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企業薬剤師の転職・年収コラム

更新日: 2025年4月20日 薬剤師コラム編集部

新薬開発に携わりたい薬剤師必見・仕事内容や年収、転職方法について解説

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医療の進歩は、新たな治療法や医薬品の開発によって支えられています。
しかし、まだ治療法の見つかっていない病気も多くあります。新薬開発は、病気に苦しむ人々に希望をもたらし、生活の質を向上させる重要な使命を担っています。

研究職に心を惹かれながら薬剤師として就職した方もいるでしょう。
本記事では、人々の健康を支える新薬開発の仕事の内容を詳しく紹介します。併せて、気になる年収や転職の可能性についても考えていきます。

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新薬開発のステップ

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ひとつの新薬を生み出すためには長い時間と複雑なプロセスが必要です。
ここからは、新薬開発の主要なステップを詳しく説明します。

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参考:「医薬品の基礎研究から承認審査、市販後までの主なプロセス」/厚生労働省

1. 基礎研究

基礎研究は新薬開発の出発点です。
特定の疾患に対する新しい治療法を見つけるために、地道で基礎的な研究が行われています。

新しい薬の開発のためには、まず薬の材料となる化合物を発見しなければなりません。
基礎研究では、次のようなことが行われています。

  • 創薬の標的分子の探索......疾患に関与する遺伝子やタンパク質を特定します
  • 化合物のスクリーニング......多くの創薬候補の化合物のなかから有望な候補を選別します
  • 化合物の合成展開・薬効評価......選ばれた化合物の構造を改良し、疾患に対する効果と安全性を向上させます

基礎研究は、1つの新薬について通常3〜5年かかります。多くの候補化合物に対して検証を繰り返し、新薬の原料を絞り込み、医薬品へと合成していきます。成功率は非常に低いですが、新薬開発の基盤となる重要な過程です。

2. 非臨床研究

新薬が開発され販売される前には、人間に投与して効果や副反応などを調べる「臨床研究」がありますが、その前に細胞や動物を用いて実験を行う段階が「非臨床研究」となります。
非臨床研究では、新薬候補の安全性と有効性を、動物実験や、培養した細胞の試験管内試験を通じて評価します。

非臨床研究では、次のような研究が行われます。

  • 薬効薬理試験......薬の作用メカニズムと効果を確認します
  • 薬物動態試験......動物実験を通じて、薬の体内での吸収、分布、代謝、排泄を調べます
  • 毒性試験......急性毒性、慢性毒性、生殖発生毒性などを評価します

この段階は約3〜5年を要し、人間での臨床試験に進むかどうかを判断する重要な段階です。

3. 臨床研究

臨床研究は、実際に人間を対象に新薬候補を投与して行う試験です。「治験」とも呼ばれ、通常、次の3つのフェーズに分かれています。

  • 第I相試験......少数の健康な成人を対象に、安全性と薬物動態を確認します
  • 第II相試験......少数の患者を対象に、有効性と安全性を評価します
  • 第III相試験......多数の患者を対象に、既存薬との比較を含めた大規模な試験を行います

臨床研究は新薬に本当に効果があるかを確認する段階であり、人間を対象に治験を行うのので、最も時間とコストがかかります。通常5〜7年を要します。

4. 承認申請・審査

臨床研究を経て効果が認められた新薬については、臨床研究で得られたデータをもとに、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認申請を行います。

ここでは、次のようなステップを経ることになります。

  • 申請資料の作成......これまでの研究結果をまとめた資料を作成します
  • 審査......PMDAによって厳密な審査が行われます
  • 薬事・食品衛生審議会での審議......専門家による審議を経て、最終的な承認が決定されます

この段階は通常1〜2年かかります。

5. 販売

無事、新薬が承認されると、ようやく製造販売へと進むことができます。
人々の健康に関わる医薬品は、製造に関しても厳しい規制があります。安全に新薬の製造、販売を進めるための準備や、販売後のアフターフォローも行っていきます。

