慢性腎臓病(CKD)患者の薬物療法ガイド。なんでもない処方箋を理解しよう!

更新日: 2025年6月24日 穴田 わかな

CKD(慢性腎臓病)×心不全の患者さんから質問「SGLT2阻害薬を飲んでも低血糖にならない?」

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今回の患者さんは心不全で、糖尿病を持っていませんが、SGLT2阻害薬「ダパグリフロジン錠」が初めて処方されました。血糖値を下げる薬なので、低血糖になるのではないか、と心配しています。薬剤師1年目のAさんは、どのように対応すれば良いかわからず困っています…。そこで、CKD療養指導に詳しい先輩薬剤師が登場!今回は糖尿病だけでなく慢性心不全や慢性腎臓病にも使用されるSGLT2阻害薬について学びましょう。

患者さんのデータ

プロフィール

58歳男性、1か月に1回、内科の外来処方せんを持って来局。併用薬なし。
心不全の治療が始まってからは日常生活で息切れや浮腫はほとんど見られなくなっている。今回は、腎機能が低めとのことで、SGLT2阻害薬「ダパグリフロジン錠」が開始となった。

現在の検査値

身長175cm、体重63kg
① 診察時の血圧132/80 mmHg
② HbA1c 5.6%
③ SCr 1.1 mg/dL (eGFR 54.5mL/min/1.72m2)

処方内容

  • スピロノラクトン錠50mg 1T 1×朝食後 28日分
  • ビソプロロール錠2.5mg 1T 1×朝食後 28日分
  • アピキサバン錠5mg 2T 2×朝夕食後 28日分
  • サクビトリルバルサルタン錠200mg 2T 2×朝夕食後 28日分
  • ダパグリフロジン錠10mg 1T 1×朝食後 28日分

※今回よりダパグリフロジン錠の服用を開始

患者さんの訴え

「心不全も腎機能もなるべく悪くならないように、新しい薬を追加することになりました。『ダパグリフロジン錠はもともと、糖尿病の薬なんだよ』と医師に言われたけど、私は糖尿病じゃないし、低血糖とか大丈夫でしょうか」

新人薬剤師の疑問

1 糖尿病ではない心不全患者さんにSGLT2阻害薬を使う場合、低血糖の危険はありますか?

先輩薬剤師の回答

1 糖尿病ではない場合、SGLT2阻害薬による低血糖は起こりにくいとされています。

ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2阻害剤の一部では、糖尿病以外にも、慢性腎臓病や慢性心不全にも適応が認められています。(下表参照)1)-6)

「ダパグリフロジン」を投与された患者では、糖尿病の有無にかかわらず、心不全の悪化または心血管が原因の死亡リスクが低下したことが、大規模臨床試験7)により示されています。この試験で、糖分やグルカゴンの投与が必要となる低血糖は、糖尿病ではない患者では0件でした。

SGLT2阻害薬は近位尿細管でグルコースの再吸収を抑制し、尿中グルコース排泄を促進することにより、空腹時及び食後の血糖コントロールを改善します。4) そのため、他の血糖降下薬を併用しない場合は低血糖が起こりにくい薬剤です。

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穴田 わかな
あなだ わかな

保険薬局薬剤師として約20年間、さまざまな現場を経験。2022年に「腎臓病療養指導士」を取得。現在は株式会社ナカジマ薬局(https://www.nakajima-phar.co.jp/)の在宅部門とDI・学術チームに所属。在宅医療の現場で多職種と連携し、患者様の穏やかな日常を守るために奮闘しています。

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