生活保護や公費の患者さんは選定療養の対象になる?選定療養の仕組みを解説
「薬局のアンテナ」のてっちゃんです!
今回は2024年10月から始まる「長期収載品の選定療養」について、最も多く寄せられる質問を取り上げます。
その質問とは、「生活保護や公費の患者さんは選定療養の対象になるのか?」です。
患者さんに日々対応している薬局現場としては非常に気になるポイントだと思います。
関連情報:長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その2)/2024年8月21日発表
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001292186.pdf
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選定療養については別途コラムを掲載中です。
2024年10月開始の長期収載品の選定療養の対象は?よくある質問に回答 | m3.com
併せてご一読頂くことでより理解を深めて頂ければ幸いです。
結論1:選定療養=長期収載品調剤ではありません
2024年10月から、長期収載品を希望される場合は、特別の料金をお支払い頂くことになりました。
2024年10月以降導入される、長期収載品の選定療養の概要
引用:厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について
これは、長期収載品の調剤について選定療養という仕組みを導入するということであり、まずは、選定療養という仕組み自体は決して新しいものではないということを、理解することが重要です。
選定療養という仕組みがすでにあって、その中に今回の長期収載品調剤が加わる、ということです。
それでは、選定療養とはどういう仕組みなのでしょうか…?
これを理解することが、「生活保護や公費の患者さんは選定療養の対象になるのか?」という疑問へのヒントになります。
選定療養の仕組みを正しく理解しよう
語弊を恐れずに表現すると、選定療養とは「特別に医療保険と自費を組み合わせても良いですよ」という仕組みです。
いわゆる混合診療は日本では禁止されているため、本来は、保険診療と自費診療は組み合わせて提供は出来ないのですが、選定療養に該当していれば、特別に認められています。
入院時の差額ベッド、大病院の初診などが有名です。これらは自費扱いですが、通常の保険診療と一緒に提供することが認められています。
選定療養自体の仕組み図
ここでは、以下の点を押さえておきましょう。
選定療養を理解するためのポイント
- 選定療養とは「特別に、医療保険と自費を組み合わせて良いですよ」という仕組み
- 選定療養は元々ある仕組みであり、その仕組みに2024年10月以降は長期収載品の調剤も含まれることに。(選定療養=長期収載品の調剤ではない)
結論2:生活保護の患者さんは原則、選定療養の対象外です
繰り返しになりますが、選定療養の仕組みが、「特別に、医療保険と自費を組み合わせて良いですよ」と言うことであれば、生活保護の患者さんの大半は、選定療養の対象外であることが分かります。
そもそも生活保護の患者さんの多くは、医療保険を適応されず、生活保護法による医療扶助という仕組みで医療が現物支給されているからです。
医療保険の対象でなければ、当然、医療保険上のルールである選定療養の対象にはならない、ということになります。
医療保険の対象・非対象(例・生活保護受給者)の選定療養解説図
今後、生活保護法の見直しなどで、生活保護の患者さんについても選定療養の対象になる可能性はありますが、現時点(2024年8月21日)では対象外となっています。
なお、選定療養の話とは別になりますが、そもそも生活保護の患者さんは、後発医薬品による調剤が原則です。医療機関も薬局も、その原則に沿って対応していく必要がある点は改めて確認しておきましょう。
また、この考え方は、医療保険を持たない公費単独(公害など)の患者さんも同様となります。
選定療養が医療保険上のルールである以上、医療保険を持たないのであれば、対象外となります。