2024年10月開始の長期収載品の選定療養の対象は?よくある質問に回答
「薬局のアンテナ」のてっちゃんです!
今回は、2024年10月から始まる「長期収載品の選定療養(以下、選定療養)」を取り上げます。
誤解を恐れずに言うならば、「患者に特別負担」とは「薬剤料の一部が医療保険外(自費)になる」という仕組みです。患者さんの負担金額が大きく増える可能性があり、日々多くのご質問を頂いております。
今回は、その中でも特に多いご質問を取り上げて解説していきます。
※2024年7月12日時点の情報(筆者見解含む)となります。今後、解釈等が変わる可能性もありますのでご了承ください。
選定療養の主なポイント
図)筆者作成
※医療上の必要性があると認められる場合等は選定療養の対象外になります
Q1:後発医薬品のある先発医薬品(以下、長期収載品)は全て選定療養の対象になりますか?
いいえ、全てではありません。後発品の発売後5年未満かつ置換率50%未満の先発医薬品は選定療養の対象外となります。
ただし、対象外の成分は全体の3%ほどしかなく、ほぼ全ての長期収載品が対象となると考えて差し支えありません。
具体的な対象薬剤は厚労省マスタ からご確認頂けます。
選定療養の対象となる薬剤
図)筆者作成
Q2:長期収載品が処方された場合、患者希望かどうかはどのように判断するのですか?
患者が長期収載品を希望する場合は、選定療養の対象になり得ます。
そこで、長期収載品が処方された場合に、患者希望によるものかどうかが明確になっている必要があります。
そのような背景から、2024年10月以降は処方箋様式が変更となります。
変更後の様式では、現行の後発医薬品への変更不可欄が「変更不可(医療上必要)」「患者希望」の2つに分かれます。
これにより患者希望かどうかが分かるようになります。
2024年10月以降の処方箋様式
ただし、2024年10月以降も当面の間は、従来の処方箋様式を手書き等で修正することにより使用することができます。その場合の記載方法についても取り決められており、以下の図にまとめました。ご参考下さい。
2024年10月改正前の処方箋様式における記載例
図)筆者作成
Q3:使用感を理由に長期収載品を希望する患者は、選定療養の対象になりますか?
選定療養の対象になります。
正確には「使用感については医療上の必要性としては想定していない」とされています。詳細は以下の疑義解釈にてご確認頂ければと存じます。
皮膚科の塗り薬、眼科の点眼薬、整形外科の貼付剤などの処方箋受付が多い薬局さまは、あらかじめ処方医と対応を相談頂くと良いかと思います。
問3 使用感など、有効成分等と直接関係のない理由で、長期収載品の医療上の必要性を認めることは可能か。
引用:長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)
Q4:選定療養の対象外である「医療上の必要性」の具体的なケースは?
令和6年(2024年)7月12日に示された疑義解釈(その1) で具体的に示されています。
具体的には、以下のケースが医療上の必要性があるケースとして示されています。(文言一部要約)
「医療上の必要性」があるケース
① 効能・効果に差異がある場合
② 治療効果に差異がある場合
③ ガイドラインにおいて、後発医薬品へ切り替えないことが推奨されている場合
④ 後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上
の違いにより、長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合
このうち、④については医師等への疑義照会は要さず、薬剤師が判断することも考えられるとされています。よって、後発医薬品へ変更可の処方であったとしても、後発医薬品の剤形では飲みにくい等の薬剤師の判断であれば、長期収載品で調剤し、選定療養の対象外とすることも可能となります。
その場合は、調剤した薬剤の銘柄等について、医療機関に情報提供することが必要になりますので、忘れないようにしましょう。
Q5:生活保護や公費を使用する患者さんは選定療養の対象になりますか?
非常に多く寄せられる質問です。
情報が出揃っているとは言えない中ですが、現時点での筆者の見解をお示しします。