後期からは“ハイブリッド授業”を開始 Vol.2
コロナ禍でさまざまなニューノーマルな転換が求められる大学教育。大きな転換を経た後も社会状況に合わせて更なる調整が図られています。3密を回避しながらも続行する薬学教育の現場ではどんな調整が図られているのか、昭和薬科大学の宇都口直樹副学長、井上能博教授、渡部一宏教授に大学教育現場の現状について語ってもらいました。
副学長 宇都口直樹教授
井上能博教授
渡部一宏教授
オンラインに加え対面授業も開始
4月に始まったオンライン授業導入から約8カ月が経ちました。その後はどうなりましたか?
宇都口副学長 4月から延期となっていた入学式に関してはさまざまな意見が聞かれましたが、学生さんたちの心情にも配慮し、10月14日に令和2年度の入学式を挙行しました。また、9月28日から後期授業がスタートしています。後期では対面とオンラインのハイブリッドでの授業に切り替えました。これは例えば、1,2年生が大学に出てきているときは、3年生は自宅でオンライン授業を受けるといった形です。このシフト作りは全て大学事務教務課で担当していただいています。
井上教授 本学の講義は、コロナ禍以前は一学年240人の学生を120人づつ2部屋に分けて授業を行ってきましたが、今期は教室での学生の密を避けるために収容率を半分にして4教室で授業をしています。1つの教室に教員が入り、授業映像を残りの3教室に中継するといった具合です。
工夫を凝らした基礎薬学実習
前期で中止になった学内で実施予定だった基礎薬学実習がどうなったのかお聞かせ願えますか。
井上教授 後期に予定している実習に加え、前期に延期した実習全てを今年度内に終わらせたいと考えています。実習はグループワークとなり、どうしても物理的間隔が狭くなり密になるシチュエーションができがちです。そのため全学生にフェイスシールドを配布し、マスクを着けて実施するようにしました。
初めは恐る恐る行っていた学生さんたちも、最近では段々肩の力が抜けてきたようで、大学全体がそのような空気になってきたように思います。そういった取り組みをすることで親御さん方にも少しは安心していただけているのではないでしょうか。実際、現時点(11月26日現在)でのクラスター発生は報告されていません。その点、渡部先生の感染症防止に関する指導が大変功を奏しているのではないかと思います。
渡部教授 学生さん職員ひとりひとりの対策の徹底のおかげだと思います。これを継続していくことはとても大事な事だと思います。
話は変わりますが,大学の臨床薬学の講義の中には、多職種連携チーム医療を学ぶためのスモールグループディスカッション形式の演習があります。医学部、薬学部、看護学部の学生たちが1つの少人数のチームを作って症例課題について話し合い、患者の問題を皆で解決していく演習授業で、本学では毎年,聖マリアンナ医科大学医学部,東京大学医学部・薬学部、杏林大学医学部、聖路加国際大学看護学部,東京純心大学看護学部と連携して取り組んでいます。これも今年は対面での実施は難しい状況なので、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使ってリモートでスモールグループディスカッションを行いました。できるだけ例年の対面でのディスカッション形式に近いプログラムになるよう努めました。私は本学出身者(OB)でもあり、病院薬剤師として実際の医療現場でチーム医療にも携わってきました。私が薬剤師になった頃は,医師や看護師とのコミュニケーションの敷居がとても高くチーム医療に参画するには大変苦労しました。薬学部は医療系の他学部との交流が少なくその部分を大学教員として何とかしたい、常にそう考えていました。昨今は、薬学部のみならず医学部、看護学部の教育コアカリキュラムの中に多職種連携教育が組み込まれています。本学は単科大学ですので、他校とも連携をして取り組んでいきたいと考えています。
困難な状況の中での卒業研究
研究にも影響があると思われますが、どのように取り組まれていますか?
宇都口副学長 本学では4,5,6年生が卒業研究に取り組みます。難しい状況下ではありますが、薬剤師になるにあたり卒業研究を通して問題解決力を向上させることは必須です。ですから、特に5年生は現在もほぼ毎日学校に来て研究をしています。
ただ、研究室の中には培養細胞を扱う狭い空間もあるので、そこに同時に入る人数を制限するなどの感染対策を徹底しながら取り組まなければなりません。朝から夕方までいることも多いので、昼食を持参する学生さんもいます。以前の学生さんたちの机は丸い形になるように配置していたのですが、最近では感染対策のため、外向きに一列に設置。間にパーテーションも設置しました。
学生さんたちが実際の研究活動を通して学ぶことは多くあります。大学側のスタンスとしては、オンライン授業を増やせば感染防止にはプラスですが、大学に出てきて実際に手を動かしたり、実体験しないと学べないことがあるので、頑張って研究活動を続けている状況です。
完全オンライン授業をハイブリッド授業に変えたことで、薬学教育に必須の実習、研究も包含できることとなりました。感染対策を講じながらの授業再開は生徒の側にとってもさまざまな影響を与えているに違いありません。次回、気になる試験についてもお聞きします。