藤田氏が解説!2020年度調剤報酬改定のポイント・まとめ

更新日: 2020年3月25日 藤田 道男

今改定の重要トピック「病院薬剤師の評価」を解説

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2020年度診療報酬改定では「医療従事者の働き方改革」「医療機能の分化と連携」などが重点的に見直されました。中でも医療従事者のタスク・シェアリング、タスク・シフティングを念頭に、病院薬剤師の評価や保険薬局との連携、医薬品適正使用の観点からの重複投薬、ポリファーマシー対応なども新たな評価が行われました。本稿では病院薬剤師の評価、医薬品関連、薬局との連携などを中心に取り上げます。

(参考)厚生労働省【令和2年度診療報酬改定について】 

病院薬剤師の評価

改定のポイント1:調剤料関連は若干の点数増に!

調剤料

診療報酬改定議論でも再三取り上げられた「調剤料」の院内外格差。病院薬剤師と薬局薬剤師の業務や役割、調剤の位置付けなどの違いがあり、単純に比較するのは難しい面がありますが、結果として2020年改定では医療機関の調剤料関係は若干の点数増となりました。外来の内服薬、浸煎薬、頓服薬は9点から11点。外用薬は6点から8点へそれぞれ2点プラスです。入院の投薬に係る調剤料は6点のまま据え置きです。
調剤料の外来調剤は実施者が薬剤師であることを問いません。入院の調剤料は薬剤師が行う処方監査や疑義照会、調製などの人件費の位置付けです。

調剤料
・調剤料(外来)内服薬、浸煎薬、頓服薬 9 11 1回につき(実施者が薬剤師であるか否かに関らず)
・調剤料(外来)外用薬 6 8 1回につき(同上)
・調剤料(入院) 7 7 1日につき

調剤技術基本料

「調剤技術基本料」は入院患者への投薬は42点据え置きですが、外来の投薬について8点から14点にアップされました。院内外格差是正の一環といえます。

調剤技術基本料
・入院 42 42
・外来 8 14

病棟薬剤業務実施加算

「病棟薬剤業務実施加算1」及び「病棟薬剤業務実施加算2」がそれぞれ20点プラスです。病棟薬剤業務実施加算2は、ハイケアユニット入院医療管理料を算定する治療室内における薬剤師の配置を評価するものです。今回、施設基準が緩和されました。

病棟薬剤業務実施加算
・病棟薬剤業務実施加算1 100 120 週1回
・病棟薬剤業務実施加算2 80 100 1日につき

病棟薬剤師業務実施加算に関する施設基準の緩和(薬剤管理指導料も同様)

現行 改定後
常勤薬剤師2人以上 週3日以上、週22時間以上勤務の複数の非常勤職員を
組み合わせた常勤換算による配置
DI室に常勤薬剤師1人以上 院内からの相談に対応できる体制

病棟活動の経緯と各項目の位置付けについて

ここで、病院薬剤師の病棟活動に対する評価の経緯について触れておきます。病院薬剤師の病棟活動が初めて評価されたのは1988年に新設された「入院調剤技術基本料」(いわゆる100点業務)です。医薬分業推進の観点から外来調剤を院外に移行する政策誘導もあり、病院薬剤師の業務を外来調剤から入院患者対応にシフトするきっかけとなりました。現在、入院調剤技術基本料は「薬剤管理指導料」に名称変更になっています。
2012年には「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。これまで培ってきた病院薬剤師の病棟活動の評価が定着した証といえるでしょう。
病棟活動の各項目の位置付けを整理すると―。外来の「調剤料」(実施者が薬剤師であるか否かに関らず)は、薬剤調製に係る人件費です。入院「調剤料」は、薬剤師が行う処方監査、疑義照会、薬剤調製にかかる人件費。「調剤技術基本料」は、医薬品備蓄、調剤機器などの経費の一部(医療機関全体の経費は初・再診料に含まれる)とされています。今回点数に変動がなかった「薬剤管理指導料」は薬歴記載や処方内容のチェック、服薬指導や副作用歴確認などの評価です。また、「病棟薬剤業務実施加算」は、主に投薬前における患者への業務、他職種とのコミュニケーション、処方設計と処方提案など、幅広い分野の評価と位置付けられています。