  • 製造・品質管理......高品質な医薬品を安定して供給するための体制を整えます。
  • 市販後調査......実際の使用状況下での安全性と有効性を継続的に監視します。
  • 適応拡大......新たな疾患への適応を目指して、追加の臨床試験を行うこともあります。

以上の5つのステップを経て、1つの新薬が誕生します。全体のプロセスは通常10〜15年かかり、成功率は非常に低いですが、人々の健康に大きく貢献する重要な仕事です。

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製薬会社で新薬開発に関わる職種

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製薬会社での新薬開発の中心となるのは、研究職と開発職です。研究と開発は言葉は似ていますが、仕事の内容には違いがあります。

ここでは、それぞれの役割と特徴をみていきましょう。

研究職

研究職は新薬開発の初期段階である基礎研究と非臨床研究に携わります。

【主な業務】

  • 新規化合物の探索と合成
  • 薬効評価試験の実施
  • 動物実験による安全性評価
  • 研究データの解析と報告書作成

【求められるスキル】

  • 専門分野(有機化学、分子生物学など)の深い知識
  • 実験技術と分析能力
  • 論理的思考力と問題解決能力
  • 英語力(論文読解、学会発表などに必要)

研究職は新薬の「種」を見つけ出す重要な役割を担っています。
研究者としての高い専門性とともに、創造性と粘り強さが求められます。

開発職

開発職は主に臨床研究段階以降に関わり、新薬を実用化に導く役割を果たします。

【主な業務】

  • 臨床試験の計画立案と実施
  • 規制当局との折衝
  • 承認申請資料の作成
  • 市販後調査の実施

【求められるスキル】

  • 医学・薬学の幅広い知識
  • プロジェクトマネジメント能力
  • コミュニケーション能力
  • 法律の理解

開発職は研究成果を実際の医薬品として世に送り出す重要な役割を担っており、多岐にわたる知識と調整能力が求められます。

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【こんな仕事も】治験に関わる職種

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最初にみたように、新薬開発には多くのステップがあり、どの段階も欠かすことはできません。そして、高い専門性と責任感が必要となります。
研究職や開発職は狭き門で、旧帝大の学歴、大学院卒、博士号などの条件をクリアしないと就職するのは難しくなっています。

一方で、治験に関わる職種は一般の薬剤師でも比較的就きやすい仕事といえます。
新薬開発の重要な段階である治験には、CRAとCRCという専門職が深く関わっています。
新薬開発に携わりたいという希望をもつ人は、CRAやCRCへの転職を検討するのもひとつの道です。

CRAとCRCについて、仕事内容を詳しくみていきましょう。

CRA (臨床開発モニター)

CRA (Clinical Research Associate)は、治験依頼者(製薬会社など)の立場で、治験の進行管理を行う職種です。

【主な業務】

  • 治験実施医療機関の選定と契約
  • 治験の進捗管理と品質管理
  • 規制当局への報告書作成
  • 医療機関スタッフへの教育・トレーニング

CRAは治験全体を管理し、治験全体の質をコントロールする重要な役割を担っています。

CRC (治験コーディネーター)

CRC(Clinical Research Coordinator)は、医療機関側で、被験者に寄り添いながら治験の実施をサポートする職種です。

【主な業務】

  • 被験者のケアとフォローアップ
  • 治験データの収集と管理
  • 治験責任医師のサポート
  • 被験者への説明と同意取得の補助

CRCは被験者に関わって安全を確かめながら、実際の治験をスムーズに進めるという重要な役割を果たしています。

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新薬開発をするために必要な資格やスキルは?

