患者さんとの会話に役立つ“身近な生薬”

更新日: 2021年2月11日 河本 ちかこ

肺の熱をちらして潤いを与えて、咳を抑えるものは?

患者さんとの会話に役立つ身近な生薬の画像

生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。

口の渇きを抑え、咳を止め、痰を取り除くような作用を持つ果物の一部は?

  • 梨の皮
  • バナナの皮
  • イチゴのへた
  • イチジクの種

答え

  • 梨の皮

秋になると豊水、幸水、新高、二十世紀などいろいろな種類の梨がスーパーなどの店頭に並びます。それぞれ食感も違えば味もかなり違いますが、持っている効用はほぼ同じ。梨の実はその水分が豊富なことからも容易に想像できるように肺を潤し、喉の炎症を和らげる効用を持ちます。秋は「燥」の季節なので、その時期に旬を迎える梨を食べることで燥(乾燥)から身体を守ってくれるという中医学の考え方にも沿っています。
ほかにも、カリウムの含有量が高く、体内のナトリウムを排出する効用ももつので高血圧の予防によいといわれています。
また梨には身体を冷やす効果があるので発熱時に食べると身体の熱を取ってくれることも期待できます。もちろん、食べ過ぎると身体を冷やしてしまうので高齢の人などはたくさん食べないようにするか、調理してから食べる方がよいでしょう。
ほかにも身体の中の酒毒を解消する働きがあるので、二日酔いにもよいといわれています。
これらの効果は実だけではなく皮にももちろん含まれていて、その効果は皮の方が高いとも言われています。
その梨の皮は「梨皮(りひ)」と呼ばれて補陰薬に属します。補陰薬とは身体を潤し、冷やす力を持つ薬で、陰を補うことによって元気になろうとする力を与える作用をもつものです。補陰薬として「梨皮」の持つ作用は、止渇作用、鎮咳作用、止血作用、止瀉作用、去痰作用、皮膚再生、消化促進作用、浮腫改善作用などになります。
これらの作用は肺を潤す作用、熱を取り津液を補う作用、腎を養うことで精気を補う作用、体内の余分な水分を取り除く作用などからもたらされます。
梨の実を食べるときに皮を捨てずに干しておきそれを煎じて服用するのもよいですが、梨を皮ごと調理して食べるのもよいでしょう。梨を横半分に切って、種の部分を取り除きそこに蜂蜜、あるいは百合根などを入れて皮ごと蒸すと梨の甘味でまるでコンポートのような味わいになります。乾燥の季節に最適なお手軽なスイーツです。

参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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