【2026新設】調剤ベースアップ評価料・調剤物価対応料の算定要件を解説
2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定で新設された「調剤ベースアップ評価料」と「調剤物価対応料」。
これらは薬局経営や職員の賃上げにも関わる重要な改定項目ですが、「誰が対象になるのか」「どのような届出や報告が必要なのか」など、実務上わかりにくい点も少なくありません。
本記事では、調剤ベースアップ評価料・調剤物価対応料の算定要件や施設基準、届出方法など、算定する上で押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
調剤ベースアップ評価料・調剤物価対応料とは
2026年度の調剤報酬改定では、薬局における賃上げ支援と物価高への対応を目的として、「調剤ベースアップ評価料」と「調剤物価対応料」が新設されました。
調剤ベースアップ評価料は、薬剤師や事務職員など、薬局で働く職員の賃上げを支援するための評価項目です。令和7年度の賃金水準等を踏まえ、対象職員の賃上げを後押しする目的があります。
一方、調剤物価対応料は、医療材料費や光熱水費等の高騰を踏まえ、物価上昇への対応を目的としています。
参照:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】 /厚生労働省
2026年度(令和8年度)以降の賃上げ・物価高対策の流れ
調剤ベースアップ評価料および調剤物価対応料は、令和8年度から令和9年度にかけて段階的に対応する仕組みとして整備されました。
調剤ベースアップ評価料における対象職員の賃上げ目標は、以下のように設定されています。
- 令和8年度:+3.2%
- 令和9年度:+3.2%
(事務職員は+5.7%)
また、現段階では、調剤ベースアップ評価料・調剤物価対応料はいずれも、令和9年度6月以降の算定点数が、令和8年度6月時点の点数の2倍となるよう設定されています。
ただし厚生労働省は、令和8年度に保険薬局の経営状況等について調査を実施し、実際に支給された給与(賞与を含む)に係る賃上げ実績を詳細に把握するとしています。
そのうえで、実際の経済・物価動向が令和8年度診療報酬改定時の見通しから大きく変動し、薬局の経営に支障が生じた場合には、令和9年度予算編成において、加減算を含めた追加的な調整が行われる可能性も示されています。
参照:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】 /厚生労働省
調剤ベースアップ評価料・調剤物価対応料の算定要件
調剤ベースアップ評価料および調剤物価対応料の主な算定要件は以下のとおりです。
| 算定項目 | 算定要件 |
| 調剤ベースアップ 評価料 |
当該保険薬局において勤務する職員の賃金の改善を図る体制を評価するものであり、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険薬局において調剤した場合には、処方箋の受付1回につき4点を算定する。 |
| 調剤物価対応料 | 保険薬局において処方箋を受け付けた場合に、3月に1回に限り1点を算定する。 |
ただし、令和9年6月以降は、いずれも所定点数の100分の200に相当する点数により算定します。つまり、令和9年6月以降は調剤ベースアップ評価料として8点、調剤物価対応料として2点を算定することになります。
参照:別表第三 調剤報酬点数表 /厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項 /厚生労働省
調剤ベースアップ評価料の対象職員
調剤ベースアップ評価料による賃上げの対象となるのは以下の職員です。
- 40歳未満の薬局の勤務薬剤師
- 事務職員
薬剤師は賃金の支払いの対象となった月の初日時点で、40歳未満であれば対象職員として扱うとされています。事務職員に関しては年齢制限はありません。
一方で、以下の職員は対象外とされています。
【対象外となる職員】
- 事業主
- 使用者
- 開設者
- 管理者
- 40歳以上の薬剤師
- 業務委託により勤務する者
注目される点として、管理薬剤師は調剤ベースアップ評価料による賃上げの対象ではありません。40歳未満でも管理薬剤師として活躍している薬剤師は多くいますが、現段階ではそのような方は対象外となっています。
また、他の保険薬局又は事業所を主たる勤務先とし、当該保険薬局における調剤業務等に直接従事していない管理的業務に専従する者(本部職員、エリアマネージャー等) も、対象職員に含まれません。
参照:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】 /厚生労働省
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号) /厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その3) 令和8年4月20日 /厚生労働省
調剤ベースアップ評価料の施設基準
調剤ベースアップ評価料を算定するためには、厚生労働大臣の定める施設基準に適合する必要があります。
【調剤ベースアップ評価料を算定する際の施設基準より一部抜粋】
(1)調剤基本料に係る届出を実施している保険薬局であること。
