点数表に関する事項 /厚生労働省
参照:退院証明書 /厚生労働省
病棟薬剤業務の実施における留意点
病棟薬剤業務の内容によっては、医薬品情報の収集や抗がん剤の無菌調製など、必ずしも病棟において実施されるものではありません。
病棟専任の薬剤師は、別紙様式30 またはこれに準じた当該病棟に係る病棟薬剤業務日誌を作成・管理し、記入の日から5年間の保存が必要です。また、患者の薬物療法に直接的に関わる業務については、可能な限り診療録等へ実施内容を記録することが求められています。
さらに、病棟薬剤業務実施加算を算定できない病棟や治療室においても、病棟薬剤業務を実施するよう努めることとされています。
参照:医科診療報酬点数表に関する事項 /厚生労働省
病棟薬剤業務実施加算と薬剤管理指導料の違い
病棟専任薬剤師が病棟で行う業務は、一般的に薬剤の投与前と投与後で区分されます。
病棟薬剤業務は主に投薬前における患者さんに対する業務、医薬品の情報及び管理に関する業務、医療スタッフとのコミュニケーションです。
薬剤管理指導業務は主に投薬後における患者さんに対する業務であり、薬歴の確認や処方内容の再確認、退院時指導、薬学管理指導記録簿の作成などがあります。
参照:薬剤師の病棟業務の進め方(Ver.1.2) /日本病院薬剤師会
「薬剤業務向上加算」は病棟薬剤業務実施加算1・2に対する加算
薬剤業務向上加算は、2024年の診療報酬改定で新しく算定可能となった加算です。
さらなるチーム医療の推進と薬物治療の質の向上を図る観点から、地域医療に係る業務の実践的な修得を含めた病院薬剤師の充実した研修体制を整備した医療機関において病棟薬剤業務を実施することを評価するものです。
病棟薬剤業務実施加算1または2を算定している医療機関が対象であり、週1回100点を加算できます。
免許取得直後の薬剤師に対して総合的な研修を実施したり、都道府県との協力のもと、薬剤師が別の医療機関において地域医療に係る業務等を実践的に修得したりする体制を整備することが必要です。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要 【個別改定事項(Ⅱ)】 /厚生労働省保険局医療課
参照:別表第一 医科診療報酬点数表 /厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項/厚生労働省
病棟薬剤業務実施加算1・2の施設基準
病棟薬剤業務実施加算を算定するためには、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出る必要があります。
なお、届出は別添7の様式40の4を用いて行います。
病棟薬剤業務実施加算1・2はいずれも、共通の施設基準を満たす必要があります。そのうえで、病棟薬剤業務実施加算1については、さらに以下の実績要件を満たさなければなりません。
- 「A250」薬剤総合評価調整加算の算定回数が、直近3か月間で10回以上であること。
- 「B014」退院時薬剤情報管理指導料の算定割合が、直近3か月間で退院患者のうち4割以上であること。
続いて、病棟薬剤業務実施加算1・2の共通の施設基準をみていきましょう。どちらの区分もこれら全てを満たす必要があります。