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糖尿病の豆知識

更新日: 2021年8月19日 柳瀬 昌樹

新しい薬を知ろう!3~ルムジェブ®とフィアスプ®~

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さて、今回は、超速効型インスリンの立ち上がりをさらに早く持続時間を短くした2つの製剤、いわば「超々速効型インスリン」をご紹介したいと思います。
ルムジェブ®は、日本イーライリリーが販売しているヒューマログ®に微量の添加物(トレプロスチニルとクエン酸)を加えることで血中濃度の立ち上がりを早くした製剤です。同じようにフィアスプ®は、ノボノルディスクファーマが販売しているノボラピッド®に添加物(ニコチン酸アミドとアルギニンなど)を加えることで血中濃度の立ち上がりを早くしています。今までの超速効型インスリンは、食直前(食事開始前15分以内)で投与することとなっていましたが、新しいルムジェブ®やフィアスプ®は、血中濃度の立ち上がりが早くなったため、食事開始2分以内、もしくは食事開始後20分以内の投与が認められています。食事開始前の投与時間の差は、特に1型糖尿病患者で大きな差を示す可能性があり、食後打ちが可能になったことに関しては、シックデイ時、食事が摂れるかどうかが分からない時のbolus投与に大きな融通性を示す可能性があると思います。この投与タイミングの差や血中濃度の立ち上がりの違いがどのような効果を示すかについて、それぞれの製剤で様々な臨床試験が行われていますが、今回はルムジェブ®でのデータをご紹介したいと思います。

ルムジェブ®とヒューマログ®の血中濃度動態の違い

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先ほどもご紹介した通り、上の図を見ていただくと、ヒューマログ®に比べてルムジェブ®で立ち上がりが早くなり、また、体内から消失する時間も若干早くなっていることが分かります。実際の数値で確認すると以下の表の通り、最大血中濃度となるまでの時間は12分程度短縮されており、曝露持続時間も88分程度短縮しているのが分かります。

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1型糖尿病患者に対する臨床試験

1型糖尿病患者に超速効型インスリンを食事開始時に打ってもらうと、血糖値の上がるタイミングとインスリンの血中濃度が上がるタイミングが合わず、結果、食後の血糖が上がりすぎたり、その後の低血糖につながっていたりしていました。そこで対策として食事の約15分前に従来の超速効型インスリンを打ってもらうこともありました。実際に、1型糖尿病患者で食事の15分~20分前に超速効型インスリンを投与した場合、食事開始前すぐに投与した場合と比較して、食後血糖値は約30%低下し、低血糖のリスクが減少することが報告されています。また、従来の超速効型インスリンを食後打ちした場合には、食後低血糖のリスクが上昇することも報告されています。(#1)これを踏まえた上で、ルムジェブ®とヒューマログ®の違いを見てみましょう。

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1型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験であるPRONTO-T1Dの結果を見ると、上記のグラフのように、ルムジェブ®食事開始時投与では、ヒューマログ®食事開始時投与と比較して、食後15分時点から有意に血糖値の抑制効果が強く出ています。このことからヒューマログ®よりもルムジェブ®では、食事開始時投与でも食後の血糖抑制効果が強くなり、食後血糖値が高くなりにくいぶん、その後の低血糖リスクも低くなる可能性があると考えています。さらに食後打ちでも、ヒューマログ®食事開始時打ちに比べて、さすがに食後1時間までは血糖抑制が低くなっていますが、食後3時間では、強く血糖抑制を示していることが分かります。

2型糖尿病患者に対する臨床試験

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2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験であるPRONTO-T2Dの結果を見ると、ヒューマログ®に比べて、HbA1cのベースラインからの変化量に関しては、非劣性であることが証明されており、実際の血糖値の変動を見ると食後30分~4時間までのすべてで有意に血糖抑制効果が強く確認されています。

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最後に

唯一、添付文章上で気になる点と言えば、ルムジェブ®でもフィアスプ®でも、添加物が加わったためでしょうか、注射部位反応や注射部位疼痛の記載があります。しかし、実際に使っていただいている患者さんから今のところそのような訴えを聞いたことはなく、これからも患者さんからの情報を集める必要があるかもしれません。

#1:Diabet Med. 2018 Mar; 35(3): 306–316.  Published online 2017 Nov 6. doi: 10.1111/dme.13525
出典:ルムジェブ 医療関係者向け情報サイト|日本イーライリリー 株式会社

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

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