コロナ禍での薬学教育 今後はどうなる? Vol.4
コロナ禍にあっても「教育を止めない」という方針を崩すことなく薬学教育に取り組む昭和薬科大学。今なお続くコロナ禍での教育は今後どうなるのでしょうか。また、コロナ禍での教育に今後活かしていける部分があるのでしょうか。副学長の宇都口直樹教授、井上能博教授、渡部一宏教授から話を伺いました。
副学長 宇都口直樹教授
井上能博教授
渡部一宏教授
質問への回答は対面がベター
先生方それぞれ対面とオンライン授業の違いをどう感じていますか?
井上教授 オンライン授業では多くの教員が内容をPowerPointに入力し、そのスライドを画面共有で学生に提示しています。板書中心の配信で解像度が低く見づらいとの声があったのですが、iPadのアプリ上に描き込み、画面共有することで学生さんたちに効率的に情報提供ができています。この点はオンラインのいい面かと思います。
半面、これまでは黒板に書きながら振り返っては学生さんたちの表情を見、伝わっているかどうかを確認しながら授業を進めていましたので、オンラインだとリアクションがつかみづらいというのはあります。それでも「どうですか」と声をかけると、チャット機能で「もう一度お願いします」とか「それは見えません」などの反応はありますね。
宇都口副学長 私の授業では質問の数がとても増えました。オンラインだとメールやチャットができるので、対面時よりも気軽に質問できるようです。しかし、対面であればすぐにやり取りができるので、学生がどこを分かっていないかを把握するのが容易ですし、答えるのにそう長い時間は取らないのですが、メールなどではそうはいきません。答えを文章で説明するのは一苦労です。(笑)
渡部教授 私もチャットやメールよりも,学生さんと直接話して質問に答えたほうが良いと思ってますので、「メールで返信して回答できないので、10分でもいいからオンラインで質疑応答する機会をつくりませんか」と返信し、個別に質疑応答の時間を作ったりしています。学生さんはコロナ禍において大学の授業に真剣に取り組んでいますね。以前だと「少し遅刻してもいいや」とか「今日はさぼっても大丈夫」といった学生さんもいたのですが、最近は本当に学生さんの大学での学修への取り組み方に対して切実に感じるものがあります。
井上教授 私の場合、メールで答えることもありますが、物理も担当しているので言葉で説明するよりも絵に書いた方が分かりやすい場合もあります。その場合、手描きの図をいれた説明文をPDFにして送ったりもしています。
変わっていく教育現場の状況
今の教育形態は今後どうなっていくと思われますか?
井上教授 全てのツールをまだ十分使いこなせている感はありませんが、学生さんたちのニーズにもだいぶ応えられるようになってきたと思います。その面では授業内容改善のいいきっかけができたように思います。今後も学生さんたちの反応をみて改善していくつもりです。
宇都口副学長 オンライン化で先生方が少しでも良い授業を提供しようといろいろと工夫されています。クラウド型ラーニングマネジメントシステム(LMS)「manaba(マナバ)」を使った工夫も加速されたような気がしています。通常通りに大学に登校できない部分はマイナスとしても、結果的に教育改革の面では先生方にプラスに働いている部分もあるのではないかと感じます。
コロナ禍渦中の就職活動は?
今年の就職活動の傾向についてお聞かせください。
渡部教授 毎年3月1日から就職活動解禁になりますが、今年はコロナ禍でオンラインの説明会や面接に切り替えて行われる企業や医療機関が増えました。そうしたシステムをしっかり確立できていた大手の企業や医療機関では、人材獲得に成功している傾向がみられました。
宇都口副学長 大学の責務としては社会に役立てる人材を輩出していかなければなりません。それを実現させるために感染対策をしつつ「教育を決して止めない」ということを最優先にしてきました。単科大学ですので小回りが効きくのが本学の良い点だと思います。これも教員職員の一体感から成し得る結果だと思います。
コロナ禍での昭和薬科大学における教育は、さまざまな面で多くの医療教育を施す教育機関に参考となるのではないでしょうか。また、今後の教育改革において先進的な取り組みを導入する上での一助となるでしょう。