今できる新型コロナウイルス感染症対策1
現在、新興感染症として猛威を振るっている新型コロナウイルス(COVID-19)。開局薬局でも病院でもコロナウイルスへの対策にどうすべきか迷い、疲弊されている毎日であるとお察しします。
そこで、抗菌化学療法認定薬剤師でもあり、院内感染対策チーム(ICT)の一員として働く私から、「感染症対策として今できること、知っておくべきこと」をご紹介します。なお、新型コロナウイルスへの対策は試行錯誤を繰り返している状況であり、新興感染症という特性からエビデンスベースで語り切れない部分があることは、ご了承ください。
今回は新型コロナウイルスの感染経路や対策についてご説明します。
1.コロナウイルスとは?
まずは、コロナウイルスの基礎知識から。現在、人に感染するコロナウイルスは7種類知られています。その1つがいま猛威を振るっている新型コロナウイルスということになります。残りの6種類の中に、皆さんも覚えておられると思いますが、2002年に話題になった重症急性呼吸器症候群のSARSや2012年に発生した中東呼吸器症候群のMARSが含まれます。残りの4種類は一般的な風邪の原因になるといわれるウイルスです。コロナウイルスなんて初めて聞いたと思われる方もいいかもしれませんが、実は、前々から存在していたウイルスなんです。
2.コロナウイルスの感染経路と感染対策
現時点で明らかな感染経路は飛沫感染と接触感染だと考えられます。空気感染ではないとされていますが、エアロゾル、およびマイクロエアロゾルという細かい飛沫で長時間空中を漂って感染を成立させてしまうのでは?と報道されています。これについては、後述させていただきます。まず、飛沫感染とは、感染している人のくしゃみや咳、つばなどと一緒にウイルスが放出されて、他の人の口や鼻から入り込んで感染することを言います。飛沫感染は、物理的バリアや2m程度の距離で防ぐことができるといわれています。また、接触感染とは、上記のような飛沫が手などに付着したまま、何かに触ったりすることで、物や人に付着し、それらを触った手で目、鼻、口などを触るとウイルスが移動し感染を成立させてしまうことを言います。
この飛沫感染を防ぐためには、すべての人が咳エチケットを徹底し、ソーシャルディスタンス(人との距離を2m程度で保つ)を徹底することが重要です。上図で咳エチケットをもう一度、確認してみてください。
さらに、接触感染を防ぐための対策として、最も大切なことは、手指衛生です。要は、ウイルスが付着している物などを触り、ウイルスが手についた状態で、自分の目、鼻、口を触ることで感染が成立してしまうため、手指衛生(石鹸、流水による手洗いや速乾性アルコール消毒など)が大切なのです。病院では、WHOが定めた「手指衛生5つのタイミング」を徹底することを行っていますが、一般の生活でも、何か物や人に触る前、自身の目、鼻、口などに触れる前には、少なくとも手指衛生を徹底することがとても大切です。
陥りやすい落とし穴の1つに手指衛生は行っているつもりでも、その手技が十分でない場合があります。下図に手洗い、手指衛生の正しい方法を示します。
出典:サラヤ株式会社 出典:サラヤ株式会社また、マスクの取り扱いにも注意が必要です。感染制御では、「マスクを取るとき=廃棄するとき」とされていますが、マスクがこれだけ足りない状況で1回の使用で廃棄できないのが現状になっています。そこで、マスクを取り外したとき、マスク表面は汚染されている面である可能性が高いと考え、対策することも重要だと思います。
コロナウイルスにおけるエアロゾルの危険性について
次に、今話題になっているエアロゾルについて少しふれておきたいと思います。一般的にくしゃみなどで放出される飛沫の大きさは5マイクロメートル以上あり、1~数メートルしか飛ばず、短時間で下に落下してしまう一方、5マイクロメートル未満の微粒子となった飛沫(エアロゾル)は、長ければ数時間空中を漂います。この中にウイルスがいる可能性が否定できず、アメリカの研究グループからは、新型コロナウイルスはエアロゾルの状態で3時間以上生存することが確認できたと報告しています。
4月23日厚労省発表の資料でも、「エアロゾルが発生する可能性のある手技(例えば気道吸引、下気道検体採取等)を実施する場合は、N95 マスク(または DS2 など、それに準ずるマスク)、眼の防護具(ゴーグル又はフェイスシールド)、ガウン及び手袋を装着すること。」
とあるため、薬剤師も患者さんとの接触の際には、十分に注意が必要でしょう。
今回は、新型コロナウイルスの概要と、感染経路、感染対策についてご紹介しました。次回は、薬局や病院など職場での感染症対策についてご説明します。