効率化・適正化関連:医療機関における後発医薬品の使用はやや停滞

改定のポイント2:在宅自己注射指導管理料を新設

全国健康保険協会(協会けんぽ)によると、2019年9月時点の後発品の使用割合は76.9%(数量ベース)と高い水準を示しました。ただ、2019年1月以降は伸びの傾向が停滞気味で、このままのペースでは厚労省が掲げる2020年9月までの目標80%達成は厳しい状況です。このため、調剤報酬では置き換えの数量割合が低い薬局の基本料減算対象を20%以下から40%以下にまで拡大しました。医療機関については特段の減算措置はありません。

一般名処方加算

後発医薬品使用促進の観点から処方箋料の加算として認められている「一般名処方加算」。2016年度診療報酬改定から2つの区分となっています。交付した処方箋に後発医薬品が存在する全ての医薬品が一般名処方されている場合には「一般名処方加算1」、処方箋に1品目でも一般名処方が含まれているケースでは「一般名処方加算2」を算定できます。2020年度改定ではそれぞれ1点アップしました。

一般名処方加算
一般名処方加算1 6点 7点
一般名処方加算2 4点 5点

後発医薬品使用体制加算

「後発医薬品使用体制加算」は、入院患者について入院期間中1回に限り、入院初日に算定するものです。これまで使用体制加算として数量割合60%~85%までの4段階でしたが、「加算4」の60%以上を削除し、3段階区分としました。使用割合の高い医療機関に対する評価を充実させ、それぞれ2点アップしました。

後発医薬品使用体制加算
後発医薬品使用体制加算1(85%以上) 45点 47点
後発医薬品使用体制加算2(80%以上) 40点 42点
後発医薬品使用体制加算3(70%以上) 35点 37点
後発医薬品使用体制加算4(60%以上) 22点 削除

在宅自己注射指導管理料

在宅自己注射指導管理料について、バイオ後続品に関する情報を患者に提供した上で、当該患者の同意を得て、バイオ後続品を導入した場合の評価が新設されました。初回の処方日の月から起算して3月を限度として、150点を所定点数に加算するものです。

在宅自己注射指導管理料 150点(新設)(3月を限度)
[算定要件]
当該患者に対し、バイオ後続品に係る説明を行い、バイオ後続品を処方した場合には、バイオ後続品導入
初期加算として、当該バイオ後続品の初回の処方日の属する月から起算して3月を限度として、150点を所定点数に加算する。

地域包括ケアシステムは入院時の支援加算で要件を区分

入院時支援加算

18年改定で入院を予定している患者が入院生活や入院後にどのような治療過程を経るのかをイメージし、安心して入院医療を受けられるよう、①患者情報の把握②入院前に利用していた介護サービス等の把握(要介護・要支援状態の場合のみ)③褥瘡に関する危険因子の評価④栄養状態の評価⑤服薬中の薬剤の確認⑥退院困難な要因の有無の評価⑦入院中に行われる治療・検査の説明⑧入院生活の説明―等の支援した場合の評価「入院時支援加算」が新設されました。
20年度改定では、これを2つに区分し、8項目中、全て実施した場合は「入院時支援加算1」、①②⑧を含む一部項目を実施した場合は「入院時支援加算2」を算定するように改めました。患者の栄養状態の把握や服薬中の薬剤の確認は必要に応じ、管理栄養士、薬剤師と連携を取ることが新たに算定要件に加わりました。

入院時支援加算

入院時支援加算 200点 入院時支援加算1 230点(新設)
入院時支援加算2 200点(新設)

減薬、ポリファーマシー関連は薬剤師の貢献がさらに求められる算定に

改定のポイント:薬剤調整加算を新設

薬剤総合評価調整加算

薬剤総合評価調整加算について、現行は2種類以上の内服薬の減薬が行われた場合を評価していますが、これを見直して「処方の総合的な評価及び調整の取り組み」と「減薬に至った場合」に分けた段階的な報酬体系となりました。前者は、当該処方の内容を総合的に評価し、その内容が変更され、療養上必要な指導等を行った場合に100点を算定、後者は具体的に減薬された場合に所定点数に150点を加算するものです。

