高齢者糖尿病について詳しくなろう7
第7回目の今回は、前回の続き。高齢者糖尿病患者さんの薬物治療2をお送りしたいと思います。
⑤DPP-4阻害薬(血糖依存性インスリン分泌促進系)
血糖依存的にインスリン分泌を促進、グルカゴン分泌を抑制することで血糖値を改善するお薬です。血糖降下作用が血糖依存的であるため、高齢者でも低血糖を起こしにくい安全な薬とされています。また、血糖改善に際して体重増加が起こりにくいということもメリットの1つとして挙げられます。ただし、SU薬などと併用する場合には、低血糖には注意が必要となりますし、意外にこの薬が原因で食欲が落ちてしまう高齢者も報告されていますので、注意して経過を観察しましょう。また、多くはありませんが、DPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡の報告があり、皮膚症状が生じた場合には鑑別が必要となります。
⑥GLP-1受容体作動薬(血糖依存性インスリン分泌促進系)
GLP-1受容体作動薬を体内に入れることにより、DPP-4阻害薬と同じく血糖依存的に血糖降下作用を示す薬剤です。単独では低血糖を起こしにくく、高齢者でも使用しやすい薬剤ですが、多くが自己注射製剤であること、最近ではセマグルチドの経口薬も発売されていますが、空腹時に少量の水で内服し、少なくとも30分間の絶飲食を守る必要があり、服薬順守率には注意しなければなりません。また、副作用として嘔気・嘔吐などの消化器症状には注意が必要となり、製剤によっては体重減少を示す薬剤もあるため、サルコペニア・フレイルの患者さんには慎重な判断が求められることになります。
⑦スルホニル尿素(SU)薬(血糖非依存性インスリン分泌促進系)
膵臓のβ細胞を刺激し、インスリン分泌を促進することで血糖降下作用を示す薬剤です。高齢者においては腎機能など代謝機能が低下していることも少なくなく、また、シックデイの頻度も高いことから、重症・遷延性の低血糖を惹起しやすいと言われています。また、肥満を助長する可能性も高く、高度肥満患者さんに使用するべきではありません。使用するとしても、グリクラジド20㎎やグリメピリド0.5㎎などできるだけ少量で使用することが推奨されています。
⑧速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)(血糖非依存性インスリン分泌促進系)
SU薬と同じ作用機序により膵β細胞からのインスリン分泌を促進することで血糖降下作用を示すお薬です。SU薬に比べて効果の立ち上がりや消失が早く、高齢者糖尿病患者さんに多い食後高血糖に用いられます。ただし、食直前に内服しないと食後高血糖抑制効果はほとんど期待できないため、、食直前の服薬順守ができるかどうかがポイントとなります。高齢者糖尿病では、重症低血糖を危惧する薬剤に分類されているため、目標HbA1cや低血糖の有無にも注意すべき薬剤です。
参考:高齢者糖尿病治療ガイド2021