【感染症対策】アルコール過敏症の人の手指消毒方法は?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が続くなか、最近はコンビニへ入るのにも「アルコールによる手指消毒」を求められることが増えています。アルコールによる手指消毒は、確かに個人でできる感染対策として有効なものの1つではありますが、世の中にはアルコール過敏症の人も居ることを忘れてはいけません。
医療機関でもアルコールによる手指消毒をお願いする機会は多いですが、もし自分の目の前にアルコール過敏症の人が現れたら、どのように対応するでしょうか。その対応をこの機会に改めて考え直してみたいと思います。
そもそも、「アルコール消毒」でなければならない理由は少ない
一般的に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のようにエンベロープを持つウイルスは、石鹸や家庭用の洗剤・ハンドソープでエンベロープを破壊すれば、不活化させることができると考えられます。そのため、通常時と同様に「流水+石鹸での手洗い」が最も基本的な感染対策となります。実際、厚生労働省も手や指のウイルス対策として「手洗い」を、「アルコール(濃度70~95%)」と並べて2つ提示(手洗いの後にアルコール消毒を重ねる必要はない)しています1)。
「アルコール消毒」は時と場所を選ばず気軽に行えるため、色々な場面で広く用いられていますが、一般的な感染予防効果は「流水+石鹸での手洗い」と同等と考えられます2)。つまり、手をしっかりと洗える状況であれば、敢えて「アルコール消毒」でなければならない理由は特にない、ということです。このことから、アルコール過敏症の人の手指衛生としては「流水+石鹸での手洗い」が最も良い選択肢になると考えられます。
日本は上下水道が極めて整備された国のため、山奥や秘境の谷を旅している状況でもない限りは、お手洗いや化粧室で「流水+石鹸での手洗い」をしやすい環境にあります。アルコール消毒が適さない場合には、このインフラを存分に活かした手指衛生がお勧めです。
手洗いをできない状況での選択肢は…?
そうは言っても、車や電車での移動中、トイレが混雑している、席を立ちにくい…など、日常生活の中でも「手洗い」をしにくい状況や場面は少なくありません。そういった場合にはどんな代替案があるでしょうか。
たとえば、エタノールと並んでよく使われる手指消毒液に「ベンザルコニウム」があります。エタノールよりも効果の低い低水準の消毒液に分類されていますが、北里大学の調査では、0.05%または0.1%の「ベンザルコニウム」と1分間接触させることで新型コロナウイルスの消毒が可能だったことが報告されています3)。そのため、アルコール過敏症の人にとって、アルコールを含まない「ベンザルコニウム」だけの手指消毒液は1つの選択肢として考えられます。
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