月経不順や女性の悩み解決の手助けをしてくれる種って?
生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。
女性特有の悩みの月経不順や産後のむくみなどを改善してくれる身近な果物の種は?
- 桃の種
- リンゴの種
- 梅の種
- 杏の種
答え
- 桃の種
桃の種は「桃仁(とうにん)という生薬になります。といってもあの堅い桃の種をそのまま使うのではなく、外の堅い部分を割って出てきた種の核の部分を乾燥させたものになります。読者の中には、梅干しの種をがりっと砕いてその中に入っている白い部分を食べたことがある方がいるかもしれません。「桃仁」はその梅干しの中身の“桃バージョン”だと思ってください。
「桃仁」に含まれるアミグダリンという成分が血液の粘度が高くなって流れが悪くなっている血滞を改善する働きを持っているので、その作用を応用してさまざまなシーンで使われるのです。
では、どんなシーンで使われるのでしょうか。桃といえば桃の節句が思い浮かべられますし、桃の外見の柔らかくて丸くてかわいいイメージからも連想できるように、「桃仁」は女性特有の症状を改善する力があるといわれています。具体的には、ホルモンバランスを整えることにより、月経痛や無月経などによりお腹が痛いという症状や、月経量が少ないなどの症状を改善するといわれています。また産後のむくみの解消などにも使われます。
ほかにも、体内の血の巡りをよくし、さらに水の巡りも改善させるので鬱血や血行障害からくる腫れ物を縮小させてくれます。その力を利用して、子宮筋腫や卵巣のう腫などを改善するといわれています。
また、血の巡りをよくして肩こりや関節の痛みを取ったり、油脂を豊富に含むので腸の津液を潤す作用を持ち乾燥性の便秘の人の便通を改善したりします。
ほかにも少量で鎮咳、去痰、抗アレルギー作用を示します。
ただし、子宮を収縮させるので妊婦には禁忌なので気をつけてください。
使い方は、漢方製剤としての服用が最も一般的ですが、煎じて取り入れることもできます。その際には3~5g程度を800ccぐらいの水に入れて15分程度煎じてから使用してみてください。また、蒸留酒につけておいて「桃仁酒」をつくり少しずつ飲むのもよいかと思いますが、前述したように「桃仁」は漢方処方用薬の一つなので安易に取り入れず医師に相談してからの方がよいかもしれません。
ちなみに桃の花も「白桃花(はくとうか)」という生薬で、ケンフェロールという成分が含まれ、利尿剤、緩下剤として使われており、むくみの解消や便秘改善、生理不順似も効果があると言われています。葉は「桃葉(とうよう)」と呼ばれる生薬で、消炎や抗菌作用があるといわれ、乾かした葉をお風呂に入れるとあせもや湿疹などの皮膚症状を和らげてくれるそうです。
蛇足ですが中国では桃は邪気を払い、不老長寿を授けてくれる仙木、仙果として知られていて、強力な魔除けや厄除けのパワーがあるといわれているそうです。いろいろ説はありますが、桃太郎伝説もおじいさんとおばあさんが桃を食べて不老長寿の力を得たことで、桃太郎が生まれたという話も…。
参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院