オンライン授業のメリット・デメリットとは Vol.3
COVID-19発生から約1年。昭和薬科大学ではコロナ禍にあっても「教育を決して止めない」というスタンスを保ち、講義のあり方にも工夫を凝らしています。副学長の宇都口直樹教授と井上教能博授、渡部一宏教授に新しい授業形態に対する学生たちの評価や授業を行う際の心がけについて話を伺いました。
副学長 宇都口直樹教授
井上能博教授
渡部一宏教授
高評価も続出「授業評価アンケート」
オンライン授業に対する学生さんたちの反応を教えてください。
宇都口副学長 5月のゴールデンウィークごろに一度,学生に対してアンケートを取りました。本学では定期的に「授業評価アンケート」というものを取っています。授業内容に対する学生さんの評価を聞いてグラフにまとめ、結果を見て授業内容の改善に役立てるためのものです。「分かり易さ」「興味深さ」「満足度」など、項目ごとに細かく分けて集計しています。
オンライン授業になって私としては、「この授業は分かりにくかった」といった評価が多くなるのではないかと思っていたのですが、意外にも対面での授業より評価が上がった先生がかなり多くいらっしゃいました。これはオンラインという制限があっても何とか分かりやすくしようと努力がなされた結果だと思います。また、オンライン授業でも十分な教育が提供できていることを示す1つの目安ではないかと考えています。
井上教授 その結果の中には「通学時間で疲れなくて済む」「教室よりも自分の居心地のいい場所で聞けるので集中できる」といった声がありましたね。
渡部教授 コロナ禍になり私の担当する実習では,クラウド型ラーニングマネジメントシステム(LMS)「manaba(マナバ)」上に動画などのコンテンツを作り、今まで授業時間内にしていた手技や実験方法のデモンストレーションを前もって見てきてもらい予習を行うように勧めています。そのようにプログラムすることで,学生さんは対面での実習時に説明を行うことなくすぐに取りかかれますので、実際の実習時間を効率よく行えます。
こうすることで実習プログラムを分散したり,実習時間の短縮により学生さんの帰宅時間を夕方のラッシュアワーに遭わずに帰すことも可能となり時差通学になります。これはコロナ禍でのニューノーマルになるかもしれませんね。
定期試験はどのように行われたのですか?
井上教授 前期末の試験方法については他校の方とも情報交換しながら進めてきました。学生さんたちは登校すること自体を危険に感じていたり下宿から実家に戻っていたりする状況でしたので、Web上で行わざるを得ないだろうというのが近隣のほとんどの大学の意見でした。
ですが、今年も例年の学生と同様の力をつけてくれているのかどうかを知るためには、やはり同じ状況下で計るほうがいいだろうといった意見もあり、結局、前期定期試験は学内で対面で実施することにしました。
その結果、ほとんどの学生さんが受験のために登校してくれました。通常より2回多く試験の機会を設け、登校して試験を受けることに対する親御さんや本人への不安にも配慮しました。
学生全体をさまざまな面からサポート
例年と比べて結果はどうでしたか?
宇都口副学長 単位を修得できなかった人の数が昨年度と比較して減ったように思います。ただ、今回は結果として大きな問題はなかったものの、成績から見ると二極化していることが見てとれます。昨年より高得点を取る人の数が増加している一方で、成績が大きく下がっている人も増えているということです。
成績が向上した人はしっかり勉強する時間がとれたことが一因かと思われますが、他方で、通常なら友達どうしの日常会話の中から得られる励ましや情報交換がないため、つい怠けてしまうといったことが生じているのかもしれません。ですので、そうした弱い学生さんのフォローも引き続きしていかなければならないと考えています。
井上教授 本学では以前より「アドバイザー制度」という制度を設けており、定期的にミーティングを開いています。成績不振の学生さんには担当のアドバイザーから個別に相談の機会を作り、サポートをしていますので、今後もそのような制度を活用し学生全体のサポートをしていきたいと思います。
オンライン授業開始後初の試験は高得点を取る人が増えました。逆に、残念ながら成績不振に陥る人も出ていることを考えると、大学のサポートと生徒のモチベーション如何によっては今後の動向もだいぶ変わってくるのではないかと思わせる結果となりました。ハイブリッド講義開始後の結果を含め、今後の薬学教育の現場により良い変化が期待されます。