第4回 薬局の“質的変化”への期待 (最終回)
日本薬剤師会の「保険調剤の動向」によると、2015年度の医薬分業率(受取率)は全国平均で70%に到達した。今日では外来患者に対して院外処方せんを発行するのが当たり前と受け止められているが、分業率が1%にも満たない時代を知っている薬剤師にとっては感慨深いものがあろう。
参考資料:
厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」
健保連の中医協提出資料「医薬分業について」
日本薬剤師会「保険調剤の動向」
現状にとどまるのでは「薬局の未来はない」
分業元年と称される1974年(昭和49年)の分業率はわずか0.6%であり、70%はとてつもなく遠い数字だった。当時、30%の段階に至れば加速度的に伸びるだろうと見られていた予想通り、30%を超えた90年代後半から2000年にかけて飛躍的に伸長した。
しかし、分業率が70%に到達したとはいえ、手放しで喜べる状況にはない。その要因は大別して二つある。一つは、院外処方せん発行が限界に近づき、今後の飛躍的な増加は望めないこと。二つ目は、「分業」に対して患者メリットの具現化など、目に見える費用対効果が期待さていることだ。この状況に対応するためには、これまでの薬局調剤の在り方を根本的に見直すことが必要であり、現状にとどまるならば「薬局と分業の将来はない」と言っても過言ではない。
数字を見ても、外来患者を中心とした現在の処方せん調剤は限界に近づいていることが明らかだ。処方せん枚数は14年度に比べ1.1%の増加だったが、投薬対象患者数は前年比で300万人余り減少した。この傾向は08年度から続いており、14年度では44都道府県で減少、増加は首都圏の3県にとどまった。15年度も38道府県で減少、増加したのは9都県だった。
処方せん枚数の伸びが鈍化しているのは長期処方せんの増加の影響が大きいが、投薬対象患者数の減少は、分業そのものの限界が近づいていることを物語る。分業率が84.6%と全国トップの秋田県では12年度から処方せん枚数が減少している。この間、分業率はアップしており、分業率と処方せん枚数はリンクしていないことが分かる。
今後は外来処方せんを待つだけの経営スタイルでは、薬局経営自体がじり貧になるのは目に見えている。積極的に居宅や施設に出向いて在宅医療・介護分野に進出する必要がある。