道ばたにちょこんと咲いているかわいらしいお花が実は薬草だって知っていましたか?
生薬といえば、聞いたことのあまりないものや名前は知っていても実物をあまり見たことがないからちょっと取り入れるのには抵抗があると思われている方は少なくないのではないでしょうか。
でも実際はそんなことはないのです。普段何気なく使っているものや身の回りのものも立派な生薬として効用を持っているのです。そんな身近な生薬にスポットを当てて、取り上げて行くこのシリーズ。クイズ形式になっているので、楽しみながら患者さんとの会話に取り入れられる知識を広げてみてください。
道ばたでよく目にするかわいらしいお花で母乳を出しやすくするものは?
- タンポポ
- ハゼラン
- カタバミ
- ナズナ
答え
- タンポポ
タンポポといえば、明るい黄色いかわいらしいお花で、公園や道ばたでよく目にしますよね。子供の頃に綿毛に息を吹きかけて飛ばした覚えがある人は多いと思います。
ヨーロッパでは昔から花や葉を食用として使ってきました。日本でも季節になると八百屋さんやスーパーなどで花を売られているのを目にすることもあると思います。また、根を炒った後に細かくすりつぶしたノンカフェインのタンポポコーヒーは一時期話題になりましたよね。
その「タンポポ」、中医学では開花前の全草を乾かした物を「蒲公英(ほこうえい)」、根のみを乾燥したものを「蒲公英根(ほこえいこん)」とよび、清熱解毒薬として使用します。
「清熱解毒薬」とは、病(邪)が外から入り、裏(体の内部深く)に入ってしまったときなどに使う寒性や涼性のくすりのことで、体内の熱を取り除き、病を治す作用を持つものをいいます。
「蒲公英(根)」の持つ清熱解毒作用は体内にたまった熱を外に出すことで体調を改善するというものです。ほかにもデトックス効果も持ち合わせていて、体内にたまった毒素や老廃物を外に出してくれます。また、利尿作用も持つことからむくみを改善してくれたり、緩下作用から便通を改善してくれたりもします。さらに、胆汁分泌を促してくれる作用も持つので、肝の代謝を助けるとも言われています
ほかにも「蒲公英(根)」に特徴的で有名な作用は乳汁の分泌を促す催乳効果かと思います。「母乳が出ないときにはタンポポを」と言われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「蒲公英(根)」は抗菌作用も持つため乳腺炎を和らげる作用もあります。さらに弛緩作用も持ち合わせているので、リラックス効果も期待できることから産後のケアには最適な生薬といえると思います。ただし、「蒲公英(根)」は寒性なので、取り過ぎると体を冷やしてしまうことがありますので、日常的に楽しむ場合は炒ることで寒性の力を弱めてからの方がよいでしょう。
また蛇足ですが、「蒲公英(根)」は解毒して熱によるしこりを取り除く効果があるので、急性虫垂炎、上気道炎、扁桃腺炎、皮下の化膿の改善、目の充血や急性結膜炎などに使われます。
参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「薬膳学」東洋医学健康会 神戸中医学院