接客が苦手な薬剤師のための「コミュニケーション術」

更新日: 2021年7月4日 小原 一将

清潔感のある印象で患者さんの悩みを引き出す

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前回の第一回では、「意外と見られている薬剤師の外見について」をテーマにお話しました。服装のケアをすることで、自分が相手からどのように見られているかを意識し、服装の基本的な色使いや、服装の統一感によって患者さんにチームとしての洗練された印象を与えるためのコツを解説しました。

前回に引き続き今回も、アパレル業界に16年携わり、現在南麻布でスタイリストとして活躍されている髙野大輝さんに、薬剤師という医療職が意識したい外見のポイントについてうかがいました。

シャツは襟の形に注意して選ぼう

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小原

男性薬剤師は、白衣の下にシャツを着ることが多いと思いますが、そのシャツの色は「白色」が基本になりますか?

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髙野

薬剤師さんは清潔感を出したいと思いますので、白色が基本ですね。
次に淡い青色のシャツを選ぶのはアリでしょう。青と白のストライプなども考えられます。

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小原

シャツの色は白を基本として青系も選択肢に入るということですが、シャツのデザインで気をつけることはありますか?

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髙野

シャツの着こなしでは、襟が重要です。
襟の形は、セミワイドかワイドを選びましょう。また、洗練された印象に見せるためには、ネクタイをする際の見せ方も大切です。
ネクタイをする際にカッタウェイの襟は避けた方が良いです。

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カッタウェイ

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小原

ネクタイをしている襟元は締まっている方が良いということですね。
そもそも、ネクタイをするかしないかという問題もありますがいかがですか?

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髙野

季節で考えれば、真夏のネクタイはやめても良いと思います。
ネクタイをするかしないかは、職場の雰囲気や患者さんにどのように見せたいかによって決めても良いでしょう。

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小原

ネクタイをするかしないかということよりも、適した襟元になっているかが重要であると。

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髙野

はい。ネクタイをしていても、襟が広がっていると締まった外見とは言えません。
さらに、ネクタイをする時は、半袖シャツは避けて長袖を選んだ方が良いです。
もし、ネクタイを外して半袖シャツを選ぶなら、ポロシャツにすることで見せ方を変えることができます。

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小原

ポロシャツという選択肢があるのですね。

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髙野

台襟 のついたポロシャツは良いと思います。

※1台襟とは襟の土台となる帯状の部分のことです。一般的なポロシャツはこの部分がないので襟が寝てしまいますが、台襟のあるポロシャツであればスーツと着るシャツのように襟が立つのでよりフォーマルに見えます

普通のポロシャツだと襟が寝てしまうのですが、台襟であればポロシャツでも首元が綺麗に見えるので、夏場の良い選択肢になるでしょう。

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台襟

普段、シャツを選ぶ際に何気なく済ませていることもありますが、検討するべきことがたくさんあります。今回取り上げたのは「色」と「襟」。

色は清潔感を出すために基本の白色をまずは選び、次に青系を揃えましょう。そして、襟の形はネクタイの有無によって選ぶべきものが変わります。
今回の基本をおさえて、まずはセオリー通りに考えていくのが良いでしょう。

また、前回のお手入れの話にも繋がりますがきちんと洗濯されてパリッとした状態かつ、袖や首元がサイズに合っているのは大前提です。
このような基本的な部分をきっちりとおさえていくことで、投薬台から見える薬剤師の印象は大きく変わるはずです。

靴やベルトなど、細部まで見せ方にこだわろう

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小原

前回のお話で、全体の色は3色以内というお話がありました。
ここまで、白衣と白シャツ、濃紺のパンツが基本になるということですが、ネクタイやベルト、靴はどのように選べば良いでしょうか?

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髙野

ネクタイは濃紺の無地が基本です。ブルー系のストライプネクタイでも良いでしょう。

ベースがブルー、ストライプの色は2色くらいまでに抑えた方が良いです。

ブルー系のドットや小紋柄も、選択肢にして良いと思います。柄が小さければ上品に、大きければスポーティに、それぞれ見せることができます。

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左から無地、ドット、ストライプ、小紋

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小原

医療職であれば、柄は小さい方が良さそうですね。

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髙野

そうです。柄は小さければ小さいほど、色は少なければ少ないほど、上品に見えます。
薬剤師さんであれば、上品に見えた方が患者さんからの印象は良いはずです。

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小原

ネクタイは結び方も重要ですが、基本はプレーンノットですか?

