〇〇でしゃっくりが止まる?漢方で使われる果物の一部とは?
生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。
参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
煎じて飲むとしゃっくりが止まる効果があるのに捨ててしまっている果物のある一部とは?
- ミカンの皮
- 柿のへた
- アケビの茎
- 梅の未熟な果実
答え
- 柿のへた
柿といえば秋の味覚の一つで子どもからお年寄りまで親しまれる果物ですが、根っこから葉っぱ、実、へたまで捨てるところがないぐらいいろいろな力を持っているすばらしい食材なのです。近年ではヨーロッパなどでもその認知度は高く「KAKI」として市場で売られているのをよく見かけるようになってきました。
そんな柿を食べるときに躊躇なくぽいっと捨ててしまっている柿のへたが、実は「柿蒂(してい)」という名前を持つ立派な「行気薬」の一つだということはあまり知られていないかもしれません。行気薬とは気の巡りがうまくいかないことで引き起こされるめまいや耳鳴りなどの諸症状を、気を巡らすことで改善させる生薬のことです。
「柿蒂」は上に上ってしまっている気を下げる効果があると言われています。また、しゃっくりに対しては、柿に含まれているヘミセルロースが胃内で固まり物理的にしゃっくりを止めるとされていて、しゃっくりが止まらないときの特効薬として民間でも広く使われているそうです。
使い方はへたをそのまま乾燥させて煎じて飲むだけです。それに生姜や丁子を加えると「柿蒂湯」という漢方製剤になります。その適応症はずばり「しゃっくり」。また「柿蒂」はゲップを止めたり夜尿症にも効果があるといわれています。
なので、今年の秋に柿を買われた方はへたを捨てずに乾燥しておいてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、柿のほかの部分についても少しだけ触れておきます。根っこは「柿根(しこん)」と呼ばれて、止血するときに使われますし、葉っぱにはビタミンCやタンニンなどの栄養が含まれており、柿の葉茶として飲まれたり、柿の葉寿司のなどにも使われたりと、広く親しまれているのは皆さんよくご存知だと思います。
新陳代謝を整えて美肌作りに効果があり、抗菌作用をもつので風邪の予防などにもよいとされています。さらに、動脈硬化予防や血圧低下作用を持つともいわれています。干し柿の表面に出てくる白い粉は「柿霜(しそう)」と呼ばれ、それを加熱して作られた「柿霜餅(しそうべい)」は喉の痛みや咳止めなどに使われるそうです。また、柿の実から作られる「柿渋」は血圧降下作用を持つとされています。