普段何気なく使っている調味料で胃腸を温めて痛みをとる力を持つものは?
生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。
料理に欠かせない調味料の一つで胃腸を温めて痛みをとるものなんでしょうか?
- 塩
- 胡椒
- 砂糖
- 醤油
答え
- 胡椒
キッチンで手に取りやすいところに整然と並ぶ調味料類。こだわりのものを持っている人も多いのではないでしょうか。何気なく使っている調味料ですが、味を調えるだけでなくそれぞれ効用を持っているのです。
今回取り上げるのは「胡椒」。「胡椒」は食欲を増進させるほか、食べ物の臭みを消す効果、殺菌防腐効果があることはよく知られています。そんな「胡椒」も実はれっきとした生薬の一つなのです。
中医学において「胡椒」は「温裏薬(うんりやく)」に分類されます。「温裏薬」は別名「散寒薬(さんかんやく)」ともいい、全身や局所の血液循環を促進し、代謝機能を高めることにより裏寒を治療する薬になります。
「温裏薬」の中でも「胡椒」は体を温める力が比較的強く、胃の働きを高めて、冷えによる痛みや吐き気、下痢、消化不良などの様々な胃腸症状を取り除いてくれる作用を持ちます。 また、中医学では香り強いものは気を巡らせる力が強いといわれていて、「胡椒」もその塁にもれず、気を巡らせる力を持っています。つまり、憂鬱な気持ちや不安感を取り除いてくれる効用を持っているのです。
西洋医学からみてみると「胡椒」には「ピペリン」、「カリウム」、「鉄分」などが含まれています。このうち「ピペリン」にはたくさんの効用があります。まずは、抗菌、防腐作用。これは言わずもがなで、ものを腐らせるのを遅らせる作用になります。次に血行促進作用、こちらは血管を拡張させて、血流を改善させる効果です。そして、消化機能を調整する作用です。こちらは、脾臓の消化酵素を刺激する作用があるため、胃腸の不調を改善してくれます。ほかにも女性にうれしいエネルギー代謝をアップさせる効用も持っているので、ダイエットをしているひとはちょっと使ってみてください。
ちなみに、日本でも民間療法として胡椒を虫歯に詰めて痛みをとったり、喘息に内服したり、食あたりなどの時に内服したり、おしっこが出ないときにおなかに張ったりしていたようです。ちょっと面白いですよね。
参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院