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ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚

更新日: 2020年9月27日 Dr.ホンタナ

コロナ禍の今こそ読書で知識をアップデート

コロナ禍の今こそ読書で知識をアップデート(1)

薬剤師のみなさん、こんにちは。定年後の医師Fontanaが薬剤師のみなさんに役立つ本を紹介してきた「薬剤師の本棚」、6回シリーズの最終回となりました。連載と時を同じくして新型コロナウイルス感染症が世界中に広がりました。テレビやネットには毎日、感染症の専門家が登場し、ああでもない、こうでもないと、これほど多くの医学的なことばが人々の日常に溢れた日々は過去になかったのではないでしょうか。

コロナ一色となる一方では患者さんが病院受診をひかえたため開業医など一般の医療機関は深刻な経営上の危機を迎えるという事態も出現、薬剤師や医師だけでなく看護師、介護士など多くの医療・介護の現場は一般社会とはちがった影響が出てきています。

抗原や抗体、自然免疫に獲得免疫、T細胞にサイトカインストーム、これらの専門用語が日常的に飛びかう時代です。医療に関わる知識が2倍になるのに要する時間(ダブリングタイム)は70日程度らしいです。われわれ医療のプロにとっては毎日が知識アップデートの日々。遊びや旅行に行きにくい今こそ、ステイ・ホームで読書三昧、知識アップデートのいいチャンスですよ。

座右の本(1)「今日の治療薬2020」

最終回の今回は、わたし自身が医師として常にデスクサイドで使っているいわば座右の本から3冊紹介します。まずは定番、南江堂「今日の治療薬2020 」。ほとんどの薬局にも揃えてあるのではないでしょうか。薬の名前から効能や副作用を調べるためにこの本は必携ですね。患者さんが他の医療機関で処方された薬を持参してこられたらこの本で調べます。毎年買い替えますが最新版は職場で、また帰宅してから疑義照会の電話をいただくこともありますので。1年前のものは自宅で使っています。事典と同じですが大事なのは購入したら、巻末についている見出しタック用のシールを貼ってすぐに望みのページを開けるようにしておくこと。そして常日頃、手間をいとわず引くこと、

薬の名前で困るのはジェネリックの場合に患者さん自身がどんな薬を飲んでいるのかわかっていない場合が多いことです。「何という薬をのんでいますか?」「アメルです」・・・というのはよくある出来事です。確かに薬そのものには書かれている文字で一番目立つのは「アメル」なのですが、こういう場合は薬の実物を見て調べるしかない。薬剤師さんが服薬指導するときには薬に書かれている「アメル」や「TOWA」はブランド名であって薬の名前ではないということも教えてあげてください。

座右の本(1)「今日の治療薬2020」の画像

今日の治療薬2020

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座右の本(2)「薬がみえる」

薬のことをもっと詳しく調べるとき開くのはMEDIC MEDIA「薬がみえる」シリーズです。同じ出版社の「病気がみえる」もなかなか楽しい本ですが、薬が見えるはよりいっそう内容充実ですばらしい。カバーに書かれている「チーム医療を担う医療人共通のテキスト」は本当にその通り。

  • 2014年 vol. 1 神経系・循環器・腎泌尿器
  • 2015年 vol. 2 代謝内分泌・産婦人科・血液etc.
  • 2016年 vol. 3 消化器・呼吸器・感染症・悪性腫瘍

の3巻構成でしたが、2020年4月28日に完結編の「薬がみえるvol. 4 (薬力学・薬物動態学・相互作用・製剤学・薬剤の使用と実務) 」が4月28日に発売されました。医療は7割がた薬物治療ですので、疾患と薬を一緒に解説してくれるこのシリーズは医師にとっても勉強になるし、たくさんのイラストも絵が上品でわかりやすく楽しく読み進めることができます。

座右の本(2)「薬がみえる」の画像

薬がみえるvol. 4 (薬力学・薬物動態学・相互作用・製剤学・薬剤の使用と実務)

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座右の本(3)「むかしの頭で診ていませんか?」

薬物治療はすべての分野でどんどん進化しており、医師も自分が使い慣れた好きな薬にばかりこだわっているとあっというまに古臭いものになってしまいます。そう考えると処方する医師といってもさまざまなレベルがあり薬剤師さんが処方箋を見る場合に、いったいどんな臨床医が処方したのだろうと考えるということも多いでしょう。

日常診療のアップデートにぴったりなのが南江堂「むかしの頭で診ていませんか?」シリーズ。このシリーズ、糖尿病、循環器、血液、呼吸器、腎臓・高血圧、膠原病、神経と分野広げて増殖中です。今回は「むかしの頭で診ていませんか?糖尿病診療をスッキリまとめました 」を開いてみましょう。糖尿病治療薬、増えました。メトホルミンにはじまり、DDP-4剤やSGLT-2阻害剤はどういうタイミングで使うのか、使う場合の注意点は何か(特に腎機能とのかかわりなど)が端的に書かれています。一方で、いきなりSGLT-2阻害剤というアメリカ発のトレンドなども触れられていて、薬剤師にとって医師の処方意図を知るために便利です。特に糖尿病と循環器、腎臓・高血圧あたりはぜひとも薬剤師さんにも読んでもらえたらと思います。むかしの頭で調剤していませんか?

むかしの頭で診ていませんか?糖尿病診療をスッキリまとめましたの画像

むかしの頭で診ていませんか?糖尿病診療をスッキリまとめました

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まとめと次のシーズンに向けて

繰り返しになりますが医療は日進月歩。常に学び続けなければなりません。そのために効果的なのは、これと決めた定番の本を手元にそろえ、ここが大事なところですが、その本の版が新しくなるたびに買い替えて最新版にしておくことです。学生時代の教科書をいまだに使っている・・・は通用しません。新しい版になるまでの期間も次第に短くなっています。皆さんの健闘を祈ります。

さて、「薬剤師の本棚」は今回で一旦終了しますが11月から「薬剤師の本棚・シーズン2」として再開予定です。新シーズンではエンタメ風味も取り入れ「こんなところにも薬がかかわっているのか!」と感じてもらえるようなブックガイドをめざします。11月からもよろしくお願いします。

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Dr.ホンタナ
勤務医

元外科医 昭和の31年間で医者になり、平成の31年間は外科医として過ごし、令和と同時に臨床を離れました。本を読んだりジャズ(ダイアナ・クラールの大ファン)を聴いたり、プロ野球(九州時代からのライオンズファン)の追っかけをやってみたり。ペン・ネームのホンタナは姓をイタリア語にしたものですが、「本棚」好きでもあるので・・ダジャレで

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