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製薬会社で新薬開発を行っているのは薬学部出身者だけではありません。理学部や生物学部、医学部などの出身者も活躍しています。
このように、新薬開発のためには薬剤師免許は必須ではありませんが、薬学部出身者はやはり有利であることに変わりはありません。薬学の一般的な知識に加えて、特定の薬物や病気に関する掘り下げた知識があることが望ましでしょう。

現実的なことを言うと、学歴も重要です。特に有名企業で働きたい場合は、旧帝大の薬学部卒であることや、大学院(修士・博士)卒でなければ難しい面があります。

海外の文献を読んだり、海外の企業と関わったりすることもあるため、英語力も必要です。
また、基本的な実験手技、機器操作といった実験技術や、統計学的手法を用いたデータ解析能力も大切だといえます。

また、実際の新薬開発は地道な実験と検証の繰り返しという面が強いので、論理的に仮説を立て、それをコツコツと検証していく粘り強さが問われます。
他のスタッフや他部署のメンバーと情報を共有しながら研究を進めていくコミュニケーション能力も必要でしょう。

このように、新薬開発の仕事では、高い能力とともに人間的なスキルも要求されています。

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製薬会社で新薬開発を行う薬剤師の年収

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製薬会社の研究開発職は、一般的な調剤薬局などと比べて年収が高い傾向にあります。これは、高度な専門性と責任の重さが反映されているためです。

大企業の研究職で大学院卒の場合、初任給が40万円という募集も見られます。
全体としての年収は600万円〜800万円程度が多いようです。

ただし、これはあくまで平均的な金額であり、企業規模、個人の能力、役職などによって大きく変動します。管理職に昇進したり、重要なプロジェクトを成功させたりした場合は、さらに高い年収を得られる可能性があります。大手の製薬会社であれば、年収1000万円以上も可能です。

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新薬開発の仕事に転職するには

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大学卒業後、薬剤師として働いているけれど、研究職があきらめきれない、新薬開発の仕事に転職したいという思いを持っている人もいるのではないでしょうか。
新薬開発の仕事に転職することは可能なのでしょうか。

研究開発職への転職は狭き門

新薬開発、特に研究開発職は人気が高く、新卒であっても就職することも難しい職場です。採用人数が少ないうえに、いったん就職すると離職する人が少ないという面もあります。
そのため、研究開発職への転職は、求人そのものがレアで、競争率が高く、非常に狭き門となっています。

中途採用があるとしても、同業他社での経験者が求められることが多くなっています。
調剤薬局などでの経験のみでは、直接研究開発職に転職するのは難しい場合が多いでしょう。

広い視野で転職活動を

研究開発職の募集が一般的な求人サイトに掲載されることはほぼありません。もし転職したいと考えるなら、薬剤師専門の転職エージェントに登録することが必須です。転職エージェントは非公開求人も持っているので、希望を伝えておけば求人情報を紹介してもらえるかもしれません。

しかし、実際に採用されるのは非常にハードルが高いと言えます。本当に転職したいと考えるなら、大学院に進学して専門性を高めることなどが必要となるかもしれません。

一般企業で新薬開発に関わりたいと考えた場合、研究開発職にこだわらず、広い視野で転職活動をすることをおすすめします。
たとえば、先ほど解説したCRAやCRCも新薬開発には欠かせない重要なステップです。
治験に関わるこれらの職種は、薬剤師の知識を活かしやすく、未経験からの転職も比較的容易です。

転職エージェントは製薬業界の最新動向や、企業ごとの採用傾向に詳しいため、どのような職種があるか、どのようにすれば転職可能かを相談しながらこれからのキャリアを考えていくとよいでしょう。

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まとめ

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新薬開発は、病気で苦しむ患者さんを助け、人々の健康と生活の質の向上に直接貢献できる、やりがいのある仕事です。

しかし、研究職は非常に狭き門であるのが現実です。研究開発職に転職するためには、自身の能力を高めながらも、転職エージェントに相談しながらチャンスをねらっていくことになるでしょう。

新薬開発に関わりたいと考える人は、研究開発だけでなく、CRAやCRCなどの関連職種も視野に入れることで、チャンスが広がります。

自身の適性をよく見極め、長期的な視点でキャリアプランを立てて行動していきましょう。

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薬剤師コラム編集部

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