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髙野

はい、結び方はプレーンノットで、ディンプルは必ず作ってください。
結び目をしっかりと小さくして、シャツの襟元に入るようにグッと上に上げる、シャツにネクタイをしっかりとつけるくらい締めましょう。長さは大剣がベルトに重なるような状態が良いです。

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ディンブルをつけたネクタイの結び方の例

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小原

やはりネクタイをしっかりとしていると締まった印象になりますよね。

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髙野

患者さんは、薬剤師さんと目を見て話をしますよね。
それから次にどこを見るかというと、「Vゾーン(シャツとネクタイが見える場所)」です。「襟元とネクタイ」を重要視する理由は、これです。
ネクタイをしっかりと締めるだけでも、相手に与える印象は大きく変わるはずですよ。

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小原

患者さんの目線が集まりやすい部分を、まず重点的に変えていくわけですね。
ベルトや靴の選び方の基本はどのようなものでしょうか。

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髙野

ベルトと靴の色は揃えましょう。
ベルトと靴の色を同じ色か、ベルトの色の方を淡くするのが基本です。

色の使い方としては、下の方に重たい色を持ってくるのがセオリーです。
そのため靴の色は黒、もしくはダークブラウンが無難でしょう。
その時に、前回もお伝えしましたが、パンツの丈がきちんと合っていることは大前提です。

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小原

ダボダボのズボンで黒の靴だと全体が重たく見えてしまいますね。

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髙野

「足元を見られる」という言葉があるように、足元も大切にしたいですね。
尖っている靴や角ばっている靴、鼻が長い靴は薬剤師さんには避けてほしいです。

例えば、尖った靴で尖った印象を与えるのではなく、知性や誠実さという印象を与えたいですよね。また、ネクタイをするなら革靴で紐靴、外バネのプレーントゥなどが良いですね。

しっかりとした革靴が難しければタッセルローファーのようなスリッポンも良いです。
ネクタイをしないのであれば、黒のスニーカーでも良いでしょう。
靴下も気をつけたいところで、基本は靴よりも淡いか同等の色のソックスにしましょう。

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左:外羽根のプレーントゥ

右:タッセルローファー

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小原

薬剤師は白のスニーカーを履く人も多いですが、こちらの印象はいかがですか?

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髙野

清潔感があって良いと思います。
白衣、シャツ、靴が白色なので、白の面積が大きくなります。そのためカジュアルなスニーカーに合わせてストライプのシャツがオススメです。

薬剤師は立ち仕事が多いので、サンダルなど楽なものをつい選びがちです。
しかし、患者さんにどんな印象を与えるかと考えた際には、足元までしっかりと気を配ることはとても重要です。
患者さんから見られる可能性のある場所はきちんと整えて、せっかくの服薬指導がより信頼に足るものとして伝わるよう、心がけていきましょう。

自分軸ではなく他人軸で考えてみる

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小原

これまで薬剤師の外見について色々とお話いただきましたが、一貫して、相手にどのように見られるかを意識することが大事であると言えますね。

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髙野

服装を選ぶ際、自分がどんな服を着たいかで考えてしまうことも多いと思います。
しかし、服をまとうということは自分のためではなくて、自分が接する人に対してどのような印象を与えて、どのように感じてもらいたいか、といった他人も巻き込んだ行為になります。
つまり、自分の外見は、自分軸ではなく、他人軸で考えると良いということです。

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小原

自分は何のためにこの服装をしているのか、を意識することが重要だということですね。
薬剤師であれば、患者さんに安心感や信頼感を与え、薬の説明をしっかりと聞いてもらう雰囲気づくりのための服装でもある、ということですね。

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髙野

はい。「患者さんの抱えている悩みや不安を解決し、薬の使い方や注意といった情報を正確に届けたい」と薬剤師さんは考えているはずなので、そう思われるために自分はどのような服装であるべきかを考えると良いですね。

前回に続いて、薬剤師でも考えたい「外見」について、服装という観点からスタイリストの髙野大輝さんにお話をうかがいました。

私たち薬剤師は、日々の業務でたくさん患者さんとお話をします。
同じようにお話をするのであれば、気持ちの良い空間で、洗練された外見のプロフェッショナルに対応された方が、きっと効果的でしょう。

今回のインタビューで、薬剤師が日頃からよく使うペンの話もさせていただきました。
その際、「自分用と患者さん用で、ペンを使い分けるのはどうでしょうか?」と提案されました。
ペンを変えるだけでも、患者さんは”特別な存在”として扱われ、「もてなされている」と感じてもらえることがあると思います。

そして、患者さんに気持ちよく問診票を記入してもらうためにはどのようなペンが良いだろう…と、改めて「他人軸」で薬剤師が扱うアイテムを考え直すこと、そうやって患者さんの気持ちになって自分たちのサービスを想像することは大事なことであると気づかされました。

次回は、「患者さん対応に役立つ接客のポイント」を元CAさんにインタビューしてお届けします。

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小原 一将
こはら かずまさ

薬剤師/株式会社sing代表取締役
2009年京都薬科大学を卒業後、様々な保険薬局で勤務。薬剤師の価値をもっと社会に届けたいと考え、2019年12月に株式会社singを設立。「頼れる薬剤師が身近にある社会をつくる」をビジョンとして、薬剤師の教育や新しい働き方の支援を行っている。
Apple製品好きであり、薬剤師の業務や医療の発展に活用できないか日々考えている。

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