患者さんとの会話に役立つ“身近な生薬”

更新日: 2020年8月6日 河本 ちかこ

捨てていませんか?それ、熱中症対策に使えるかも

患者さんとの会話に役立つ身近な生薬の画像

生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。

暑~い季節の熱中症予防に効果があり、むくみなども改善してくれる夏に旬を迎える食べ物の一部とは。

  • なすびのへた
  • トマトの種
  • 冬瓜の皮
  • ゴーヤのわた

答え

  • 冬瓜の皮

毎年この時期になると天気予報の時間に今年の夏の暑さ予想が始まり、熱中症対策をどうしようかと頭を悩ませている方も少なくはないのでしょうか。
年々、熱中症対策のグッズも充実してきているので、以前よりはその対策にあたふたしなくてもよくなってきたように思いますが、それでも、やはり特に年配の方や小さいお子さんにとって熱中症はとても怖いもの、日頃からなにか簡単に取り入れられる予防策があればやってみたいという方は多いのではないでしょうか。
そんな人におすすめなのが、ちょっとした手間でいつも捨ててしまっている夏の野菜を使った熱中症対策です。
その夏の野菜とは「冬瓜」。そして有効利用できるのがその皮なのです。
冬瓜の皮の話の前になぜ冬瓜は夏が旬であるにも関わらず「冬瓜」というかご存知ですか。じつは、冬瓜の皮はとてもしっかりしていて、傷をつけなければその状態で冬まで持つからなのです。そんなしっかりと堅い冬瓜の皮をちょっと薄めにむいて天日で乾燥させれば漢方の「冬瓜皮(とうがひ)」のできあがりです。「冬瓜皮」は利水薬に属し、清熱利湿効果、利水消腫効果などを持ち合わせます。まさに熱中症の内にこもった熱を外に出し、またこもった水分を体外に出すときにでる気化熱で体温を下げるといった効果が期待できるのです。
使い方は「冬瓜皮」を鍋に水と一緒に入れて沸騰したら10~15分程度煮出してそれを飲むだけです。
でも、皮をわざわざ天日干しするのが面倒だわと思われる方は、天日干しをしなくても、そのままでお湯を注いで飲んでもその効果を得ることができます。また冬瓜のスープなどを作るときに一緒に皮も入れてそのエキスを煮だして食べるというのでもよいかと思います。
ちなみに、冬瓜の種は「冬瓜子(とうがし)」という名前の排膿薬になります。排膿薬とは、化膿性のできものや炎症、蓄膿症、痔瘻、歯槽膿漏や中耳炎などの治療に効果があるとされている分類の生薬で、「冬瓜子」は肺を潤して、痰を取り除き化膿性の腫れ物を治す力があるようです。
ほかにも西瓜の皮も同じように「西瓜皮(せいかひ)」という漢方になります。その効果は「冬瓜皮」に似ていますが、効能が「冬瓜皮」は清熱利湿効果であるのに対し「西瓜皮」は清熱解熱効果、利小便、止渇になります。
いつも捨てていた皮を有効活用してみてくださいね。

参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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