接客が苦手な薬剤師のための「コミュニケーション術」

更新日: 2021年8月2日 小原 一将

元JALキャビンアテンダントに聞く、接客術

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第1回第2回では、「意外と見られている薬剤師の外見について」をテーマにお話しました。信頼される薬剤師になるためには、知識の拡充はもちろんですが、それに加えて外見を整えることも大事であることが分かりました。

第3回目の今回は、JALのキャビンアテンダント(以下CA)として国内線や国際線、ファーストクラスなどで10年間活躍された田中智子さんに、お客さんと接する際に意識していたポイントについておうかがいしました。

CAはお客さんが飛行機の中で安全に目的地まで到着するために、安心して過ごせる環境を提供するのが仕事です。そのため、接客術に加えて、非常時対応などのリスク管理の意識も高い職業です。その姿勢は、病気の治療に関わる薬剤師にとっても、参考になることが多いのではないかと考え、インタビューをさせていただきました。今回も記事を前後半の2回に分けて、明日から使える薬剤師のコミュニケーションのコツとしてご紹介します。

私も薬剤師として10年ほど患者さんと関わっていますが、改めて勉強になると思う内容が多くありました。ぜひ皆さんも良いと思うものを取り入れて、より質の高い薬剤師の接客に結びつけてみましょう。

薬剤師の印象と、寄り添う姿勢の重要性

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小原

私は飛行機があまり得意ではないのですが、飛行機に乗り込む時や空港内で困った時など、CAさんはいつも印象良く対応してくれるのでとても助かっています。

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田中

それは良かったです。そのように思ってもらえるように、いつも心がけて仕事をしていますので。

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小原

私はCAさんにそのような印象を持っているのですが、田中さんが薬剤師さんと接した時の印象を教えてもらえますか?

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田中

風邪で病院に行った後、薬をもらうために薬局で話をしたことがあります。薬の説明を丁寧にしてくれたのを覚えていますが、それ以外はあまり印象に残っていないですね。

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小原

私は患者さんとよく雑談をするのですが、そういったことはなかったですか?

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田中

薬以外の話をしたことはないと思いますね。熱が引いて少し元気になってから薬をもらいに行った時に、『元気になりましたか?』などの声かけがあると嬉しいと思います。

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小原

なるほど、そのような相手に寄り添う姿勢は大事ですよね。

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田中

はい。以前、美容外科クリニックの接客を指導して欲しいと言われたことがあります。CAとして学んだことを色々お伝えしたのですが、看護師さんは看護の意識が強く、接客の方法にまではなかなか気がまわらないのかな、と感じました。患者さんのためになりたいという気持ちは凄く伝わってくるので、寄り添う姿勢をもう少し見せられると良いかな、というお話をしました。

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小原

看護師としての技術や気持ちはもちろん大事ですが、その前後にあるコミュニケーションも重要ですよね。同じ医療職として私たち薬剤師も気をつけないといけないところです。

最も印象に残っている「第一印象」という言葉

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小原

お客さんと接する際に気をつけていたことを教えてもらえますか?

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田中

500人乗りの国内線での勤務の場合、すぐに目的地に着いてしまうので、1~2時間くらいの時間しかお客さんとは話ができません。その限られた時間の中で、500人全員とは話せないので『第一印象を良くする』ということを意識していました。

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小原

飛行機に乗り込む際の挨拶などですか?

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田中

そうです。私たちとゆっくり話をすることなく飛行機を降りてしまう方がほとんどですが、それでも乗り込む際には必ず顔を合わせることになります。その際に見せる笑顔を大事にしていました。

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小原

最初にもお伝えしましたが、私はCAさんと顔を合わせた際の印象はとても良いと思っています。

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田中

お客さまから声をかけたい場合があると思います。その際、第一印象が良いと話しかけやすくなりませんか?

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小原

そうですね。何か話したいと思った時にパッと周りを見渡して、笑顔であいさつしてくれたCAさんが近くにいたら声をかけやすいと思います。

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田中

困ったことがあればいつでも声をかけてもらうために、第一印象を常に意識していました。私が10年間CAとして勤務して、1番印象に残っている言葉であり、1番気をつけていたことでもあります。

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小原

初めて会った際に、笑顔で接すると印象は間違いなく良いものになります。ただ、今はほとんどの人がマスク姿になってしまい、笑顔を見せることが難しいですよね。

元JALキャビンアテンダントに聞く、接客術の画像
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田中

それでも目と眉毛は見えるので、目をしっかりと開いて相手を見るとか、手などを使ってジェスチャーをつけるなどの方法があります。薬剤師さんもマスクをしていて患者さんから表情が分かりづらいかもしれませんが、相談してもらいやすくするために第一印象を良くする、というのは重要なポイントだと思います。

初めて会った際に、笑顔であいさつをするかしないかで第一印象は大きく変わります。体に痛みがあったり、精神的に不安であったりする患者さんにとって、困ったことを相談しやすい薬剤師になるためには第一印象を良くすることはとても重要です。患者さんと顔を合わせた際には、いつも以上に笑顔でのあいさつを心がけてみましょう。

薬剤師が患者さんの治療の一助になるために

田中さんのお話をうかがっていると、”プロとしてお客さんと接する姿勢”が私たち薬剤師との共通点が多いと感じました。薬剤師にとっても、患者さんとの第一印象を良くすることによって、不安なことや疑問に感じたことを話しやすくなります。患者さんの情報は多ければ多いほど、よりその人に最適な医療に近づけられるのは間違いありません。いつでも相談してもらえる、そんな信頼関係を患者さんと築くためには、「第一印象」というキーワードはとても重要であると言えます。

また、インタビューの中で印象に残ったのは「旅行に一緒についていくことはできないけど、旅行の思い出になることはできる」という言葉でした。旅行をする人にとって、飛行機はただの移動手段かもしれませんが、そこで起きたことや出会った人はその旅行の1ページとして残り続けます。その旅行が良いものになるようにCAとしてできることは何か、ということを常に意識していたそうです。

私たち薬剤師も、患者さんの治療が少しでもより良いものになるように、そして生活が今よりも豊かになるように、できることは何かと考え続ける必要があるので、見習うべき姿勢だと感じました。

次回は、CAさんとして意識していた「お客さんとの接し方のコツ」と「チームで目の前のお客さんにサービスを届けていた」という内容をお伝えします。

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小原 一将
こはら かずまさ

薬剤師/株式会社sing代表取締役
2009年京都薬科大学を卒業後、様々な保険薬局で勤務。薬剤師の価値をもっと社会に届けたいと考え、2019年12月に株式会社singを設立。「頼れる薬剤師が身近にある社会をつくる」をビジョンとして、薬剤師の教育や新しい働き方の支援を行っている。
Apple製品好きであり、薬剤師の業務や医療の発展に活用できないか日々考えている。

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