日本でも最近身近になったフルーツの一部で痛みに効果があるものは?
生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。
日本でもときどき見るようになったフルーツの一部で止痛作用をもつ物はなんでしょう?
- マンゴスチンの種
- ライチの種
- ドラゴンフルーツの種
- スターフルーツの皮
答え
- ライチの種
日本にいながら世界各国のフルーツが食べられるようになってきました。その中でも比較的なじみが深く、人気のフルーツである「ライチ」。中華料理を食べに行くと食後のデザートとして提供されることもしばしばあります。また、美しさを追求する人として有名な「楊貴妃」も好んで食べたと言われていることから、その美容効果には注目が集まっています。
「ライチ」の実には脾胃を補って不足している血を作る助けをすることで、血流を改善させたり、肌や髪に潤いを与えたりする効果を持っていますが、その種である「茘枝核(らいちかく)」にも様々な効果があるのです。
「茘枝核」は理気薬に属します。理気薬とは気の鬱滞によるからだの諸症状に対して、気を巡らせることにより改善させる効用を持つ薬のことをいいます。
「茘枝核」はその気の滞りを下に下ろして、体内にある鬱滞の原因を散らすことで気を巡らせるという作用を示します。また、体内にある寒邪という冷えの原因を外に出し、からだを温めることで痛みなどを改善させるそうです。特に胃腸の痛みや産後の腹痛、生理前の腹痛などに効果が見られます。
西洋医学的観点からも研究が進んでおり、「茘枝核」はコラーゲンやヒアルロン酸を分解する酵素を阻害することで、体内のコラーゲン、ヒアルロン酸の減少を抑制する作用を持つといわれています。また、体内の活性酸素を取り除くため、肌トラブルにも有効ですし、メラニン色素の産生を抑制するので美白効果も持っていると言われています。さすが、楊貴妃が愛したフルーツの種、美容効果が高いですね。
ほかにはちょっと意外なのですが、癌の抑制効果も持っています。作用機序は胃がん細胞に対するアポトーシス誘導によるもののようです。また、糖尿病合併症に関与しているといわれているアルドースレダクターゼに対する阻害活性が確認されているので、糖尿病の合併症の予防に効果がある可能性も報告されています。
ライチの食べる白い果肉からするとあまりに大きすぎるその種、ライチの果肉好きの人からすると小さくならないかと思われがちですが、意外と優秀な生薬なのですね。
参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院