患者さんとの会話に役立つ“身近な生薬”

更新日: 2021年1月3日 河本 ちかこ

胃腸を整えてのどの乾きや下痢にも用いられる、よく目にするたべものとは?

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生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。

気を補ったり、胃腸を整えたり、便秘を解消する作用をもち、多くの漢方薬に配合されている意外と身近なものとは?

  • お米
  • 鰹節
  • 鯛の骨
  • リンゴの芯

答え

  • お米

皆さん、子供の頃に風邪を引いたりお腹の調子が悪かったりしたとき、お母さんにおかゆを作ってもらい、食べさせてもらった経験はありませんか。お腹の調子が悪いだろうから消化のよいものを、との親心かなと思っていましたが、実は中医学の観点から考えても、このような体調のときにおかゆ(お米)を食べるのはとても的を得ているのです。
お米は「粳米(こうべい)」というれっきとした生薬の一つ。精米する前の玄米の状態で使います。
「粳米」は温病補陰薬(「温病補陰薬」とは身体の中の津液(水分)や血液などが不足している人に状態を改善して乾きを癒やしたり、発熱などを抑えるような作用をもった薬のことをいいます)の一つで、その効用は主に「滋養」「補気」「健脾(けんひ)」「止渇(しかつ)」などになります。
具体的には乾燥している体内の粘膜や胃腸を潤してあげることで、口が渇かないように助けます。口から胃腸、大腸は消化器系臓器としてつながっているので、「粳米」の潤す作用がこの一連の臓器で発揮されるということです。
また、ほかにも滋養、健脾作用により、食欲を増進させ、身体にエネルギーを与えてくれる作用や消化不良の下痢を止めるという働きを示します。なので、風邪で食欲がなく、体力が回復しないときや元気がでないときにはおかゆをたべて少しでも早く体力を回復させてみてください。
ちなみに「粳米」と「乾姜」を合わせると、冷えて体力が低下してしまった人に使われる「桃花湯(とうかとう)」の処方になるので、おかゆに生姜を加えてその代用として食べるのもよいかと思います。
日本人の主食のお米が生薬の一つで日々その効果を享受しているなんて、素晴らしいですよね。食の欧米化といわれていますが、今一度日本食を見直すのもよいかもしれません。
補足ですが、漢方製剤で粳米は「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」、「竹葉石膏湯(ちくようせっことう)」、「白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう)」、「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」、「補肺湯(ほはいとう)」など多くのものに配合されています。これだけ多くのものに配合されているってちょっと意外ですよね。

参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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