患者さんとの会話に役立つ“身近な生薬”

更新日: 2021年11月23日 河本 ちかこ

道ばたや公園などでよく見られる草で女性の強い味方は?

患者さんとの会話に役立つ身近な生薬の画像

生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。

道ばたでよくみかけ、食用から外用まで幅広い用途で使える女性の味方は?

  • ペンペン草
  • 猫じゃらし
  • ヨモギ

答え

  • ヨモギ

日本中どこでも日当たりのよい場所では目にするヨモギ。公園の脇などでも目にすることが多いこの野草は、実は「ハーブの女王」と呼ばれていて女性の強い味方の生薬なのです。タンパク質やビタミン、ミネラルが豊富でお茶にしてもよし、よもぎ餅のように調理して食してもよし、外用にも使うことができ、幅広い用途で使うことができます。
ヨモギは生薬名を「艾葉(がいよう)」といい、「補血薬」に属します。「補血薬」とは血液成分を補い、血液不足や血行不良などによって起こる諸症状の改善する生薬のことを言います。
「艾葉」が持つ主な作用や止血作用と安胎作用、血行促進作用、利尿作用です。止血作用では、子宮出血や血便、血尿などの出血性疾患に効果が見られ、ほかにも女性の不正出血や月経過多、皮下出血などを改善する効果が見られます。また、生理不順や冷え性などの症状改善にも効果がみられますが、子宮刺激作用があるので妊婦には注意が必要です。
子宮刺激とは相反するようにも思えますが、「艾葉」は前述したように安胎作用を持ち合わせています。この安胎作用により、冷えによる腹痛を治し流産を予防するといわれています。しかし、いずれにせよ妊婦には慎重に使う必要があると思います。
ほかには、食物繊維がとても豊富なので、便秘の予防にも使われますし、利尿作用を持つことから体に蓄積した老廃物を排出する、いわゆるデトックス効果を期待して用いられることもあります。また、免疫賦活作用、抗炎症作用により皮膚や粘膜を守る作用も持つとされています。
使い方としては、食用にするときには春先の新芽を摘んで、灰汁の下処理をしてから用います。また、乾燥させた葉(艾葉)を煎じてお茶として飲んだり、料理に使ったりします。
外用剤として使うときは「艾葉」もしくは生の「ヨモギの葉」を煎じた汁に患部を浸けるか、お風呂などに入れたりします。外用として用いるときの効果としては、前述の免疫賦活作用、抗炎症作用から腰痛や腹痛、痔の痛みなどを抑えたり、血行を良くすることで体を温め、コリをほぐしたりします。また、ほかにもアトピー性皮膚炎や足裏などの皮膚炎などのような皮膚病の改善にも効果を発揮します。また、鍼灸治療で用いられるモグサはヨモギの裏の毛を集めたものでできているのをご存じの方も多いのでは。
蛇足ですが、西洋薬としてはマラリアの治療にも有効であることがわかっています。このように、どこでも何気なく生息している雑草として見られているヨモギですが、活用してみる手はありそうですね。

参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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