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糖尿病の豆知識

更新日: 2022年11月10日 柳瀬 昌樹

高齢者糖尿病について詳しくなろう4

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第4回目である今回は、いよいよ具体的な支援・治療に話をうつしていきたいと思います。まずは、しょくじについて考えてみましょう!

高齢者糖尿病患者さんの食事療法の考え方

まず、高齢者においても適正な総エネルギー摂取量とバランスを図る食事療法は、高血糖、脂質異常症あるいは肥満の是正には有用であるとされています。一方で、高齢者の場合、低栄養になることも少なくなく、低栄養により感染症、転倒、骨折、フレイル、認知症を発症するリスクが高くなってしまいます。高齢者の肥満に対して、食事や運動による減量でメリットがみられるのはBMI30以上の前期高齢者までです。よって、後期高齢者やフレイルのある患者さんの場合には、体重を減らさないようにして、十分にエネルギーとたんぱく質を摂取することが望ましいとされています。ご高齢の方で少しぽっちゃりした方とやせている方を見ると、ぽっちゃりしている方の方がなんとなく元気なイメージがありますし、残っている歯の数などにも関係があるかもしれませんが、たんぱく質(肉や魚、豆類など)を多く摂取する方の方が元気な方が多いという感じがしませんか?さらに、大切なことは食のQOLを考慮に入れることだと言われています。いかに健康によい食事であっても、「おいしくない」「楽しくない」食事では、心の満足が満たされません。高齢者でなくてもそうかもしれませんが、ご高齢の方にとっては、食べたときにお腹の満足感と共に心の満足感を感じていただけるように心がけましょう!どんなものを、誰と、どんな場所(シチュエーション)で食べてもらうかが重要ですね。

高齢者の適正なエネルギー摂取量指示

高齢者では、性別、年齢、肥満度、身体活動量、病態などを考慮し、個別化したエネルギー摂取量を設定することが重要であるとされています。今までは、どんな患者さんでも標準体重としてBMI22に相当する体重当たりのカロリーを計算し、エネルギー摂取量としていましたが、最近は、それぞれの年齢によって最も総死亡率が低くなるBMIを使用した「目標体重」当たりのカロリー計算で対応するように変更されました。(下図参照)

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目標体重に対して、患者さんの身体活動レベルや病態に応じたエネルギー係数をかけることでエネルギー摂取量を設定しますが、目標体重と現体重に大きな乖離がある場合には、柔軟な係数で対応する必要性があります。

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食事のバランスについて

一般的に糖尿病の食事療法では、指示エネルギー量の50~60%を炭水化物から摂取し、たんぱく質は20%まで、残りを脂質で摂取することとされています。ただし、脂質の割合が25%を超える場合には、飽和脂肪酸を少なくするなど、脂肪酸組成にも配慮が必要となります。

日本人の高齢者では、栄養調査上、男女共にたんぱく質の割合が少なく、これを増やすことが重要だと考えられます。J-EDIT研究において、後期高齢者では、「野菜や魚をよく食べる」群の方が、「肉や脂肪をよく食べる」群よりも死亡が少なかったというデータもあるため、野菜や魚(野菜は血糖値や脂質異常の観点からも緑黄色野菜の摂取がおすすめ)を意識して食べていただいた方がよさそうです。

さらに、腎不全のない75歳以上の高齢者糖尿病患者さんでは、たんぱく質の摂取量が少ないほど死亡率が高くなるという報告もあり、健康な高齢者でも1.0~1.2g/kg/day、低栄養または低栄養のリスクのある高齢者では、1.2~1.5g/kg/dayのタンパク摂取量が推奨されています。

例えば、体重60㎏の健康な高齢者の場合でも、1日60~72g程度のたんぱく質を取る必要があり、部位や種類によってタンパク含有量は異なりますが、鶏肉ならば約20g/100g、木綿豆腐ならば約20g/300g(一丁)になりますので、鶏肉でも300~360g、木綿豆腐なら3丁以上摂らないといけないことになります。やはり意識してたんぱく質を摂るようにしなければならないようです。

参考:高齢者糖尿病治療ガイド2021

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会
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