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薬剤師のための最新コロナ対策

更新日: 2021年1月6日 児島 悠史

新型コロナ第3波|薬局での対応を改めて見直そう

新型コロナ第3波|薬局での対応を改めて見直そう

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がまた国内でも広がりを見せつつある今、薬局でも感染対策の必要性が高まっています。多くの薬局では、既に2020年の春から夏にかけて何らかの対策を打っているものと思われますが、気温も湿度も下がる本格的な冬を迎え、さらに 長期戦も予測されるなか、行う必要のない対策にお金や労力を浪費していないかという観点からも、自店舗の取り組みをいま一度見直しましょう。

「手洗い」の徹底

一般的な感染予防策として、最も効果的なものは流水と石鹸による「手洗い」です。「手洗い」はあまりに初歩的な対策のため軽視されがちですが、清潔な流水を存分に使える日本の上下水道環境があってこそできる感染対策であり、むしろ「手洗い」ほど誰にでも簡単にできて効果的な感染対策はありません。われわれ薬剤師は、いつも患者さんの吸入や注射の手技がだんだんとオリジナルに改変されていないかを確認していますが、それと同じように、従業員の「手洗い」がいい加減なものになってきていないかを確認する必要があります。
なお、冬はお湯を使いたくなりますが、お湯で手を洗うと手の油脂が落ちるため手荒れを起こしやすくなります。手が荒れると手洗いもしづらくなるため、適宜ハンドクリーム等でケアしながら、しっかりと「手洗い」を継続していくことが大切です。

また、患者に向けて「正確な手洗いの方法」を啓発することも、薬剤師の重要な仕事ですが、その際には下記のようなポスターを利用するのが便利です。

  • 厚生労働省の手洗いポスター

  • 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の予防」(多国籍言語のポスターがあります)

「マスク」の着用

マスクは自分から飛沫を広げないようにするために有効なものです。また、人は無意識のうちに目や鼻・口をよく触ることから、着用者にとってもそれなりの予防効果を期待できます。そのため、人と近い距離で話をするときなどはマスクの着用が勧められます。夏場と違い、冬場はマスクが少し寒さ対策にもなる上に、喉を湿気で守ることにも役立つため、煩わしさは軽減されているはずです。
しかしこのマスク着用で注意したいのは、仕事で休憩時間に入ったときや更衣室での着替えの際に、うっかりマスクを外したまま近距離で会話をしてしまうケースが、よく起こるという点です。調剤室や投薬カウンターでは忘れずマスクをつけている人でも、居場所が切り替わったタイミングにこうした油断が生じていないか、改めて施設内での意識を確認してください。
また、実際に感染リスクの高い場所で活動する際には、効果が不確かな布・ウレタンマスクやフェイスシールドではなく、不織布マスクを使うようにしてください(札幌では布マスクで感染者と接触した場合に「濃厚接触者」と判断することがあるという報道もあります)。

(参考)

  • 新型コロナウイルス感染症対策分科会「分科会から政府への提言「リスクが高まる5つの場面と感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」

「換気」の徹底

本格的な冬を迎え、薬局の換気事情も難しい季節になってきました。これまでのように窓やドアを開けっぱなしにしていると寒く、どうしても換気の頻度は減ってしまうと思います。そういったなかで注意してほしいのは、あくまで行うべきは「換気」であり、「エアコン」や「空気清浄機」、「空間除菌」、「消毒剤の噴霧」では「換気」の代わりにはなり得ない、ということです。
薬局に設置されているような一般的な家庭用エアコンには、空気を循環させるだけで換気まで行えるものはほとんどありません。そのため、エアコンを稼働させていても換気ができていることにはなりません。また、空気清浄機はそれなりに空気中の微粒子を除去してくれますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策効果は確認されていません。これに頼って換気を怠るのはリスクが高いと言えるでしょう。
世間では非常に売れ行きの良い「空間除菌」を称する雑貨にも、現実の生活環境下でウイルスを不活化させたり、実際の感染症拡大を防いだりする効果などは認められていません。消毒剤の噴霧に至っては、効果がないどころか人体に悪影響を及ぼす恐れがあるため、世界保健機関(WHO)も厚生労働省も行わないよう注意喚起を行っています。
感染症の拡大を受けて国民の不安が高まっている今、医療を提供する場でもある薬局にそういった効果の不確かな対策や雑貨が設置してあると、利用者はどう感じるでしょうか。きっと「薬局で使っているなら効果があるに違いない」と勘違いし、効果のない不要な買い物をさせてしまうことに繋がります。利用者の誤解を招くようなことは、行わないよう注意してください。

(参考)

  • 厚生労働省「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」
  • 日本建築学会「COVID-19に関連した日本建築学会の活動情報」

最後に

薬局は市民が利用できる医療機関では、もっとも身近な存在と言えます。感染症の流行によって多くの人が不安を感じている中、薬局はその不安の解消に大きく貢献できる可能性を秘めていると思います。そのためには、各々の薬剤師が根拠不確かな情報に惑わされることなく、正確な情報と的確なアドバイスを提供していくことが大切です。
そういった際に役立つ、信頼できる便利な情報源を上記以外にもいくつか紹介しますので、ぜひ現場対応に役立てていただければと思います。

  • 新型コロナウイルス感染症対策 薬局向けガイドライン
  • 京都大学SPH 薬局情報グループ「COVID-19 薬局で働く皆様へ」
  • 消費者庁「新型コロナ関連消費者向け情報
  • 日本薬剤師会「新型コロナウイルス感染症に関する情報」

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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