患者さんとの会話に役立つ“身近な生薬”

更新日: 2021年12月18日 河本 ちかこ

昔からの食べ物で実は生薬としても使われているものは

患者さんとの会話に役立つ身近な生薬の画像

生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。

昔からの食べ物で実は生薬としても使われているものは

  • ふかし芋
  • 水飴
  • 酢昆布
  • 麩菓子

答え

  • 水飴

水飴は「膠飴(こうい)」あるいは「飴糖(いとう)」という「補虚薬(ほきょやく)」になります。
「補虚薬」とはすべての虚を補い正気を助けることで、虚証を治療していく薬のこと。なお、「虚証」は気虚、血虚、陽虚、陰虚の4種類に分けられます。それぞれ少しずつ症状が異なり、「気虚」の人は気力がなく、疲れやすく、下痢をしやすかったり、風邪を引きやすかったりします。「血虚」の人は動悸が起こりやすく、夜寝にくかったり、寝られても眠りが浅かったり、手足がしびれやすいといったような症状が出やすいようです。また、「陽虚」の人は寒さに弱く、下半身がむくみやすかったり、トイレが近かったり、寝ても疲れがとれない傾向があるようです。そして、「陰虚」の人は喉が渇きやすく、手足がほてったり、便秘がちで、でてもコロコロとした小さい便だったりすることが多いようです。
「水あめ」はこれらの虚の状態を改善させる力があるので、腹痛や慢性の咳、呼吸困難の状態を和らげてくれます。また、痛み止めや虚弱体質の改善にも力を発揮します。
実際の漢方処方で「膠飴」が入っている代表的なものに「小建中湯」や「大建中湯」、「黄耆建中湯」などがありますが、これらのすべての処方の名前の中に「中」という文字が入っています。これは、この「中」という字はお腹のことを示していて、「建中」はお腹の状態を立て直すという意味になります。「小建中湯」は「桂枝加芍薬湯」に「膠飴」を加えたもので、「膠飴」が入ることで「中」にあたる胃腸の調子を整え、かつ胃腸に優しい処方になり、小さいお子さんや体力がない人の体力回復に使いやすい処方になるのです。
このように体に優しく、おいしい膠飴、丸くあめ玉のようになっているものも売っているので、疲れたときや胃腸の調子が悪いときなどになめてもよいかと思います。

参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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