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患者さんとの会話に役立つ“身近な生薬”

更新日: 2021年6月16日 河本 ちかこ

よく目にする花で熱を取り、かすみ目や視力の低下などを改善してくれるものは?

患者さんとの会話に役立つ身近な生薬の画像

生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。

身近な花で視力低下やかすみ目などを改善してくれたりするものはなんでしょう?

  • 水仙の花
  • スミレの花
  • 菊の花
  • ヒヤシンスの花

答え

  • 菊の花

菊といえばお墓や墓前に供えたり、お刺身の飾りに使われたり、また全国各地で菊まつりが開催されるなどいろいろなところで目にします。これだけ身近なのは、「菊の花」が吉祥、長寿の象徴である、おめでたい花であることも関係していると思われます。また、生薬としても2000年以上昔から栽培されてきていて、長い間身近な存在として「菊の花」は生活の中に入り込んできています。そんな生薬の「菊花」は「きくか」と呼ばれ「辛涼発表薬」に属します。「辛涼発表薬」は、熱病の初期の津液(体内の水分)が不足している状況で熱を取り除きたいときによく使われる優しい発汗作用を持つ薬のことをいいます。
「菊花」はこの辛涼発表作用のほかにも清肝明目作用も併せ持ちます。清肝明目作用とは、「肝」の熱を取ることで目を明らかにするという作用なのですが、中医学では目の働きは肝に関係するといわれていますので、肝の熱を取り、その機能を正常化することで目の様々な疾患を回復させるといった作用のことをさすのです。
具体的には「菊花」は頭痛、めまい、目の充血、視力の低下、目のかすみ、化膿性の炎症の改善のために用いられます。これは、「菊花」の清肝名目作用である肝の熱を取り除き、目の不調を改善するという作用を用いたものになります。
また、ほかにも辛涼発表作用を期待して、風邪の引き始めなどに服用することで、やさしく発汗させ、体表の邪気を取り除くことにより、発熱、目やに、くしゃみ、鼻づまりなどの風邪の諸症状を改善させたいときにも用いられます。
ちなみに西洋医学の観点から見たこれらの明目作用は「クサンテノン」「ビタミンA」が関係しています。「クサンテノン」「ビタミンA」などは目の健康、皮膚や粘膜を正常に保つために欠かせない栄養成分になります。これらの成分の活躍により疲れた目を内側から改善してくれるのです。
また、ほかにも「ビタミンB1」も含まれており、こちらは脳や神経の疲れを改善する力があるため、疲労による視神経の不調を治してくれるのです。
目の疲れやかすみ目といえば現代人を悩ませるスマホなどによる目の疲れ、老眼などが思い浮かびますが、これらにも効果があるので一度お試しあれです。

参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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