ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚

更新日: 2020年4月14日 Dr.ホンタナ

薬剤師の現在地を知る3冊

薬剤師の現在地を知る3冊の画像

薬剤師のみなさんこんにちは!ドクター・ホンタナ(Fontana)です。外科医として30年以上を過ごし、数年前に一線を退きました。根っからの本好きで臨床を離れたいまも一般書、専門書問わず医療関連の書籍を月に何冊も手に取ります。今回、薬剤師が読んで楽しめなおかつ仕事にも役立つ、そんな本を紹介するコラムを連載することになりました。よろしくお願いします。

このコラムを書くために、まずは「薬剤師の現在地を知りたい」と思いました。そこで、病院薬剤師の姪っ子が遊びに来たときに「普段はどんな勉強してるの?」とたずねてみると「薬剤師がヒロインの漫画があるからそれを読んだらいいよ」とわが家に漫画を3冊置いていきました。第一回はまずその漫画からスタート。

病院を舞台に若手薬剤師が奮闘するヒット漫画

「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり(1~3)」(荒井ママレ/医療原案:富野浩充)。最近は、テレビも漫画も医療モノが増えていますが薬剤師が主人公というのは初めて。多くの薬剤師さんはすでに読んでいるのかもしれませんが、タイミングよく今後、石原さとみさん主演でドラマ化が予定されています。

「もしかして、薬剤師って いらなくない?」と主人公の自己否定から始まるこの漫画、薬のエピソード(禁煙してテオフィリン中毒、エピペンと高血圧の薬とグルカゴンの関係など)も勉強になりますが、現在の医療そのものが内包する問題点にも薬剤師目線で切り込んでいます。漫然と抗生物質を出し続ける老医、調剤薬局の薬剤師のやりがい問題、ジェネリック、ターミナルケア・・・。薬剤師目線って医師よりも患者さんに近いんですよね。また、薬剤師といっても働き方はいろいろでそれぞれに苦労が多いこともよくわかりました。まだ読んでないという方はぜひ!ドラマも楽しみです。

薬剤師の現在地を知る3冊 アンサングシンデレラの画像

アンサングシンデレラ
病院薬剤師 葵みどり(1~3)

(荒井ママレ/医療原案:富野浩充)

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薬剤師の不足と過剰は何によってもたらされたのか

漫画には薬剤師がたくさん登場するので薬剤師が何人くらいいるのか調べてみました。 薬剤師と医師はそれぞれ30万人強でほぼ同じくらいですね。そんな薬剤師や医師、看護師の有資格者数のコントロールはどうやっているのでしょうか?それに答えを出してくれる本が「医師の不足と過剰」(桐野高明)です。医師をタイトルに掲げてはいるものの前半は国家ライセンス業の弁護士・公認会計士・歯科医師・薬剤師・柔道整復師について、それらの職業に関わる社会の需要変化・国の制度変更がその職業に及ぼした影響を知ることができる貴重な記録になっています。

これらの国家ライセンス、新規ライセンス者数は養成施設の入口(つまり入学者)と出口(つまり試験合格者)のバランスでコントロールされます。医歯薬については長い専門的養成期間を終えて出口で大量にはじかれるというのは考えにくくこれまで入口(つまり入学定員数)でコントロールされてきました(資格試験方式)。逆に弁護士・公認会計士の場合は、入口を広く出口(資格試験)を難関にしてコントロールしてきました(選抜試験方式)。どちらの方式にせよコントロールが狂うと資格取得者が激増します。食べていけない弁護士や歯科医師が最近話題になっているのはコントロールがうまくいかなかった(養成機関の作りすぎや長寿が原因)からです。役所のきままな制度変更で梯子をはずされるなんてこともまれではないです。いま激増しているのは柔道整復師ですが、薬剤師と医師は微妙なポジションにあります。本書を読んで薬剤師の将来をアタマに入れておくのも大事です。

薬剤師の現在地を知る3冊 医師の不足と過剰の画像

医師の不足と過剰

(桐野高明)

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日本最大級の巨大病院を黎明期から支えた薬剤師の姿を描く

最後は、記憶に残る薬剤師、田中良子さんが登場する本「ゴッドドクター 徳田虎雄」(山岡淳一郎)。この田中良子さん、薬剤師になって7年目に偶然黎明期の徳洲会病院に就職します。そこからは運命的に徳洲会グループの全ての薬剤・物品の購入を差配する徳洲会の中核を担うまでになります。運に恵まれていたとも言えますが、自分を変える勇気みたいなものを感じます。この本、田中さんに限らず徳洲会の歴史群像の一大スペクタクルになっていて読み応えありますよ。

薬剤師の現在地を知る3冊 ゴッドドクター 徳田虎雄の画像

ゴッドドクター 徳田虎雄

(山岡淳一郎)

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まとめ

というわけで、第一回は私自身も薬剤師の現在地を知りたいという視点で本を選んでみました。感じたのは薬剤師と医師は行政に振り回されているうちに互いにやや疎遠になっているのではないかということです。もう少し親密な情報連携必要ですよね。
次回からはテーマ別に知って得する本を紹介していきたいと思っています。第二回は抗体医薬やオプジーボなどを産み出した「免疫」がテーマ。「免疫」ってなんだか難しそうですがおもしろく読めて理解も進む、そんな本があるんです。お楽しみに。(ドクター・ホンタナ・・・Fontanaとはイタリア語で「泉」を表します)

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Dr.ホンタナ
勤務医

元外科医 昭和の31年間で医者になり、平成の31年間は外科医として過ごし、令和と同時に臨床を離れました。本を読んだりジャズ(ダイアナ・クラールの大ファン)を聴いたり、プロ野球(九州時代からのライオンズファン)の追っかけをやってみたり。ペン・ネームのホンタナは姓をイタリア語にしたものですが、「本棚」好きでもあるので・・ダジャレで

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