門前薬局とは?門前薬局の課題やなくなると言われる理由など、徹底解説
門前薬局は、調剤薬局のなかでもポピュラーな薬局スタイルです。
これまで門前薬局には、特定の医療機関からの処方箋を効率的に受け付けて調剤を行うことが求められていました。
しかし、高齢化の進行や医療費抑制の流れに伴い、調剤薬局のあり方も対物から対人へと変わるよう求められています。
地域に密着して、多様化する患者さんのニーズにワンストップで応えられるように、薬局の姿は大きく変わりつつあります。
この記事では、門前薬局の現状と課題、なくなると言われる理由や、門前薬局に求められる新たな役割について解説します。
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門前薬局とは
門前薬局は時代の変化のなかで大きな変化を求められています。
どのような変化が起こっており、その変化に対応するには何が必要かを考える前に、まず門前薬局のあり方について確認しておきましょう。
門前薬局とは
「門前薬局」とは、特定の医療機関(主に病院やクリニック)の近隣に位置し、その医療機関から発行される処方箋を主な対象として調剤業務を行う薬局のことをさします。
調剤薬局のなかでも大きな割合を占め、医療機関と連携し、患者さんにとって利便性の高いサービスを提供することで、地域医療の一端を担ってきました。
薬の処方には、病院内で行う院内処方と、病院外の薬局で行う院外処方がありますが、院外処方のほうが診療報酬は高く設定されています。
このような理由もあり、院外処方の割合は年々高まっています。
日本薬剤師会の推計によると、2023年度の処方箋受取率(医薬分業率)は80.3%でした。これは前年度に比べると3.9%ポイント増加しており、初めて8割を超えました。
参考:処方箋受取率の推計 「全保険(社保+国保+後期高齢者)」
門前薬局の種類
門前薬局と一口に言っても、その形態はさまざまです。主な種類としては、以下のものがあげられます。
特定の医療機関の門前薬局
特定の病院やクリニックのすぐ隣、または道路を挟んだ向かいなどに位置し、ほぼその医療機関の処方箋のみを取り扱う薬局です。
病院を出てすぐの場所にあるので、患者さんはそのまま薬を受け取ることができます。
「門前薬局」と言われてまず思い浮かべるのはこのタイプの薬局だといえるでしょう。
複数の医療機関の門前薬局
複数の診療科を持つ病院の周辺や、複数のクリニックが集まるエリアに位置し、複数の医療機関からの処方箋を受け付ける薬局です。
複数の病院からから来るため患者さんの数は多くなりますが、こちらも患者さんにとっての利便性は高いといえます。
門前薬局と調剤併設ドラッグストアの違い
近年、大手チェーンを中心に増加しているのが調剤併設ドラッグストアです。
調剤併設ドラッグストアは、OTC医薬品の販売だけでなく、処方箋調剤も行う店舗です。
門前薬局との大きな違いは、その事業形態にあります。
門前薬局は、調剤業務を中心とした医療サービス提供を主眼としています。
それに対して、調剤併設ドラッグストアは、一般医薬品や日用品の販売を中心の事業としつつ、集客や事業の多角化の一環として調剤サービスを提供しています。
患者さんにとっては、買い物ついでに薬の受け取りができる、自宅の近くで利用しやすいといったメリットがあります。
この違いから、店舗の雰囲気や品揃え、薬剤師の業務内容にも差異が生じます。
門前薬局は調剤業務をメインに行いながら、より専門性の高い医療情報や患者さんへの丁寧な服薬指導が求められます。
一方で、調剤併設ドラッグストアでは、薬剤師も調剤業務のほかにOTC医薬品や日用品などの販売に携わることがあります。調剤以外の幅広い知識や、より小売店に近い接客も必要になるでしょう。
クリニックの門前薬局
ここからは、門前薬局の特徴について詳しく解説します。
まず、特定のクリニックの門前薬局についてみていきましょう。
クリニックの門前薬局の特徴
