【2024年度改定版】経管投薬支援料の算定要件や改定内容をわかりやすく解説

経管投薬は、経口での服薬が困難な患者にとって欠かせない治療手段です。しかし製剤特性や経管チューブの構造により、そのままの剤形では投与できない場合も多く、専門的な知識が必要となります。
この記事では、経管投薬支援料の概要や算定要件、さらに簡易懸濁法の具体的な方法や注意点について詳しく解説していきます。
経管投薬支援料とは
経管投薬支援料とは、経管投薬が必要な患者に対する、薬局における対人業務を評価するものとして、2020年に新設された薬学管理料です。
胃ろうなどの経管投与を実施している患者は、そのままの剤形では使用できない場合があるため、「簡易懸濁法」という手法が用いられます。簡易懸濁法が可能な薬剤かどうかの確認や、製剤特性に合わせた支援において、薬剤師が専門性を発揮していくことが重要です。
簡易懸濁法に関しては後ほど詳しく解説します。
対人業務を評価する薬学管理料に含まれる他の評価項目を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
経管投薬支援料の算定要件
経管投薬支援料は、胃ろう・腸ろうによる経管投薬または経鼻経管投薬を行っている患者に対して、簡易懸濁法による薬剤投与に必要な支援を行うことで算定が可能です。
経管投薬支援料の主な算定要件
算定対象患者 | 胃ろう・腸ろうによる経管投薬または経鼻経管投薬を行っている患者 |
算定点数 | 100点 |
算定上限回数 |
初回に限る (患者1人につき複数回の支援を行った場合も1回のみ) |
医師の求め |
必要 家族等の求めがあった場合等は、服薬支援の必要性が認められれば 医師の了解を得て実施 |
患者の同意 | 必要 |
なお、特別調剤基本料Bを算定する場合や当該患者の調剤を行っていない薬局では、経管投薬支援料を算定することができません。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 2020年3月31日 /厚生労働省
簡易懸濁法による薬剤投与を行う場合、以下のような支援が必要となります。
- 簡易懸濁法に適した薬剤の選択の支援
- 患者の家族または介助者が簡易懸濁法により経管投薬を行うために必要な指導
- 必要に応じて保険医療機関への患者の服薬状況およびその患者の家族等の理解度に係る情報提供
※所定の要件を満たすときは、服薬情報等提供料1/2/3を算定可能
簡易懸濁法は嚥下困難等の患者に対しても適用される場合がありますが、調剤報酬上の評価において点数を算定できるのは、経管投与を行っている患者に対してのみです。
参照:調剤報酬点数表に関する事項 /厚生労働省
参照:別表第三 調剤報酬点数表 /厚生労働省
簡易懸濁法とは
簡易懸濁法とは、錠剤の粉砕やカプセルの開封等を行わず、経管投薬の前に薬を55℃程度のお湯に入れて崩壊・懸濁させてから投与する方法のことです。
胃ろうや腸ろうなどの経管投与を実施する場合、チューブに薬を通せるようにこの方法を行います。
完全にお湯に溶けない薬であっても懸濁状態で投与できるため、使用できる薬の種類も増え、有効な服薬支援の一つであるといえます。
簡易懸濁法に使用するもの
簡易懸濁法を行うにあたり、以下のものを準備します。
- 懸濁するための容器
- 注入器
- 一回分の薬
- 55℃程度のお湯
※ミネラルウォーターは硬度が高い場合もあり、薬の効果に影響が出る場合があるためNG
簡易懸濁法の手順
ここからは、簡易懸濁法の手順を確認していきます。
- 容器に1回分の錠剤やカプセルをそのまま入れる。
-
55℃程度のお湯を20〜30m L程度いれ、10分間放置して薬を崩壊させる。
※10分を超えると配合変化のリスクが高まるため、速やかに投与すること。 - 容器をよく振り混ぜて懸濁させる。
- 薬の懸濁を確認後、懸濁液を注入器に吸い取る。
- チューブに接続して、懸濁液を注入する。
- 最後に注入器に20〜30mLの水を吸い取って10秒程度かけて注入し、チューブ内の懸濁液を全て注入する。
- 注入器を水で洗い、しっかり乾燥させる。注入器は1〜2週間を目安に新しいものに交換すること。
参照:はじめての簡易懸濁法 /金沢医科大学病院薬剤部
55℃のお湯の作り方
簡易懸濁法に使用する55℃程度のお湯は以下のようにして作ることができます。
- 沸騰したお湯(100℃)と常温の水を2:1で混ぜる。
- ポットの設定を60℃にしておき、少し冷まして利用する。
なお、アルカリイオン水やミネラルウォーターは硬度が高い場合があり、薬の効果に影響が出ることがあるため、水道水を使用するようにしましょう。
簡易懸濁法の注意点
簡易懸濁法を実施する上で、次に挙げる点に注意が必要です。
簡易懸濁の可否を確認する
薬によっては簡易懸濁ができないものもあるため、内服薬経管投与ハンドブック等を使用して、必ず実施する前に確認をしましょう。