心理学の専門家に聞く「薬剤師向け接客術」
せっかく豊富な知識や経験があるのに「コミュニケーション」が苦手で、なかなかうまく患者さんに接することができない、地域医療に貢献することができない…そんな悩みを抱えている薬剤師は多いと思います。
話し方や接し方が上手で、多くの患者さんの心を掴む薬剤師、医師や看護師からも頼られる薬剤師、地域イベントで人気の薬剤師と、いったい何が違うのでしょうか。
そこには、”埋めることができないほどの大きな溝”はありません。実は、ほんのちょっとの心がけ、ほんのちょっとの工夫で、相手に与える印象は大きく変えることができるのです。
そこで本連載では、様々な職種の「接客の達人」に、薬剤師にこそ取り組んでほしい接客のコツを色々と語っていただきます。コミュニケーションに苦手意識を抱いている人は、ぜひ真似できるところから業務に取り入れていただければと思います。
臨床心理士/公認心理士のK.Hさんに聞く、薬剤師の接客術
これまで、スタイリストさんとキャビンアテンダントさんにインタビューをさせてもらい、薬剤師に役立つ接客のポイントをお話しました。第五回目の今回と次回の第六回は、教員免許を取得した後、さらに臨床心理士と公認心理士の資格を取得して活躍されているK.Hさんに、話を聞く際に意識する点やコミュニケーションのコツをお伺いしました。
心理士さんは、クライエントの話を聞いて悩みや不安に寄り添いながらカウンセリングを行います。そこには、自分自身の悩みや、子どもの悩みなど様々なケースが存在します。それら一つ一つに丁寧に耳を傾け、クライエントに安心してもらいながら、今よりも良い心身の状態や日常を取り戻せるように日々活動されています。
私たち薬剤師も薬だけではなく、患者さんの悩みや不安に寄り添いながら服薬指導を行うことが多いです。そのため、今回の話も患者さんと接する際にとても役に立つ内容がありました。ちょっとしたコツや、日々気をつけていく必要があるものまで色々とお話いただいたので取り入れられるものから参考にしてみてください。
昔と違う、薬剤師の印象
患者さんそれぞれの個別性に目を向ける
薬剤師にとっても”個別性”はとても重要であると感じました。薬がその患者さんに適した形で渡されるのと同じように、服薬指導もその患者さんに適した形に変えていかなければなりません。
同じ患者さんが薬局に来られたとしても、今日と明日では対応が変わる可能性もあるということです。良いコミュニケーションのために、それぞれの患者さんに適した声かけを意識してみてください。
相手の言葉を繰り返して伝える
服薬指導の際に、どのように答えるべきか迷ってしまうこともあるでしょう。そのような場合、患者さんの気持ちや思いが込められた言葉を繰り返すことで、しっかり話を聞いていますと伝えることが出来ます。“繰り返し”という方法は、とても効果的で誰にでも取り入れられるので、ぜひ意識して、患者さん対応に役立ててみてください。
コミュニケーションとしての服薬指導を
今回のインタビューで、カウンセリングは相手に嫌な思いをさせてはいけないと言うのが大前提であるとK.Hさんはおっしゃっていましたが、これはコミュニケーションにも当てはまるでしょう。そして、相手が嫌だなと思うポイントは人によって違うので、個別性が大事であると言えます。
薬剤師の提供する服薬指導は、情報提供という側面もありますが、コミュニケーションであると考えるべきでしょう。そうすると、服薬指導は薬の副作用を伝えて終わりということにはなりません。
目の前の患者さんの個別性を意識することで、あえて副作用を伝えすぎないという対応が必要になるかもしれませんし、口頭ではなく文書で伝えた方が良い場合もあるかもしれません。そこに薬剤師の個性やスキルが活かされることになります。
次回のインタビュー記事では、コミュニケーションにとって重要な”共感”について、そしてコミュニケーションのためのコツをお伝えします。