抗菌薬適正使用支援加算

抗菌薬適正使用支援加算の100点は据え置きですが、病院内及び地域における抗菌薬の適正使用を推進する観点から、抗菌薬適正使用支援チームの業務の実態などを踏まえ、抗菌薬適正使用支援加算について、外来における抗菌薬の使用状況の把握などを含め要件が見直されました。具体的には、過去1年間の急性気道感染症、急性下痢症の患者数と当該患者に対する経口抗菌薬の処方状況を把握することが追加されました。
また、院内研修の実施及びマニュアルの作成に当たっては、「抗微生物薬適正使用の手引き(厚生労働省・結核感染症課)を参考に、外来における抗菌薬適正使用に係る内容も含めることも盛り込まれました。

薬剤総合評価調整加算 250点
・入院前に6種類以上の内服薬が
処方されていた患者につき
2種類以上減少した場合
・精神病棟では2種類以上減少した場合
薬剤総合評価調整加算 100点
・入院前に6種類以上の内服薬が処方されていた患者につき
処方内容が変更され、必要な指導を行った場合
・精神病棟では4種類以上の内服薬が処方されていた
患者につき処方内容が変更され、必要な指導を行った場合
薬剤調整加算(新設) 150点
・入院前に6種類以上の内服薬が処方されていた患者につき
2種類以上減少した場合、所定点数に加算
・精神病棟では4種類以上の内服薬が
2種類以上減少した場合、所定点数に加算

連携関連は薬薬連携を強化する2つの加算が登場

改定のポイント:退院時薬剤情報管理指導料の加算を新設

連携充実加算

医療機関と薬局との連携強化やきめ細かな栄養管理を通じてがん患者に対する質の高い医療を提供する観点から、「連携充実加算」(外来化学療法加算1の届出を行っている医療機関が対象)が新設されました。調剤報酬における薬歴管理料の加算「特定薬剤管理指導加算2」に連動するものです。
具体的には、外来での抗がん剤治療の質を向上させる観点から患者にレジメン(治療内容)を提供し、患者の状態を踏まえた必要な指導を行うとともに、地域の薬局薬剤師などを対象とした研修会の実施などの連携体制を整備している場合に算定できます。
治療の状況などを共有することを目的に、治療の目的や治療の進捗に関する文書を他の保険医療機関又は保険薬局に提示するよう患者に指導を行うこと。他の保険医療機関又は保険薬局から服薬状況、抗悪性腫瘍剤の副作用などに関する情報が報告された場合には、必要な分析・評価などを行うことなどの要件があります。
施設基準としては、レジメンをホームページなどで公開することや薬局薬剤師を阿致傷とした研修会を少なくとも年1回開催することなどが盛り込まれました。

退院時薬剤情報連携加算

入院前の処方薬の内容に変更、中止などの見直しがあった場合について、退院時に見直しの理由や見直し後の患者の状態などを記載した文書を薬局に対して情報提供を行った場合について、退院時薬剤情報管理指導料の加算(60点)が新設されました。薬局としては患者のお薬手帳に「かかりつけ」としての薬局名記載を要請すること、日頃から薬薬連携等を通じて医療機関との関係を密にしておく必要があります。

連携充実加算150点 (新設)
施設基準
・外来化学療法加算1の届出
・レジメンのホームページでの閲覧体制
・外来化学療法に関わる職員、薬局薬剤師への研修
・薬局からの情報提供に応じる体制-など
退院時薬剤情報連携加算(退院時薬剤情報管理指導料) 60点(新設)
・入院前の処方薬の内容に変更、中止等の見直しがあった場合について、
退院時に見直しの理由や見直し後の患者の状態等を文書で薬局に対して情報提供を行った場合

>>2024年の診療報酬改定に関する記事をまとめました。
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藤田 道男
ふじた みちお

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、(株)じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために一般社団法人「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。
主な著書は『2025年の薬局・薬剤師 未来を拓く20の提言』『かかりつけ薬局50選』『残る薬剤師 消える薬剤師』など多数。

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