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薬剤師がおさえておきたい 2016年度調剤報酬改定

更新日: 2016年4月15日 藤田 道男

かかりつけ薬剤師指導料をめぐり大手・中堅・地場薬局間に温度差Vol.2

2016年度改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」を巡って薬局業界の対応が分かれている。積極的に算定に動く大手チェーンと施設基準の届け出は行うものの、算定には慎重な姿勢を示す中堅薬局との温度差が窺える。

患者アンケートでの「かかりつけ薬剤師同意書」集めはNG

かかりつけ薬剤師指導料、同包括管理料の算定には患者の署名付き同意書が求められるが、改定告示以降、独自の同意書を作成して積極的に患者への働きかけを行う薬局がある一方で、日本薬剤師会が策定する“ひな形”を待つとの薬局も目立った。

日薬は2016年3月30日付けで、患者同意書と患者に提示する、かかりつけ薬剤師の勤務状況の様式例を公表した。また、かかりつけ薬剤師の勤務状況については、薬局名、担当薬剤師名、住所、電話番号、曜日・午前午後ごとの勤務状況をお薬手帳に貼付できるサイズの表にまとめ、シールまたはスタンプとする例を示した。(日本薬剤師会:平成28年度調剤報酬改定等に関する資料)

一方、厚労省が3月31日に発出した「疑義解釈資料(その1)」では「過去のアレルギー歴や後発医薬品の使用意向確認のアンケート等の中で、かかりつけ薬剤師についての意向を確認した場合、その署名をもって同意したとみなさない」「かかりつけ薬剤師の業務内容、かかりつけ薬剤師を持つことの意義、役割等について、当該指導料を算定しようとする薬剤師が改めて説明した上で、かかりつけ薬剤師に対する患者の同意を取得する必要がある」と回答しており、アンケートによる曖昧な同意取得にくぎを刺した。

参考:厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)」より(3月31日)

かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料
(問)かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の患者の同意取得について、例えば、患者が最初に来局した際にアレルギー歴や後発医薬品を使用することの意向等を確認するアンケートの中でかかりつけ薬剤師についても意向を確認した場合、そのアンケートの署名をもって同意を取得したことになるのか。
(答)アンケートを行う際に、アンケートとは別に、かかりつけ薬剤師を選択することの意向確認を行うことは差し支えないが、同意の取得に当たっては、かかりつけ薬剤師の業務内容、かかりつけ薬剤師を持つことの意義、役割等について、当該指導料を算定しようとする薬剤師が改めて説明した上で、かかりつけ薬剤師に対する患者の同意を取得する必要がある。また、アンケートへの署名ではかかりつけ薬剤師の同意を取得したことにならないので、別途、かかりつけ薬剤師への同意に係る署名であることが明確にわかるようにすること。

患者同意取得に積極的な大手チェーンと二の足を踏む中堅・地場薬局

4月以降、「かかりつけ薬剤師指導料」が算定できるようになったが、薬局各社の動向をみると、大手は積極的に算定に動く姿勢を見せる一方、中堅以下にはなおも慎重なところが少なくない。

大手チェーンは、店内にポスターやリーフレットを掲示しているほか、独自のブラウンバックを用意するなど患者へのアピールに懸命だ。中には数千件の同意書を取り付けた薬局もある。

一方、患者同意書の取り付けに慎重な姿勢を示す都内の中堅薬局では「かかりつけ薬剤師指導料は、これまでやってきた薬歴管理指導業務にちょっとプラスしただけであり、それで患者負担が増えることには抵抗がある」と語る。明確なプラス効果を患者は実感できないのでは、との立場だ。


「ストーカー被害心配」要件満たせてもかかりつけ薬剤師としない

別の薬局でも「かかりつけ薬剤師に同意してもらうためには薬剤師の勤務表を提出する必要があるが、女性が多い職場だけに通勤状況等に配慮しないと不測の事態も起こりかねない」と懸念する。この薬局の場合は、「仮に要件を満たす薬剤師であってもかかりつけ薬剤師としないこともあり得る」と語る。

他の薬局でも「勤務表の提出によって勤務薬剤師がストーカー行為に合わないとも限らない」と懸念する。中堅薬局では薬剤師確保に苦労しており、帰宅途中での安全確保にも配慮せざるを得ない。思わぬところに落とし穴があったと言えそうだ。

医療経営コンサルティングネグジット総研が2016年3月11日にプレス発表したアンケート調査では、かかりつけ薬剤師指導料の新設について、「今後の薬剤師像が明確になった」が47.3%を占めるなど好意的に受け止められている半面、「積極的に算定準備している」が21.4%、「算定可能か調査中」が41.7%と分かれている。また、m3.com意識調査においても、かかりつけ機能の算定を「検討している」が31%、「検討していない/基準を満たせない」が35%、「わからない」が20%だった。薬局間で対応に温度差が広がっている。

【m3.com意識調査】「かかりつけ機能」の評価、算定する?


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藤田 道男
ふじた みちお

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、(株)じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために一般社団法人「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。
主な著書は『2025年の薬局・薬剤師 未来を拓く20の提言』『かかりつけ薬局50選』『残る薬剤師 消える薬剤師』など多数。

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