公園などでよく見る草で、止血作用や腹部の痛みを和らげる作用を持つものは?
生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。
公園などでよく育っていて、止血作用や冷えによる腹痛などにも効果があるものは?
- エノコログサ
- ヨモギ
- クローバー
- エンドウ
答え
- ヨモギ
ヨモギといえば、道ばたや公園、川縁などいろいろなところで見かけますよね。昔はよくその先の柔らかい部分を摘んできて家でよもぎ餅を作ったものです。
実はこのよもぎ餅、3月3日の桃の節句に食べると習慣があったのをご存じでしょうか。桃の節句は女の子の節句と思われていますが、一方で「上巳の節供」とも言われ、母子がともに健やかにという願いを込めたお祝いをする時でもあります。よもぎ餅に入っている「ヨモギ」は中医学では「艾葉(がいよう)」と呼び、安胎作用を持つと言われています。「艾葉」の持つ安胎作用は冷えによる腹痛を治し、流産を予防する作用のことを言います。この作用を持つことから桃の節句で食べられるようになったとも考えられています。
「艾葉」は温経止血薬に属します。温経止血薬とは温熱性で体を温め、脾胃をいたわり毛細血管の透過性を抑制することで止血作用を示す薬を指します。
「艾葉」は子宮を温めて冷えを改善する働きや浄血作用、止血作用を持つと言われています。
ほかにも体を温めることで食欲増進させたり、胆汁分泌促進させたり、冷えによる腹痛や胸焼け、下痢、便秘などを改善する作用を持ちます。
「艾葉」のすごいところは、内服だけではなく外用としても使えることです。「艾葉」を入れたお風呂につかることで、腰痛や腹痛、痔の痛みなどを緩和させてくれます。また、殺菌作用をも持つことから、煮出した汁に足をつけると水虫などの症状を和らげたり、かゆみや湿疹などの皮膚症状を緩和したりするとも言われています。
ちなみに皆さんご存じだとは思いますが、お灸の治療の「もぐさ」は「艾葉」の葉の裏側の毛を集めたものです。いろいろな場面で大活躍の「艾葉」、お散歩がてらに摘みに行くのもいいかもしれませんね。
参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院