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糖尿病の豆知識

更新日: 2022年10月11日 柳瀬 昌樹

高齢者糖尿病について詳しくなろう3

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第3回になる今回は、高齢者糖尿病の治療目標と治療方針について見ていきたいと思います。高齢者特有の注意点などに注目し、掘り下げてみましょう。

高齢者糖尿病患者さんの治療目標

高齢者の糖尿病患者さんの治療目標も非高齢者と同じように食事・運動・薬物療法によって、血糖、血圧、脂質、体重を包括的に管理し、血管合併症の発症・進展を阻止することですが、同時に生活機能やQOLの維持・向上を保ちながら、健康寿命を延ばすことにも目標範囲を広げる必要性があります。最終的には、スティグマに対する対策、併存する疾患の管理・予防を行うことで糖尿病でない方と同じ充実した人生を送っていただくことが目標となります。

糖尿病患者さんとスティグマ

スティグマとは、「広い意味では、個人の持つ特徴に対して、周囲から否定的な意味づけをされ、不当な扱いことをうけること」であり、糖尿病という病気であるだけで、不当な差別や偏見を受けることを意味しています。糖尿病とスティグマについてさまざまな研究が進み、やはり糖尿病患者さんは、スティグマにさらされていることが多いようです。糖尿病になってしまうことは、悪いことでもなんでもないのに、このようなイメージを持たれていると患者さんが感じることは許容できません。治療目標でも述べたように、最終的には糖尿病でない方と同じ人生を送っていただくことが目標なのに、糖尿病というだけでスティグマを感じていては、とても他の人と同じ人生を送ることはできないのです。このスティグマをなくすために、糖尿病協会をはじめとする各団体によるアドボカシー活動が行われています。

高齢者1型糖尿病の治療方針

1型糖尿病と言えば、学童期に起こる劇症型1型糖尿病のイメージが強いと思いますが、高齢でも1型糖尿病を発症することはあります。最近では、免疫チェックポイント阻害薬の使用がトリガーとなり、劇症1型糖尿病を発症する患者さんもおられますし、緩徐進行型1型糖尿病(SPIDDM)といって、ゆっくり進行するため一見2型糖尿病のように見える1型糖尿病も存在します(最終的には、膵臓に対する自己抗体の影響で内因性インスリン分泌は限りなくゼロに近づきます)。劇症型1型糖尿病でインスリン依存状態となれば、非高齢者と同様に迅速なインスリン療法の導入が必要となりますし、SPIDDMでも予後を勘案し、インスリン療法を必要とすることも多くなります。インスリン治療中では、特に低血糖の予防に努めることが重要であり、最近ではSMBGだけでなく、CGM、isCGM(FGM)といった持続的血糖測定も使用しながら患者さんの血糖値を観察していきましょう。もちろん、インスリン手技などの経時的な変化にも注意が必要となります。

高齢者2型糖尿病の治療方針

第1回のコラムでも書きましたが、高齢の2型糖尿病患者さんは、ADL、認知度の低下などにより、治療が難しくなる可能性などを常に考えておかなければいけません。また、生理的機能の低下などからも低血糖リスクが高くなったり、典型的な低血糖症状が出にくかったりするため、低血糖に気づきにくい可能性などにも注意しなければなりません。高齢者糖尿病患者さんの血糖コントロール目標(下図)によると、重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン、SU薬、グリニド薬など)を使用している場合には、夜間や気づかない低血糖などに対して十分スクリーニングするとともに、過度に低値のHbA1cでは、低血糖リスクが高いため、目標HbA1cに下限値が設けられています。また、高齢者の併存疾患であるサルコペニアなどを合併していることも少なくなく、SGLT2阻害薬の使用に関しては、脱水、性器感染症、正常血糖ケトアシドーシスに加えて、筋肉量の低下などにも注意が必要となります。各薬剤の使用に関しては、それぞれの薬剤の特性を理解し、有効性、安全性、シックデイへの対応のしやすさ、患者さんの嗜好性、自己負担額など、さまざまな患者さんを取り巻く要素を勘案し、選択する必要性が出てきます。これについては、別の回でまとめていきたいと思います。

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参考:高齢者糖尿病治療ガイド2021

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

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