薬剤師が創薬の道に進むには?仕事内容や必要な経験・スキルを解説
創薬に興味はあるけれど、薬剤師にとってはハードルが高いのでは…と感じたことがある方もいるかもしれません。実際、6年制の薬学部を卒業しただけでは、創薬研究の道に進むのは難しいのが現実です。
では、創薬に関わりたい薬剤師はどのように準備すればよいのでしょうか。
本記事では、薬剤師が創薬の仕事に就くために必要な経験やスキルについてわかりやすく解説します。
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
創薬とは?新薬ができるまでのプロセス
「創薬」とは、新しい医薬品を生み出す一連の過程のことです。1つの薬が実際に使用されるまでには、通常10〜20年もの長い年月がかかります。
創薬の流れは、大きく次の5つの段階に分けられます。
- 基礎研究(2〜3年)
- 非臨床試験(3〜5年)
- 臨床試験〈治験〉(3〜7年)
- 承認申請・製造販売(1〜2年)
- 製造販売後調査(6ヶ月〜10年)
数多くの候補化合物の中から実際に承認に至る確率は非常に低く、開発費は1製品あたり数百億円規模に達することもあります。このように創薬は、膨大な時間・費用・労力が必要とされる取り組みなのです。
参照:くすりができるまで /日本SMO協会
https://www.jasmo.org/business/flow/index.html
参照:医薬品の基礎研究から承認審査、市販後までの主なプロセス
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
薬剤師も活躍する創薬研究の仕事内容
新薬が誕生するまでの創薬プロセスは長く複雑ですが、「創薬の仕事」と聞いてまず思い浮かぶのは、新薬開発の初期段階にあたる基礎研究と非臨床試験でしょう。
ここからは、創薬の基礎研究と非臨床試験について解説します。
創薬の土台となる「基礎研究」と「非臨床試験」
基礎研究は、新しい薬の”種”を見つける段階です。
まず、病気がどのような仕組みで起こるのかを調べ、治療の標的となるターゲットを探します。そのうえで、天然物や合成化合物など多くの物質の中から、効果が期待できる候補を探し出します。これが「スクリーニング」と呼ばれる段階です。
さらに、有望な物質(リード化合物)について化学構造や性質を調整しながら、より薬として適した形へと改良していきます。細胞を用いた実験などで効果を確認し、次の段階へ進める候補を絞り込みます。
基礎研究で選ばれた候補物質に対して、次に行うのが非臨床試験です。
非臨床試験では、薬の有効性や安全性を詳しく評価します。具体的には、動物や培養細胞を使って、毒性や体内動態(ADME:吸収・分布・代謝・排泄)を確認します。
こうした試験を経て十分な基準を満たしたものだけが、ヒトを対象とする臨床試験(治験)へと進んでいくのです。
参照:くすりができるまで /日本SMO協会
https://www.jasmo.org/business/flow/index.html
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
薬剤師が創薬分野に進む主なルート
薬剤師が創薬分野に進む方法はいくつかありますが、代表的なルートは次の2つです。
- 製薬企業の研究職として就職する
- 大学や研究機関で働く
また、臨床を経験後に研究職として転職するというパターンもあります。
それぞれのキャリア形成について、順に見ていきましょう。
製薬企業の研究職として就職する
薬剤師が創薬分野の研究職を目指す場合、主な選択肢は製薬企業に就職することです。
多くの場合、修士号以上を取得してから就職するのが一般的です。そして博士号取得者は基礎研究でも優遇されます。
企業ではチームで新薬候補の開発や評価を進め、実験やデータ解析を通じて製品化をゴールとした研究を行います。
大学や研究機関で働く
大学や研究機関で創薬に関わる場合も、多くは大学院で博士号を取得したうえで研究職に就くのが一般的です。
研究の成果は、論文発表や学会での報告などで評価されます。研究の自由度は高いものの、任期制のポジションが多く、安定した職を得るには時間がかかります。
企業とアカデミアでは研究の目的が異なります。企業では「製品化」が重視される一方、大学や研究機関では「学術的な価値」が重視されます。薬剤師として創薬の研究分野に進む場合も、この違いを理解してキャリア設計を行うことが重要です。
臨床を経験後に研究職として転職する
あまり一般的ではありませんが、病院などで臨床経験を積んだ後、創薬研究に挑戦する薬剤師もいます。ただし、研究経験が少ない薬剤師にとって、研究職への転職は非常にハードルが高いのが実情です。
臨床から研究職へ進む場合は、時間と労力をかけて準備する覚悟が必要であることを理解しておきましょう。
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
創薬の研究職を目指す薬剤師に必要な経歴・スキル
薬剤師の知識は創薬の研究職で活かせることもありますが、一般的な薬剤師業務の経験だけでは不十分です。
ここでは、創薬分野で活躍するために必要な経歴やスキルについて詳しく見ていきます。
6年制の学部卒だけでは創薬の研究職は厳しい現実
日本の薬学教育は、薬剤師資格取得を目的とした6年制薬学科と、研究職向けの4年制創薬学科に分かれます。4年制学科は薬剤師資格は取得できませんが、創薬分野の研究職に進む人が多いです。
一方、6年制薬学科は臨床教育が中心で、卒業時点では企業の研究職で求められる実験経験や論文作成・学会発表の経験を十分に積みにくいのが現実です。そのため、学部卒のみで研究職に就くのはハードルが高く、卒業直後に創薬の道に進むのは簡単ではありません。
薬以外の知識やスキルも必要
