藤田氏が解説!2020年度調剤報酬改定のポイント・まとめ

更新日: 2020年3月13日 藤田 道男

改定の全体像と「調剤基本料」「調剤料」のポイント3

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改定比率維持、外枠扱いは見送り

2020年度の診療報酬は2019年暮れの財務・厚労の大臣折衝で技術料などの本体がプラス0.47%、医師の働き方改革の対応分としてプラス0.08%、合計でプラス0.55%となることが決まりました。一方、薬価は、通常の引き下げ分と制度改革の効果を合わせてマイナス1.01%で、全体(ネット)の改定率はマイナス0.46%です。

本体引き上げ部分の改定比率は医科、歯科、調剤1:1:0.3が維持されました。調剤報酬では2016年、2018年度改定で大型門前薬局などの評価の引き下げを「外枠」として改定率に含めない措置を採りましたが、今回は見送られました。

(参考)厚生労働省【令和2年度診療報酬改定について】 

診療報酬改定や薬機法改正議論の中で医薬分業に対する厳しい意見が相次ぎ、調剤報酬への影響が懸念されていましたが、結果として大幅な変更には至らず、関係者の間では安堵感が広がっています。しかし、表面に現れた点数以上に「かかりつけ化」や「対物から対人業務へのシフト」、「医療機関との連携」など業務内容の変革を促すものとなっており、次回改定に向けたメッセージと受け止められます。事実、厚労省関係者は「調剤料に依存し、近隣医療機関の処方箋を応需するだけの薬局に未来はない」と断言しています。

2019年に公布された改正薬機法では薬局の定義について「調剤を行う場所」に加え、「薬学的知見に基づく指導を行う場所」との文言を挿入、改正薬剤師法では薬剤師業務について「投薬後の薬学的知見に基づく指導」が規定されました。今回の調剤報酬改定もまさにそうした方向と軌を一にするものであることに注目する必要があります。

調剤基本料 かかりつけ薬局、多職種連携がキーワード!

改定のポイント1:診療所門前、敷地内薬局の基本料適正化

調剤基本料は、「特別調剤基本料」以外は点数を据え置き、「基本料2」で診療所門前薬局を念頭に「受付回数1800回超~2000回以下、集中率95%超」、「基本料3‐イ」に「同一グループで3万5000回超~4万回以下・集中率95%超」を追加しました。「特別調剤基本料」は診療所敷地内にも適用、集中率を95%超から70%超に拡大し、点数も11点から9点に引き下げました。
複数の医療機関の処方箋を同時に受け付けた場合、2回目以降の処方箋に係る調剤基本料の20%減算が新設されました。かかりつけ薬局を普及させる狙いからです。ただ、調剤基本料の要件は一層複雑化してきたことは否めず、今後の課題となりそうです。

要件等
調剤基本料 ・調剤基本料1 42 42 変更なし
・調剤基本料2 26 26 ①月2000~4000回、集中率85%超
②月4000回超 集中率70%
③月1800回超、集中率95%超(新設)
・調剤基本料3イ 21 21 ①グループで35000回超4万回以下、
かつ集中率95%超(新設)

②グループで 月4万回超40万回以下、
かつ集中率85%超
・調剤基本料3ロ 16 16 ①グループで40万回超、かつ集中率85%超
②不動産取引関係
・特別調剤基本料 11 9 診療所敷地内にも拡大、集中率90%超→70%超
調剤基本料の減算 ・複数の医療機関の処方箋を同時に受け付けた場合は受付2回目以降の調剤基本料を80%に減算
・かかりつけ機能の基本的業務 年10回未満は50%減
・敷地内薬局 かかりつけ機能業務 年100回未満は50%減

改定のポイント2:地域支援体制加算、基本料1以外を緩和

地域支援体制加算は、35点から38点に引き上げられましたが、「基本料1」の薬局は現行の麻薬小売免許、かかりつけ薬剤師指導料の届出などに加えて、在宅実績を12回以上、医療機関の服薬情報の提供を12回以上、研修を修了薬剤師の多職種と連携会議に1回以上出席などの実績を求めました。
「基本料1」以外の薬局では、薬歴管理料の麻薬指導管理加算の実績10回以上を、調剤料の麻薬加算の算定回数10回以上に改めたほか、多職種連携会議に5回以上出席の要件が加わりました。9つの要件のうち8つ以上を満たせば算定でき、若干緩和された印象です。

要件等
地域支援体制加算 35 38 ・基本料1の薬局=在宅を年1回から12回に、服薬情報提供文書12回以上、多職種連携会議1回以上
・基本料1以外の薬局=9項目中8項目が必須 調剤料の麻薬加算10回以上、連携会議は5回以上(新設)

後発医薬品体制加算は75%以上を15点に減算、80%以上は22点を据え置き、85%以上を28点と増額しました。後発医薬品への置き換えが低い薬局への基本料減算(2点)を20%から40%に拡大しました。後発医薬品の数量割合は、2019年9月時点で76.3%まで伸長し、2020年9月までに80%とする国の目標に近づいてきたことから、置き換え割合が低い薬局へのペナルティ的意味合いがあります。なお置き換え率が低い薬局への調剤の2点減算は2割以下から4割以下に拡大しました。但し2021年9月30日までの猶予期間があります。

要件等
後発医薬品調剤体制加算
・後発医薬品加算1
・後発医薬品加算2
・後発医薬品加算3

18
22
26

15
22
28

・後発医薬品置き換え数量割合が低い薬局対象を
20%から40%に厳格化
(基本料から2点減算)

調剤料 急性期の処方箋を多く受けている薬局は影響大!

改定のポイント3:14日分以下の調剤料を定額化

内服薬調剤料は、日数倍制が見直され、「1~7日分」28点、「8~14日分」55点と定額化されました。「15~21日分」は3点引き下げ64点、「22~30日分」1点引き下げ77点、「31日分~」は86点を据え置きです。
厚労省医療課の調べでは、薬局における内服薬の投与日数は平均値で24.4日(18年6月審査分)ですが、14日分以下が全体の45%占めています。2018年度実績では7日分までの平均は27点、8~14日分までは61点でした。このため、定額化の影響は急性期の処方箋を多く受けている薬局で大きいと言えます。ただ、現行3剤までとなっている剤数については変更がなく、調剤収益への激変緩和と受け止められます。

要件等
調剤料 調剤料(内服薬)
・1~7日
・7~14日
・15~21日
・22日~30日
・31日以上

5
4
67
78
86

28
55
64
77
86

14日分以下を定額化

>>2024年の診療報酬改定に関する記事をまとめました。
「診療報酬改定2024まとめ」はこちら

診療報酬改定まとめ

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藤田 道男
ふじた みちお

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、(株)じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために一般社団法人「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。
主な著書は『2025年の薬局・薬剤師 未来を拓く20の提言』『かかりつけ薬局50選』『残る薬剤師 消える薬剤師』など多数。

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