地域に根差した医療を提供するクリニックの門前薬局は、患者さんとの距離が近く、きめ細やかな対応が求められるという特徴があります。
クリニックの門前薬局で働くメリット
クリニックの門前薬局で働くメリットとしてまずあげられるのは、患者さんと継続的な関係が構築できることです。
クリニックの患者さんは、継続的に同じ医療機関を受診することが多いため、薬剤師と患者さんが顔なじみになりやすく、信頼関係を築きやすいといえます。
患者さんの病状や生活についても把握しながら対応でき、患者さんから頼りにされることも増えるので、やりがいを感じながら働くことができるでしょう。
その地域住民の健康をサポートする身近な存在として、患者さんの健康相談に乗ったり、健康情報を提供したりすることで、地域医療に貢献している実感を得られます。
また、特定の診療科の薬を中心に扱うため、仕事を把握しやすく、働きやすいのもメリットです。
大規模病院の門前薬局と比較すると、業務量は比較的安定しているといえます。
クリニックの門前薬局で働くデメリット
特定の診療科のクリニックの門前薬局の場合、取り扱う処方箋の種類が偏る可能性があります。
たとえば、皮膚科の門前薬局の場合、皮膚の疾患に関わる内服薬や軟膏、クリームなどには詳しくなれますが、それ以外の疾患に関する薬に触れる機会がなくなります。
これは長い目で見ると、薬剤師としてのキャリア形成にはマイナスとなります。特に、転職を考えたときには不利になるかもしれません。
自分で心がけて幅広い専門知識を習得していくことが必要となります。
同様に、大規模病院の門前薬局と比較すると、緊急性の高い処方箋や患者さんへの対応は少ない傾向があります。落ち着いて働けることはメリットですが、スキルを磨くという面ではもの足りなさがあるかもしれません。
また、門前薬局の働きやすさは、クリニックの営業に大きく左右されます。
門前薬局の営業時間は、隣接するクリニックの営業時間に合わせることが多くなります。
クリニックの昼休みが長く、夜遅くまで開院している場合、薬局も夜間営業することが求められるでしょう。薬剤師の勤務時間もそれに合わせなければなりません。
また、人気のクリニックで夕方以降の来院が多い場合、薬局も遅い時間が忙しくなり、残業が増えるといったこともあります。
クリニックの経営状況が薬局の経営に影響を与える面もあり、クリニックの処方箋の数に薬局の収入が左右される傾向も否めません。
総合病院の門前薬局
次に、総合病院の門前薬局についてみていきましょう。
総合病院の門前薬局の特徴
総合病院には複数の診療科があり、高度な医療を提供しています。
そのため、総合病院の門前薬局は、さまざまな診療科の処方箋を取り扱います。
重篤な病気や希少な疾患に対応した薬を処方することもあり、幅広い薬の知識と状況に応じた判断力が求められたりします。
また、患者さんの数が多いため、処理スピードが求められます。
短時間で効率よく調剤を行うため投薬、鑑査、調剤、一包化など、業務ごとにシフトで担当者を決めているところもあります。
総合病院は平日の午後や土曜日には外来診療を行っていないところが多くなっています。
そのため、薬局の側も、午前中から午後の早い時間は忙しく、営業時間の後半や土曜日は余裕ができる傾向があります。
総合病院の門前薬局で働くメリット
総合病院の門前薬局で働く第一のメリットは、薬剤師としてのスキルが磨けることです。
さまざまな診療科の複雑な処方箋に触れたり、希少な症例の患者さんに対応したりすることで、高度な薬学的知識や調剤スキルを習得することができます。
幅広い診療科に対応できるため、転職を考えたときにもさまざまな求人に応募でき、有利になるでしょう。
また、基本的に忙しい職場ですが、営業時間の後半になると患者さんが減って余裕ができる傾向があります。
最後までバタバタ患者対応に追われることなく、定時に終わることができるのはメリットだといえるでしょう。
総合病院の門前薬局で働くデメリット
ただ、このようなメリットはデメリットの裏返しでもあります。