創薬研究者には、薬学以外にも分子生物学、薬理学、病理学、分析化学など、幅広い分野の知識が求められます。また、医薬品開発に関わる規制やルールの理解も不可欠です。さらに、実験やデータ解析、論文作成など、研究を進めるためのスキルも重要です。
薬学部で薬の知識を備えていることは有利ですが、それだけでは創薬の研究職として十分とはいえません。創薬の道を志す薬剤師は、薬学以外の知識や技術も意識的に学び、積み上げていくことが求められます。
大学院への進学も重要な選択肢になる
創薬の研究者として働くことを目指す場合、大学院卒(修士以上)の学歴が最低ラインとして求められることがほとんどです。特に基礎研究に携わりたい場合は、博士課程の取得も視野に入れると有利です。
そのため、6年制薬学科を卒業した後に研究職に就きたい場合は、大学院進学を前向きに検討する必要があります。遠回りに思えるかもしれませんが、結果的には創薬に携わるための最も確実な道となります。
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
創薬分野で働く薬剤師の年収と働き方
創薬分野で働く薬剤師の年収は、勤務先や経験によって異なりますが、一般的な薬剤師の平均年収(約599万円)より高めに設定されることが多いです。大手製薬企業では、管理職や経験を積んだ研究職では、将来的に1000万円以上の年収も狙えます。
創薬研究職は比較的安定した働き方が可能で、フレックスタイム制を導入している企業もあります。ただし、重要なプロジェクトや締切の時期には業務が集中することはあるでしょう。
評価は成果やプロジェクトへの貢献度が重視され、専門性や研究実績が昇進や昇給に直結しやすいです。
参照:賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 /厚生労働省
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
研究職以外にもある、薬剤師が創薬に関われる仕事
新薬が世に出るまでには、研究以外にも臨床試験、承認申請、品質管理など、各段階でさまざまな専門職が関わります。
研究経験が少ない薬剤師にとって研究職はハードルが高い場合もありますが、他の職種であれば採用されやすい可能性があります。そのため、「新しい薬を世に出したい」という目標があるのであれば、研究職以外の職種も検討してみても良いかもしれません。
ここからは、研究職以外で薬剤師が創薬に関わることのできる、代表的な仕事をいくつか紹介します。
CRA(臨床開発モニター)
新薬は非臨床試験で有効性・安全性が確認されると、その後ヒトを対象とした臨床試験(治験)へと進みます。CRA(Clinical Research Associate:臨床開発モニター)は、その治験が適切に行われているかを確認し、承認申請に必要なデータを正確に集める役割を担います。
主な業務内容は以下の通りです。
- 医療機関を訪問し、治験が実施計画書やGCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施に関する症例)に沿って行われているかをモニタリング
- 症例報告書(CRF)を確認し、データの正確性・信頼性を評価
- 医療機関への治験実施依頼や契約手続きの対応
- 同意説明文書の確認や作成支援
- 企業と医療機関の間に立ち、スケジュールや進行状況を調整
CRAは、治験の質と被験者の安全を守りつつ、開発を円滑に進めるための重要な役割を担っています。
薬事申請
薬事申請とは、新薬や医療機器を市場に出すために必要な手続きです。製品の販売は、厚生労働省の承認なしにはできません。
目的は、有効性と安全性を国に示し、正式な許可を取得することであり、患者の健康と安全を守るための重要な業務です。
主な業務内容は以下の通りです。
- 申請書類の作成:開発経緯や品質情報、臨床試験データの整理・分析・文書化
- 規制要件に沿った書類作成
- 審査中の質問対応や、関係部署・外部機関との調整
- 製品が社会にどのような価値を持つかを示す資料作成
薬事申請の担当者には、専門知識や正確な文章作成力に加え、関係者と円滑にコミュニケーションを取る力も求められます。
品質管理・品質保証
品質管理は、医薬品の品質と安全を守る仕事です。医薬品はGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理の基準)というルールに沿って作られており、その基準どおりに製造されているかをチェックします。原材料から製造途中、出荷前の最終製品まで、各段階で検査を行い、不備があれば原因を調べ、改善につなげます。
品質保証は、開発から販売後までの医薬品全体を含めて「品質が保たれる仕組み」を管理する役割です。基準や手順の整備、工程の確認、トラブル対応などを通じて、会社全体の品質を支えます。
安心して使える医薬品を届けるためにはどちらも欠かせない重要な仕事です。
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
まとめ|薬剤師として創薬に携わっていくには
薬剤師が創薬の研究職として働く場合、製薬企業や大学・研究機関などが主な選択肢です。しかし、6年制薬学科卒だけでは就職が難しいのが現実で、大学院での修士・博士課程の修了が事実上必須となるケースが多いです。本気で創薬の道に進みたい場合は、大学院進学も視野に入れましょう。
また、創薬分野で薬剤師が活躍できるのは研究職だけではありません。CRA、薬事申請、品質管理・品質保証など、さまざまな職種でも関わることが可能です。企業での働き方も多様なため、自分の目標やスキルに合わせて選択肢を検討するとよいでしょう。
ご相談は無料です。転職コンサルタントに相談してみませんか?