スーパーで見かける商品で、外用薬としてもその力を発揮する食材は?
生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。
スーパーによくある食材で、あかぎれなどに使われるものは?
- ラード
- 餃子の皮
- もずく
- 鶏の皮
答え
- ラード
最近では健康を意識した油として、オリーブオイルやグレープシード、ひまわり油といった様々な油が売られていますが、昔からの定番といえばサラダオイル、ごま油、そしてラードではないでしょうか。
その中でも動物性の油であるラードの融点は、植物性の油よりも高く牛脂よりも低い30度前後という特徴があります。その脂はヒトの脂に近いと言われており、外用剤として古くから使用されているのです。
ラードの生薬名は「豚脂(とんし)」といって、補虚、潤燥、解毒の作用を持つと言われています。食用として使用した場合は身体にエネルギーを蓄えさせ、肉体疲労を改善し、元気にしてくれます。ラードに含まれるパルミチン酸から合成されパルミトレイン酸は脳内の血管に入り込むことができる数少ない脂肪酸の一つで、脳の血管を強くする力があると言われています。そのため、食用として用いれば脳の血管障害が原因の病態の予防効果があると言われています。
一方、外用として用いた場合、「豚脂」は身体を潤したり、乾燥を防いだりする作用、また皮膚の状態を回復させる作用が期待されます。また、「豚脂」は皮膚に対する刺激性が低く、浸透性も優れていることから軟膏基剤としても優れているといえるでしょう。
特に有名な配合としては「ごま油」とともに用いる方法です。この2種の配合は皆さんもよくご存じの「紫雲膏(しうんこう)」や「左突膏(さとつこう)」にも用いられています。この「豚脂」と「ごま油」の配合薬はやけど、しもやけ、ひびわれ、あかぎれ、痔疾に効果があるとされています。この配合に「紫雲膏」は「紫根」や「当帰」、「黄蠟」を「左突膏」には「黄蠟」や「松脂」などが混ぜてあります。「紫雲膏」に含まれるその色の代名詞ともいえる「紫根」は傷の治りをよくし、加えて抗菌・抗炎症作用があります。主薬である「当帰」は航ヒスタミン作用があるためむくみや腫れを改善する作用を持ちます。これらを合わせることで「紫雲膏」の効能効果にあるあかぎれやしもやけ、やけどなどに効果を表すのです。
ただ、「豚脂」の問題点は酸化しやすいことと匂いです。これらの理由により違う基剤を用いたものも開発されているようです。
参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院