取り扱う処方箋の数が多いため、素早く処方箋を処理していかなければなりません。
総合病院は待ち時間が長いことで知られていますが、そこで疲れて来局された患者さんは、薬局でもまた待たなければなりません。
薬剤師も早く対応しなければとプレッシャーを感じながら仕事をすることになります。
重篤な疾患を抱える患者さんの処方箋を取り扱うことも多く、より責任は重くなります。
さまざまな疾患を扱うため、処方変更や疑義照会などの緊急性の高い業務が発生する可能性もあります。
また、患者さんの入れ替わりが激しく、クリニックの門前薬局のように一人ひとりの患者さんとじっくり向き合う時間は取りにくくなります。
患者さんとのつながりが感じにくいのもデメリットといえるかもしれません。
門前薬局の課題
門前薬局は、特定の医療機関に近いという立地を活かして、調剤業務を中心に行ってきました。
しかし、時代の流れのなかで、現在の門前薬局にはさまざまな課題が生じています。
薬剤師不足
現在、問題となっているのが、薬剤師の偏在です。薬剤師は都市部に多く、地方には少ないという傾向があります。
しかし、高齢化が進むなか、地方での医療ニーズは高くなっています。
そのため、地方を中心に全国的に薬剤師不足が深刻化しており、門前薬局も例外ではありません。
新卒の薬剤師の就職先として人気なのは病院や大手チェーン薬局で、門前薬局は不利な状況にあります。
また、薬剤師の高齢化や、育児・介護による離職も薬剤師不足の要因の一つです。
調剤併設型ドラッグストアの存在
先ほどみたように、調剤併設型ドラッグストアの店舗数は年々増加しており、門前薬局にとって無視できない競合となっています。
ドラッグストアは、医薬品だけでなく日用品や化粧品なども取り扱うため、患者さんにとって利便性が高く、処方箋以外の目的でも来店しやすいという強みがあります。また、ポイントサービスや価格競争力も、患者を引きつける要因となります。
門前薬局は、このような調剤併設型ドラッグストアに対し、専門性の高い服薬指導や患者との丁寧なコミュニケーション、地域医療とのつながりといった強みを活かし、差別化を図る必要があります。
単なる調剤業務だけでなく、健康相談や未病ケアなど、地域住民のニーズに合わせたサービス提供が求められています。
門前薬局がなくなると言われている理由
「門前薬局はなくなる」という声を聞いたことはないでしょうか。
門前薬局の数を考えると、すぐに現実化するとは思えません。しかし、そのように言われるのはなぜなのでしょうか。
厚生労働省は、患者本位の医薬分業を実現するために、調剤薬局に関しても、単に調剤業務を行うだけにとどまらない、患者さんがワンストップで薬を管理できる「かかりつけ薬局」を推進しています。
また、高齢化が進むなかで、在宅医療や多職種連携が重視される地域包括ケアシステムにおいても、かかりつけ薬局は重要なポジションを占めます。
患者さんがかかりつけ薬局を持つようになると、医療機関の近くの門前薬局ではなく、自分のかかりつけ薬局を利用するようになります。
また、オンライン診療や医薬品の配送サービスの普及も、門前薬局の利用減少につながる可能性があります。
国は医療費抑制のため、調剤報酬の見直しを頻繁に行っており、特に特定の医療機関の処方箋集中率が高い薬局に対する評価が厳しくなる傾向があります。
これから門前薬局の経営環境は厳しさを増していくことが予想されます。
また、大手チェーンが広範囲に調剤併設ドラッグストアを出店し、スケールメリットを活かした経営を行っています。
個人経営を中心とする門前薬局は競争力を維持することが難しくなってきています。
このように、門前薬局に関しては、医療的な面でも経営的な面でも厳しさが増しているのです。
これからの門前薬局の役割
では、これからも門前薬局が選ばれ続けるためには、どのような対応が必要なのでしょうか。
これからの門前薬局に求められる役割について確認してみましょう。
地域密着型の薬局
このような状況のなかで、これからの門前薬局には、従来の処方箋調剤を中心とした役割から脱却し、地域医療でより積極的な役割を担うことが求められます。
