選定療養の患者負担割合は4分の1から大幅に増える?薬局の対応は?
「薬局のアンテナ」のてっちゃんです!
2025(令和7)年11月6日に厚生労働省の検討会で、長期収載品の選定療養費の見直しについて議論がなされました。
長期収載品の選定療養費の見直しは、患者さんや薬局の運営に大きな影響を与える可能性があります。
そこで今回は、具体的な見直しの内容案や見直し背景、薬局への影響について取り上げます。
患者さんから話題に出たり、説明が必要な機会も想定されるため、本コラムでしっかりと理解を深めましょう。
1.選定療養の見直し案の内容は?
患者負担割合の引き上げが、案として出ています。
現在は、患者さんが先発医薬品を希望する場合、先発医薬品と後発医薬品の差額の1/4を、特別料金としてお支払い頂いています。
その1/4を1/2や3/4、1/1にする案が示されています。
選定療養の見直しの方向性
引用元:後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について /厚生労働省
引用元:薬剤給付の在り方について ー長期収載品・先行バイオ医薬品・OTC類似薬ー /厚生労働省
例えば、患者さんが先発品を希望した場合の選定療養費が550円(500円+税50円)だった場合、現行の価格差の1/4が1/2に見直されると1,100円に、3/4なら1,650円に、1/1だと2,200円となりますので、患者さんの負担が大きくなります。割合によって影響がとても大きくなるので、薬局が患者さんにしっかりと説明する必要がでてきます。
そのほか、検討会の資料にはありませんが、選定療養費の対象範囲の拡大も案として出ています。
現在は、後発医薬品が上市(発売)されて5年以上、もしくは、後発医薬品への置換率50%以上のどちらかを満たすと原則として選定療養の対象になります。
引用元:令和5年12月8日 第172回社会保障審議会医療保険部会 資料1 /厚生労働省
上図の通り、現状でも多くの長期収載品が選定療養の対象薬剤となっていますが、更にその範囲を拡大することが検討されています。
2.選定療養の負担割合、なぜこのタイミングで見直し?
政治の話になりますが、結論としては、日本維新の会が自民党と連立政権を組んだためです。
かねてより日本維新の会は、OTC類似薬の保険適用除外を始め、現役世代の社会保険料を下げることを主張しておりました。
その中で今回、自民党と日本維新の会が連立政権を組んだため、日本維新の会の政策が現実味を帯びてきたということです。
日本維新の会と自民党が交わした「連立政権合意書」には以下が盛り込まれています。
「OTC類似薬」を含む薬剤自己負担の見直し、金融所得の反映などの応能負担の徹底など、25年通常国会で締結したいわゆる「医療法に関する3党合意書」および「骨太方針に関する3党合意書」に記載されている医療制度改革の具体的な制度設計を25年度中に実現しつつ、社会保障全体の改革を推進することで、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す。
引用元:2025年10月20日 自由民主党・日本維新の会連立政権合意書
(https://o-ishin.jp/news/2025/images/624de5f22900f6e88e892abb49d3fc70ef3cac92.pdf)
つまり、「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」は連立政権を組む上での一つの約束事であると言えます。
自民党としては日本維新の会の協力を得ながら政権運営をしていく必要があるため、日本維新の会が掲げてきた「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」を前に進める必要があるということです。
更にもう一歩踏み込むと、「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」には選定療養費の見直しも含まれると考えられます。
OTC類似薬の薬剤自己負担の見直しはハードルが高い一方で、選定療養費の見直しについては、制度上は行政通知の一部を修正することで対応できます。
よって、「OTC類似薬の薬剤自己負担の見直し」の方は早期実現が難しくても、「選定療養費の見直し」の方は早急に実現に向けて動き出したいという思いも透けて見えてきます。
3.患者負担割合が見直されたときの薬局への影響は?
もし、長期収載品の選定療養費について、患者負担割合が4分の1から1/2・3/4・1/1などに増えた場合、どのような影響が出るでしょうか。