(2)当該保険薬局に勤務する職員(対象職員)がいること。
(3)当該評価料により得られる収入は、対象職員の基本給又は決まって毎月支払われる手当 の引上げ(ベア等)およびそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費等の増加分に用いること。
(4)当該評価料の趣旨を踏まえ、労働基準法等を遵守すること。
(5)対象職員に対して、賃金改善を実施する方法等について周知するとともに、就業規則等の内容についても周知すること。
(6)店舗販売業を併設している保険薬局においては、当該評価料により得られる収入を保険調剤に従事する職員の賃上げにのみ用いることとし、店舗販売業に従事する職員の賃上げには用いないこと。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号) /厚生労働省
施設基準のポイントとなる部分を詳しく確認していきます。
調剤ベースアップ評価料により得られる収入の使途
施設基準の(3)で示されているとおり、調剤ベースアップ評価料で得た収入は、対象職員のベア等に充てることとされています。
翌年5月までに、対象職員の基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げ等に用いる必要があり、以下のような目的で使うことはできません。
- 保険薬局の設備投資
- 医薬品の購入
- ベースアップ評価料による賃金改善対象でない職員の賃上げ
- 通常の基本給
- 定期昇給など
なお、夜勤を含む交替制勤務を行っている薬局で毎月固定的に支払われる夜勤手当については、「毎月支払われる手当」として基本給等に含めて差し支えありません。
ただし、処方箋受付回数の増加などにより、調剤ベースアップ評価料による収入がベア等に必要な額を上回った場合で、追加のベア等が難しいケースに限り、賞与や各種手当など、基本給引き上げ以外の方法による賃金改善も認められます。
いずれの場合も、賃金改善の対象とする項目を特定して行う必要があります。
また、調剤ベースアップ評価料による賃金改善を行う代わりに、他の固定的な給与項目を減額してはいけません。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号) /厚生労働省
参照:令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について /厚生労働省
店舗販売業を併設している保険薬局で対象となる職員
店舗販売業(ドラッグストア等)を併設している保険薬局では、この評価料による収入は、あくまで「保険調剤に従事する職員」の賃上げにのみ使用する必要があります。
店舗販売業に従事する職員の賃上げには使用できません。
また、賃金改善の判断にあたり、保険調剤に従事する職員と店舗販売業に従事する職員を明瞭に分けることができない場合には、「店舗販売業を併設している保険薬局に勤務する全ての職員の数」に「当該保険薬局における全ての収入に対する保険調剤による収入の割合」を乗じて得た職員の数を用いることとされています。
なお、ここでいう「保険調剤による収入」には、診療報酬(保険外併用療養費を除く)、介護保険、 国、地方公共団体、保険者等が交付する補助金等に係るものを含めることとします。
ただし、労災保険に係るものは含まれません。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号) /厚生労働省
調剤ベースアップ評価料に係る届出・報告書の提出
調剤ベースアップ評価料を算定するに当たっては、地方厚生(支)局長等に対して、算定開始前の届出と、その後の賃金改善状況に関する報告書を提出しなければなりません。
各実施時期は定められており、たとえば令和8年6月から算定を開始する保険薬局では、原則として次のようなスケジュールで手続きを行います。
- 令和8年5月:調剤ベースアップ評価料を算定する旨の届出
- 令和8年8月:令和8年度「賃金改善中間報告書」の提出
- 令和9年8月:令和8年度「賃金改善実績報告書」の提出
ここからは、それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
調剤ベースアップ評価料に係る届出
調剤ベースアップ評価料を算定するためには、施設基準に適合するものとして地方厚生(支)局長等に届出をする必要があります。
算定開始時には、以下の様式を用いて届出を行います。
届出は原則として、地方厚生(支)局都道府県事務所にExcelファイルを電子メールにて提出することとされています。
参照:令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について /厚生労働省
参照:令和8年6月以降に初めてベースアップ評価料の算定を始める保険薬局 /厚生労働省
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号) /厚生労働省
「賃金改善中間報告書」と「賃金改善実績報告書」の提出
調剤ベースアップ評価料を算定した薬局では、毎年8月に賃金改善の状況について地方厚生(支)局長に報告する必要があります。
提出する報告書は以下の2種類です。別添2の様式104の別添1または2 を用いて作成します。
