薬剤師がおさえておきたい 2016年度調剤報酬改定

更新日: 2016年6月23日

薬局の“質的変化”への期待 (最終回)Vol.4

日本薬剤師会の「保険調剤の動向」によると、2015年度の医薬分業率(受取率)は全国平均で70%に到達した。今日では外来患者に対して院外処方せんを発行するのが当たり前と受け止められているが、分業率が1%にも満たない時代を知っている薬剤師にとっては感慨深いものがあろう。

参考資料:
厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」
健保連の中医協提出資料「医薬分業について」
日本薬剤師会「保険調剤の動向」

現状にとどまるのでは「薬局の未来はない」

分業元年と称される1974年(昭和49年)の分業率はわずか0.6%であり、70%はとてつもなく遠い数字だった。当時、30%の段階に至れば加速度的に伸びるだろうと見られていた予想通り、30%を超えた90年代後半から2000年にかけて飛躍的に伸長した。

しかし、分業率が70%に到達したとはいえ、手放しで喜べる状況にはない。その要因は大別して二つある。一つは、院外処方せん発行が限界に近づき、今後の飛躍的な増加は望めないこと。二つ目は、「分業」に対して患者メリットの具現化など、目に見える費用対効果が期待さていることだ。この状況に対応するためには、これまでの薬局調剤の在り方を根本的に見直すことが必要であり、現状にとどまるならば「薬局と分業の将来はない」と言っても過言ではない。

数字を見ても、外来患者を中心とした現在の処方せん調剤は限界に近づいていることが明らかだ。処方せん枚数は14年度に比べ1.1%の増加だったが、投薬対象患者数は前年比で300万人余り減少した。この傾向は08年度から続いており、14年度では44都道府県で減少、増加は首都圏の3県にとどまった。15年度も38道府県で減少、増加したのは9都県だった。

処方せん枚数の伸びが鈍化しているのは長期処方せんの増加の影響が大きいが、投薬対象患者数の減少は、分業そのものの限界が近づいていることを物語る。分業率が84.6%と全国トップの秋田県では12年度から処方せん枚数が減少している。この間、分業率はアップしており、分業率と処方せん枚数はリンクしていないことが分かる。

今後は外来処方せんを待つだけの経営スタイルでは、薬局経営自体がじり貧になるのは目に見えている。積極的に居宅や施設に出向いて在宅医療・介護分野に進出する必要がある。

今後の分業は「独立」ではなく「連携」がキーワード

分業の質的転換についてはどうか。分業率70%までの道のりは多分に医療機関と薬局との経済的インセンティブによるところが大きい。医療機関は院外処方せんを発行することで院内調剤よりも技術料や在庫負担、人件費等が有利に働き、薬局は門前に店舗を構えることで効率的な処方せん応需につなげてきた。この間、行政による処方せん発行促進策や診療報酬上の優遇などの措置も採られてきた。

その結果、ここ10年間、薬局調剤医療費の伸びが突出している。04年を100とした場合の医療費の伸びは10年間で125、医科入院外114だが、薬局調剤は167。院外処方せん発行により、薬剤費が薬局調剤に移行するため、一概に薬局調剤だけが原因とは言えないが、薬剤費を除く調剤技術料と医科入院外の医療費(薬剤料含む)でも薬局調剤医療費の伸びは突出している。

こうしたことから、患者メリットや医療費の費用対効果の面から薬局調剤に対する批判が高まった。二度手間・負担増を強いる医薬分業を敢えて進めるのは、医療の質向上と効率化を図るためだが、そうした期待に応えていないとの批判である。

厚労省の武田俊彦政策統括官(社会保障担当)は先ごろ開催された女性薬局経営者の会の講演で、薬局調剤の現状について、「昨年までは良かったかも知れないが、今年からは質的に変化しなければならない」と発言した。「患者のための薬局ビジョン」が公表され、調剤報酬において「かかりつけ薬剤師指導料」が新設されたことを念頭に、薬局ビジョンに示された内容に沿って薬局が変われるかどうかを問いかけたものと言える。

薬局ビジョンは、(1)服薬情報の一元的・継続的管理とそれに基づく薬学的管理・指導、(2)24時間対応・在宅対応、(3)かかりつけ医など医療機関等との連携強化― を求める内容となっている。ここで注視しなければならないのは、医薬分業の質的転換が求められているということである。

従来の分業の概念は「医」と「薬」が独立してそれぞれの専門性を発揮することとされていたが、これからは「連携」がキーワードになることを示している。医と薬の連携では、とくに投与後の服用実態の把握を通じた治療効果の確認、副作用発現防止、さらには処方提案等が重要になる。

患者は薬を飲むために生活しているのではない。服用もさることながら、食事や排泄といった生活全般の状況を把握しながら患者のケアに当たることが求められる。そこでは医師や訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパー等との多職種連携が不可欠だ。これまでの薬局の業務は、処方せんを受付、服薬指導をして投与することで終わっていた。しかし、一元的・継続的管理のためには投与後のフォローが重要となる。

「薬局=医療提供施設+小売業」の強みを活かす

薬局が求められている質的変化のもう一方の課題は「健康サポート機能」である。これは日本再興戦略2013で謳われた健康寿命延伸策の一環として位置付けられるもので、薬局ビジョンや健康サポート薬局の報告書にも明記されている。健康サポート薬局の届出は今年10月から開始されるが、今一つ関心が薄いようだ。

薬局は “医療提供施設”であるが、一方で小売業の側面も持つ。これが医療機関との決定的な違いである。健康寿命延伸が国是となっている現在、これを薬局の強みとして捉える必要がある。健康サポート機能の充実は、薬局のかかりつけ化にもつながる。薬局が質的に変化できるかどうかの試金石でもある。


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藤田 道男
ふじた みちお

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、(株)じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために一般社団法人「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。
主な著書は『2025年の薬局・薬剤師 未来を拓く20の提言』『かかりつけ薬局50選』『残る薬剤師 消える薬剤師』など多数。
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