薬剤師力を上げる!DI業務のシン常識

更新日: 2023年7月30日 病院薬剤師だまさん -病院薬剤師ブロガー-

薬あるところにDI業務あり

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はじめに

はじめまして、病院薬剤師だまさんと申します。18年間勤務した高知市の基幹病院を今年6月に早期退職後、現在は太平洋を臨む長期療養型施設でパート薬剤師として勤務しています。

このコラムでは主に病院薬剤師を対象に、DI業務に関するシン(新)常識を提示しつつ、情報過多の時代に埋没しない医薬品情報との付き合い方を模索していきます。

医薬品の「情報の品質」という視点

突然ですが、皆さんは「医薬品の価値」は何によって決まると思いますか?いきなり難問で相済みません(苦笑)。

少し古い出典ですが、2012年の「ファルマシア(日本薬学会の機関誌)」」では、医薬品の価値は「製剤の品質」と「情報の品質」で担保されていると書かれていました。この言葉を見たとき私は、「製剤の品質」を担うのは製薬企業ですが、「情報の品質」を担うのは薬剤師だと思い至りました。

なぜなら薬剤師には、適切に医薬品情報の収集・評価を行い、医薬品の効果を最大限に確保しつつ副作用を最小限に抑える役割があるからです。言い換えれば薬剤師は「医薬品適正使用の担い手」です。

そう考えると、「調剤業務、製剤業務、病棟業務、チーム医療」などあらゆる場面で医薬品情報は重要です。なにせ、医薬品情報が紐付かない薬剤師業務なんて、ほとんどないのですから。

そこで、元日病薬会長・全田浩氏の名言「薬あるところに薬剤師あり」のオマージュとして、一つ目のシン常識を提示しておきます。

シン常識❶:「薬あるところにDI業務あり」

「アンサングシンデレラ」があぶり出した事実

薬剤師コラムの読者の中には、コミック『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』を購読されている方も少なくないと思います。2020年には石原さとみ主演でテレビドラマ化もされました。

多少誇張した描写はあるものの、「薬剤師の仕事のリアルを理解してもらいたい」という監修者・富野浩充先生(焼津市立総合病院)の情熱が伝わってくる作品で、第1話からずっと愛読しています。

その登場人物の話です。長年DI業務に携わってきた私としては、DI担当薬剤師が活躍するシーンをずっと楽しみにしていたのですが、いつまで経っても登場すらしません。ようやくDI担当薬剤師(穂上)が登場したのは、第51話「供給不足」でした。これも、全国的な後発医薬品供給不足がなかったら、登場はもっと遅れていたかもしれません。

アンサングシンデレラは、なぜDI業務を取り上げないのか?「薬あるところにDI業務あり」だったはずなのにでも、本作品は薬剤師業務のリアルを描いているのだし…。そんなセルフトークが駆け巡る中、衝撃の事実を知ることとなります。

それは実習生が持参した市販の実務実習テキストでした。読んでみると、ないのです、DI実習の頁が丸ごと!昔のテキストには25頁程割かれていたはずなのに、これって…。かろうじてSBOsは残っていましたが、薬物療法の章に集約されていました。

私は実習生が来るたびに「大学でDI業務を習うか?」とたずねるのですが、皆口を揃えて「ほとんど教わっていない」と答えます。もちろん「添付文書の読み方」や「文献検索の方法」は学ぶそうですが…。

もしかして、大学教育や実務実習ではDI業務が軽視されている?

もちろん行政レベルでは20年以上も前からDI業務の強化を呼び掛けていますし、薬剤管理指導料や病棟薬剤師業務実施加算の要件にもなっています。DI業務の軽視など、絶対にあってはならないことなのですが…。富野先生は、その事実を連載当初から気付かれていたのかもしれません。この一件は、私にとって根が深過ぎてゾッとする出来事でした。

その後調べてみたところ、DI実習の件は問題視されていたらしく、令和4年度改訂版の薬学教育モデル・コア・カリキュラムで「医療における意思決定に必要な医薬品情報」が追加されていました。しかし、9年間(平成25年~令和4年)に渡る空白期間は、大量のいわば「DI業務のゆとり世代(!?)」を世の中に送り出してしまいました。今この瞬間にも、DI業務に精通した先達が続々と引退しているというのに…。これは看過し難い問題です。そんな危機感から筆を執った次第です。

アクションプラン

最後に薬剤師の皆さんにメッセージです。

今からでも遅くありません。

DI業務を基礎から学び直しましょう。

なぜなら「薬あるところにDI業務あり」なのだから。

次回は医薬品情報に関する「最新」の重要性についてお伝えします。

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病院薬剤師だまさん -病院薬剤師ブロガー-
びょういんやくざいしだまさん

病院薬剤師を34年、DI担当として通算15年のキャリアがあります。その知識と経験をもとに、2005年に開設したブログ「病院薬剤師って素晴らしい!」をはじめ、YouTube・Twitterを通じて情報発信をしています。 現在は高知市にある長期療養型施設でパート薬剤師として勤務しつつ、医薬品集制作代行業「医薬品集制作の大学堂」の開業に向け準備中です。 著書:「もうひとつのフォーミュラリー第1巻 ~薬剤師向けの医薬品集は存在しない」(Kindle出版)

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