1. 薬剤師トップ
  2. 薬剤師コラム・特集
  3. 糖尿病の豆知識
  4. 【糖尿病】低血糖対策にブドウ糖の投与を指導するには

糖尿病の豆知識

更新日: 2019年12月20日 柳瀬 昌樹

【第7回】薬剤師のための糖尿病治療の豆知識
~患者さんの変化に気づき、正しく指導できるようになろう~

【第7回】薬剤師のための糖尿病治療の豆知識 ~患者さんの変化に気づき、正しく指導できるようになろう~の画像

連載第7回では、低血糖の症状とその対策について考えてみます。低血糖の症状にはブドウ糖の投与が一番ですが、そのやり方、それ以外の対策についても解説します。

【文献1】
Atkinson FS, Foster-Powell K, Brand-Miller JC (2008)
International Tables of Glycemic Index and Glycemic
Load Values: 2008. Diabetes Care 31: 2281-2283

低血糖のときの症状と対策方法〜ブドウ糖の投与を指導するには

重症低血糖も患者さんの予後を悪くします

今回は、急性期副作用として最も大切な低血糖についてまとめて行きたいと思います。高血糖が血管を痛め、さまざまな予後を悪くすることは有名ですが、重症低血糖も予後を悪くしていることは知っておられるでしょうか?

日本でも2012年の熊本宣言で行われたようにHbA1c7%未満を目指しましょうと示されました。しかし、同時に「低血糖が起こるくらいなら、目標とするHbA1cを少し緩めた方がいいですよ」となっており、低血糖の影響がいかに大きいかを表しています。そこで、低血糖の症状、対応策について整理していきたいと思います。

低血糖の症状は教科書通りではありません

低血糖の症状は、軽度な空腹感やイライラ感などからはじまります。また、多くの患者さんが訴えるのは、中等度の交感神経反射(暑いと感じるかどうかは関係のない異常発汗や手などの震えなど)です。重度になると低血糖昏睡を起こし意識を失ってしまうこともあります。

【第7回】薬剤師のための糖尿病治療の豆知識 ~患者さんの変化に気づき、正しく指導できるようになろう~ 低血糖の症状は教科書通りではありませんの画像

教科書では上記のような記載がされていると思いますが、現場で見ていると、想定を超える症状を訴える患者さんもおられます。例えば、私の患者さんでは、低血糖になると、風景が黄色がかったように見えると訴える人がいました。最初は、「そんな症状あるかな?」と疑っていましたが、患者さんの血糖値を測ると、低血糖症だとわかったこともあります。

ブドウ糖を食べたことがありますか?低血糖時の対応

低血糖が起こった場合、できるだけ素早く低血糖の状態を改善することが最優先となります。そのために、基本的にはブドウ糖を摂取するのが対応策となっていますが、実際はどうなんでしょうか?統計をとったわけではありませんが、いろいろな対処法を独自で行っている患者さんも少なくはありません。特に、近畿圏の女性は「飴ちゃん」保有率が高く「飴ちゃんがあれば大丈夫!」と伝家の宝刀となっていることもしばしばです。でも、やっぱり正しい対処はブドウ糖です!「α−GIを飲んでいる場合には…」などと例外を考えなくてもブドウ糖なら対応可能です。

ところで、薬剤師のみなさんは製薬メーカーさんが提供してくれているブドウ糖10gを食べたことがあるでしょうか?食べたことのない方は、一度食べてみてください。あまり美味しくない?それもありますが、10gという量がいかに食べにくいかを感じていただければと思います。私は低血糖対策として、できれば数包のブドウ糖と水分を用意するように指導しています。水分なしでは、低血糖が起こっているときには飲みにくいことと、水分があれば吸収が早くなるというのが理由です。

投与の際にも2点注意点があります。ひとつは低血糖時には、しっかりブドウ糖での対策を行った後、転倒などのリスクを考え症状が改善するまでできる限り動かないこと。ふたつ目は、1度症状が改善しても、後に再度低血糖が起こる可能性があるので、余分にブドウ糖の用意が必要なことです。世の中には携帯性に優れ、飲みやすい製品もありますが、少々費用がかかることがハードルになるかもしれません。その患者さんに適した対策の指導をお願いします。

【第7回】薬剤師のための糖尿病治療の豆知識 ~患者さんの変化に気づき、正しく指導できるようになろう~ ブドウ糖を食べたことがありますか?低血糖時の対応の画像
ブドウ糖がないときの甘い物はGI値を確認しましょう

みなさんは低血糖対策の中に、ブドウ糖がない場合の説明を入れていただいているでしょうか?そもそもブドウ糖を持っていなかったときや、最初の低血糖対策に使ってしまって、もう1回低血糖が来てしまった場合には、ブドウ糖以外での対策が必要です。

よくいわれているものとして「甘い物やジュースを飲みましょう」というものがありますが、この指導はいただけません。一部メーカーのパンフレットでも「ジュース」の記載になっていますが、落とし穴が散見されます。まず、甘いものといえば、ケーキやチョコが思い浮かびます。また、ジュースというと、フルーツジュースを想像する人もいます。「フルーツは甘いし、果糖が入っているし、血糖値は上がるでしょう!」と思いますよね?その通り、血糖値は上がります。ただ、どのように血糖値が上がるかが問題です。

食べ物にはグルセミックインデックス(以下GI値)というどれだけ速やかに血糖を上昇させるかの指標が決まっています。下記の表を見ていただければと思います。フルーツは概ねGIが低いので低血糖のレスキューには不向きです。ちなみにブドウ糖のGI値は100となっています。下の表を見て確認してみてください。

【第7回】薬剤師のための糖尿病治療の豆知識 ~患者さんの変化に気づき、正しく指導できるようになろう~ ブドウ糖がないときの甘い物はGI値を確認しましょうの画像

すべてのコラムを読むにはm3.com に会員登録(無料)が必要です

こちらもおすすめ

柳瀬 昌樹の画像

柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

キーワード一覧

糖尿病の豆知識

この記事の関連記事

この記事に関連するクイズ

アクセス数ランキング

新着一覧

26万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

医薬品情報・DI 糖尿病 調剤報酬改定 薬物療法・作用機序 服薬指導 薬局経営 研修認定薬剤師資格 医療クイズ 選定療養 疾患・病態