その際には、かかりつけ薬局としての機能強化がポイントとなります。
加えて、健康に関する相談窓口としての役割を担い、地域住民の健康増進に貢献することも大切です。
ふだんから健康教室やセミナーなどを開催し、地域住民に対して医薬品や健康に関する正しい情報を提供することで、地域とのつながりを深め、健康の増進に貢献していくことが求められています。
誰でも気軽に相談ができる薬局
患者さん個人に関しても、かかりつけ薬局として、患者さん一人ひとりの薬歴管理を徹底し、重複投与や相互作用のチェック、副作用のモニタリングなどを通じて、安全かつ効果的な薬物療法をサポートしていくことが大切です。
単に病院にかかったときだけ対応するのではなく、少し体調が悪かったり、生活習慣を改善したいと考えたりしたときに、気軽に相談できる存在になることが求められています。
また、高齢化が進むなかで、患者さんの理解度や生活習慣に合わせた丁寧な服薬指導を行い、アドヒアランス向上を支援することも重要です。
在宅に対応する
在宅で介護を受けたり療養したりする患者さんに対し、訪問薬剤管理指導や居宅療養管理指導などを提供し、在宅医療をサポートすることも大切な役割です。
薬の飲み方の指導だけでなく、残薬の管理や家族のフォローなども行うことによって、患者さんのQOLの向上に大きく貢献することができます。
医師や看護師、ケアマネージャーなど、さまざまな専門職と連携し、患者さんの情報を共有しながら、より包括的な医療・介護サービスを提供することが求められています。
門前薬局の今後はどうなる?
門前薬局を取り巻く環境は厳しさを増していますが、地域医療における重要な役割を担っていることに変わりはありません。
今後は、従来の特定の病院に頼ったあり方から変革を遂げ、地域ニーズに合わせた新たな価値を提供していく薬局が生き残っていくと考えられます。
ここまで解説してきたように、かかりつけ薬局として他の医療機関や介護事業所との連携を強め、地域の患者さんが安心して医療サービスを受けられるようにすることが大切になります。
また、IT技術を活用して業務効率化や患者サービスの向上を図ったり、オンラインでの服薬指導に対応したりするなど、独自の強みを活かした経営戦略を打ち出すことが重要となるでしょう。
門前薬局の薬剤師に求められるものとは?
このように、門前薬局の在り方は大きな変化の中にあります。
では、そこで働く薬剤師にはどのようなことが求められるのでしょうか。
スキルアップする
幅広い処方箋に対応できるよう、常に最新の医学・薬学の知識をアップデートしていくことが必要となります。
また、ITや調剤機器を利用して効率的に業務を進められるよう、新しい機器も積極的に理解して利用していく姿勢が大切です。
かかりつけ薬剤師をめざす
今後、調剤薬局で安心して仕事を続けるためには、単に処方箋通りに調剤を行うだけでなく、積極的にかかりつけ薬剤師となることが求められます。
一人ひとりの患者さんの疾患だけでなく、生活背景やニーズを理解し、必要に応じて情報提供や相談対応を行っていきましょう。
患者さんや他の医療従事者と円滑にコミュニケーションをとり、信頼関係を構築できる能力もますます重要になるでしょう。
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まとめ
門前薬局は、病院での診療を終えた患者さんにとって便利な存在ですが、社会の変化とともにそのあり方も変革期を迎えています。
薬剤師の側も、このような現状を正しく理解し、これからの門前薬局に求められる役割に対応していかなければなりません。
単に処方箋を処理するだけでなく、患者さん一人ひとりに寄り添い、地域住民の健康をサポートする存在として、薬剤師の専門性を活かした質の高いサービスを提供していくことを心がけましょう。
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