慢性腎臓病(CKD)患者の薬物療法ガイド。なんでもない処方箋を理解しよう!

更新日: 2025年3月4日 穴田 わかな

<CKD×高血圧>ARBで腎機能が下がる理由をどう説明すればいいですか?

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このコラムでは、保険薬局薬剤師の日常によくある“なんでもない処方”から生まれる「新人薬剤師の疑問」を紹介します。

入社1年目の薬剤師Aさんは、内科の門前薬局に配属されて半年が経過。仕事にも慣れてきて、“簡単な処方内容”であれば一人で服薬指導もできるようになりましたが、来局する患者さんは年配の方が多く、腎機能が低下している人もしばしば。今回来局したのは、2ヵ月前から高血圧の薬が処方されている患者さんです。

「腎臓を守るためにARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)を開始したのに腎機能が悪化した」と悩む患者さんへ服薬指導する薬剤師のAさんは、うまく説明できずに困っています…。そこで、CKD薬物療法に詳しい先輩薬剤師が登場!一緒に慢性腎臓病の薬物療法について学びましょう。

ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)を2ヵ月服用中の患者さんのデータ

プロフィール

54歳男性、月に1回、内科の外来処方箋をもって来局、併用薬なし。

糖尿病歴約20年。若いときは外食ばかりだったが、最近は健康的な食生活を意識している。ここ数年、血圧が上がり、収縮期血圧が150を超えることが増えていた。

定期検査で尿蛋白が検出されたので、2ヵ月前にカンデサルタン4㎎/日が新規開始となった。カンデサルタン服用開始から1ヵ月後には血圧が120台まで下がり、低血圧・血管浮腫など、副作用に関連する自覚症状も見られなかった。

2ヵ月前の検査値

身長167cm、体重65kg
①診察時血圧146 /82mmHg
②HbA1c 6.8%(ここ1年以上は±0.2%以内で推移)
③SCr 0.86 mg/dL (eGFR 72 mL/min/1.72m2)
④尿蛋白(+)

現在の検査値

①診察時血圧128 /75mmHg(2か月前より低下)
②HbA1c 6.8%(前回と同じ)
③SCr 1.0 mg/dL(eGFR 61mL/min/1.72m2、2ヵ月前より15%低下)
④尿蛋白(―)(前回の(+)から改善)

処方内容

  • メトホルミン錠MT500mg 3T 3×毎食後 28日分
  • シタグリプチンリン酸塩錠50mg 1T 1×朝食後 28日分
  • カンデサルタン錠4mg 1T 1×朝食後 28日分

※前回から変更なし

患者さんの訴え

降圧剤を開始するときに医師から「血圧を下げて腎臓が悪くならないようにする薬ですよ」と言われて飲みはじめたのに、2ヵ月前より腎機能が下がっていた。

医師には「このくらいの検査値の低下は問題ないから継続しましょう」と言われたけど、今までこんなに腎機能の数値が悪くなったことはない。

血圧は確かに下がったけど、このまま腎臓が悪くなったら透析になるのではないか?自分にはこの薬が効いていないのではないか?

新人薬剤師の疑問

ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)を開始すると腎機能が下がると聞いたことがありますが、この患者さんにどのように説明したらいいでしょうか?

先輩薬剤師の回答

ARBを飲み始めてから尿たんぱくも減っているので、医師の指示通りに継続してもらえるように服薬指導をしましょう。

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穴田 わかな
あなだ わかな

保険薬局薬剤師として約20年間、さまざまな現場を経験。2022年に「腎臓病療養指導士」を取得。現在は株式会社ナカジマ薬局(https://www.nakajima-phar.co.jp/)の在宅部門とDI・学術チームに所属。在宅医療の現場で多職種と連携し、患者様の穏やかな日常を守るために奮闘しています。

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