患者さんとの会話に役立つ“身近な生薬”

更新日: 2020年10月1日 河本 ちかこ

五臓六腑をバランスよく養うスーパーでも手に入る食材を日々の食卓にとりいれてみて

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生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。

胃腸に、肺に、腎に肝にと幅広くその効果を発揮する身近な、ながーい食べ物は?

  • ごぼう
  • 山芋
  • うど
  • ねぎ

答え

  • 山芋

「山芋」は生薬では「山薬(さんやく)」と言われて、脾、胃を補う作用と肺や腎を補い、呼吸器系の疾患や夜尿症などを含む泌尿器系の疾患を改善する作用、血糖降下作用をしめすことで糖尿病の体質を改善するなど、さまざまな力を持つ食材なのです。
なぜ、「山芋」と呼ばずに「山薬」と呼ぶのでしょうか。「山薬」にはたくさんの効果が期待できるからなのか、シンプルに「山にできる薬」という意味からこの名前がついたのだそうです。山にできる栄養価の高い山芋だったら「自然薯」のことと思われるかもしれませんが、本来「山薬」は日本薬局方では長いもとヤマノイモを示すので、「自然薯」は含まれないという説があるのでご注意を。
この「山薬」、体内のエネルギー源となるデンプンが豊富なため、古くから「山のうなぎ」と言われるほど精力がつくことで知られていたそうです。また、消化酵素のジアスターゼを含むのでほかの飲食物の消化を助けてくれる働きもあります。さらには活性酸素を除去すると言われているカタラーゼも豊富に含んでいることからアンチエイジング効果も期待できます。昔からねばねば食材は精がつくとはいわれてきていますが、その中でも「山薬」はかなり優秀な食品に入るのではないかと思います。
「山薬」を含む漢方薬には「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」「八味地黄丸(はちみじおうがん)」、「啓脾湯(けいひとう)」などがあり、比較的皆さんにもおなじみなのではないでしょうか。
「山薬」は長芋の皮を薄くむいてから乾燥させるのですが、輪切りにして乾燥させることが多いようです。
使い方はさまざま、一度水などで柔らかくしてからおかゆに入れたり、中華スープにいれたりしてもよいでしょう。調理が面倒だわと言われる方は水に入れて沸騰させたあとに中火で煎じて飲んでもよいかと思います。またほかにも「山薬」を刻み、砂糖とホワイトリカーなどに入れてつけ込めば滋養強壮、精力減退、疲労回復に効果があるそうです。試してみてください。

参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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