患者さんとのコミュニケーションに役立つプラスワンの意識
せっかく豊富な知識や経験があるのに「コミュニケーション」が苦手で、なかなかうまく患者さんに接することができない、地域医療に貢献することができない…そんな悩みを抱えている薬剤師は多いと思います。話し方や接し方が上手で、多くの患者さんの心を掴む薬剤師、医師や看護師からも頼られる薬剤師、地域イベントで人気の薬剤師と、いったい何が違うのでしょうか。
そこには、”埋めることができないほどの大きな溝”はありません。実は、ほんのちょっとの心がけ、ほんのちょっとの工夫で、相手に与える印象は大きく変えることができるのです。
そこで本連載では、様々な職種の「接客の達人」に、薬剤師にこそ取り組んでほしい接客のコツを色々と語っていただきます。コミュニケーションに苦手意識を抱いている人は、ぜひ真似できるところから業務に取り入れていただければと思います。
IT業界の営業として活躍する前さんに聞く、薬剤師の接客術
第8回目の今回も前回に続き、デジタルマーケティングのコンサルティングを行うPLAN-Bで働く前夏葵さんにインタビューさせていただきました。営業をする際に気をつけているコツやコミュニケーションを円滑にするために後輩にどのように教えていけば良いかについてお伺いしました。
お客さんにとって、何か一つ新しいことをするという”プラスワン”の意識は薬剤師にとっても役立つ考え方です。そしてその”プラスワン”を考える際には、自分自身の歩幅で考えれば良いということを話してもらいました。明日からの業務に使えるこれらの考え方をご紹介します。
お話を伺った方
前夏葵さん
2017年に新卒としてデジタルマーケティングのコンサルティングを行うPLAN-Bに入社。営業として新規、既存のお客様と広く関わる傍ら、採用にも携わっている。トップセールスとして活躍している。
今回のコミュニケーション上達のポイント
- いつもの会話にひと工夫を加える”プラスワン”を意識する
- 自分なりのひと工夫を見つけて試す
- コミュニケーションはあくまでも手段でありゴールをイメージする
ひと工夫を加えて、コミュニケーションの向上を
”プラスワン”という考え方はとても良いと感じました。前さんのお話にもあったように、病院や薬局に患者さんが来る際は、辛い気持ちや不安な気持ちになっていることが多いでしょう。そのような場合に、優しい言葉や寄り添う姿勢があるだけでもコミュニケーションの質は大きく上がります。
このようなことは、処方箋をいくら眺めても分かりません。処方箋と同じくらい目の前の患者さんを観察して、これまでの対応に何か一つをプラスして、患者さんとのコミュニケーションを心がけてみてください。
コミュニケーションは自分の歩幅で成長しよう
”プラスワン”の意識は大事ですが、その幅が人それぞれであるという視点も重要です。例えば、がんの治療をされている患者さんに、がん研究における海外の最新の知見を薬剤師として提供することはとても良いことです。ただ、薬局に来られる患者さんであれば、そのような最先端の情報よりも、治療による副作用が出ていないか、日々の生活で苦労している点がないかということを尋ねるだけでも良いでしょう。患者さん自身が何を求めているかを考え、自分たちができる範囲で、目の前の患者さんにとって何かプラスになることを考えることが重要です。
夜遅く来局された患者さんに「お仕事お疲れ様でした」と声をかけたり、しっかりと薬を飲んでいる患者さんに「忘れず飲めていて素晴らしいです」と一言添えるだけでも効果的です。”自分なりのプラスワン”を意識して患者さんとコミュニケーションをとってみてください。
コミュニケーションは手段なので、目的をしっかりと意識する
インタビューの最後に改めて、「良いコミュニケーションとはどうすれば良いか」と尋ねました。すると、前さんの答えは「最終的な目的がどこなのかが重要」という答えでした。
私たち薬剤師で考えると、「薬の知識を多く持っていること」と同じように、「良いコミュニケーション」は患者さんの問題を解決するための道具であると言えます。
薬剤師が業務を行うためにコミュニケーションはとても重要なので、上達するように努力することは必要ですが、それに加えて患者さんにどうなって欲しいかというゴールをしっかりとイメージすることが大事です。薬の専門家でありながら、在宅医療や健康食品、サプリメントなど幅広い知識を持つ私たち薬剤師は、患者さんのゴールをイメージすることで、大きな視点を持って患者さんの役に立つことができるはずです。