1. 薬剤師トップ
  2. 薬剤師コラム・特集
  3. ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚
  4. 「おじさん社会」と「低用量ピル」の微妙な関係

ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚

更新日: 2020年12月15日

おじさん社会と低用量ピルの微妙な関係

ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚の画像(1)

薬剤師の本棚・続篇スタートです

薬剤師のみなさん、こんにちは!元外科医のドクター・ホンタナ(Fontana)です。数年前に一線を退きいまは一般書・専門書問わず医療関係の書籍を読んではレビューを書いています。その中から薬剤に関わるものをセレクトし「ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚」(全6回)を連載させていただきました。幸い好評だということで、このたび「続・薬剤師の本棚」として新シーズンをスタートすることになりました。このシーズンでは、本を切り口に医療・薬剤をとりまく社会的テーマや人間ドラマを読み解いてみたいと思います。第1回は日本社会における女性医療の問題点を「低用量ピル」「人工妊娠中絶」というキーワードで読み解いてみます。

おじさん社会と低用量ピル

低用量ピルのことを考えるきっかけは松田青子さんの「持続可能な魂の利用」という本でした。この本のカバーに書かれた「この国からおじさんが消える」・・・というフレーズにどっきりして、まさにおじさんが読んでみました。ストーリー的には、女性の立場から見たおじさん社会の滑稽さや生きづらさがたっぷり描かれています。まさに「おじさんあるある」のオン・パレードですので女性読者の共感も多いでしょう。

私自身も含めて「おじさん」は女性からこんな風に見られているのかということがじわじわとわかっていきます。最近の職場では(いや、家庭でも)おじさん的な上から目線にならないように気を付けてはいますが、この本にはこれもアウトかと驚くところも多い。それだけわたし自身のおじさん成分が多いということなのでしょうね。「上から目線」「おじさん」「アイドルグループ」「オタ活」「デモ」など最新世相を盛り込んで読後感爽やかな脱「おじさん」革命ファンタジー。特に女性の薬剤師さんにお薦めです。

この本の印象的なエピソードをひとつ挙げるならば、主人公の女性がレディースクリニックで避妊のための低用量ピルを処方してもらう際、無意味な煩雑さに辟易する場面です。いわく「日本社会は、女性が楽をすることに、快適に暮らすことに、選びとることに、なぜか厳しい目を向ける社会だった。女性が自分の体をコントロールすることをよしとしない社会だった」・・なるほど、そうなんだ、女性がピルで避妊することにはそんなハードルがあったのかと気づいた次第です。

薬剤師さんはご存じでしょうが、日本における避妊薬はすべて処方薬なんですね(編集部注:2020年10月執筆時点)。だからといって保険がきくわけではなく自費診療です。欧米や東南アジアの多くの国では、低用量ピルやアフターピル(緊急避妊薬)が薬局やドラッグストアで手軽に入手できます。価格も安く、日本円にして数百円程度です。一方、日本の場合、認可されているピルの種類が少ない上に値段も高く医師の処方が必須となっています。そのせいで、避妊のためにピルを服用しようとする女性は相当な心理的・時間的・経済的負担を強いられます。

このため、日本ではいまだに膣外射精やコンドームといった不確実でしかも選択権が男性にある避妊法が主流です。この状況は先進国においてはまさにガラパゴスなんです。一方でピルの危険性(血栓症など)は過大に喧伝されています。そこには避妊の主導権は男にありとする日本のおじさん社会の目にみえないプレッシャーがありそうだとは思いませんか。

ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚の画像(2)

持続可能な魂の利用

松田青子著

中央公論新社1500円税別

2020年5月刊行

※クリックするとm3ストアにリンクします

人工妊娠中絶天国 日本

すべてのコラムを読むにはm3.com に会員登録(無料)が必要です

Dr.ホンタナの画像

Dr.ホンタナ
勤務医

元外科医 昭和の31年間で医者になり、平成の31年間は外科医として過ごし、令和と同時に臨床を離れました。本を読んだりジャズ(ダイアナ・クラールの大ファン)を聴いたり、プロ野球(九州時代からのライオンズファン)の追っかけをやってみたり。ペン・ネームのホンタナは姓をイタリア語にしたものですが、「本棚」好きでもあるので・・ダジャレで
QRコード 薬キャリLINE

「薬剤師タイプ診断」や「薬剤師国家試験クイズ」薬剤師の最新情報や参考になる情報を配信中!右のQRコードから登録をおねがいします!

キーワード一覧

ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚

この記事の関連記事

  • 医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持
    マンガで学ぶ「患者さんの”健康”な未来を考える」 2021年11月30日 小原 一将
    医療をテーマにした有名なマンガ、ニッチなマンガを紹介しながら、そのストーリーやキャラクター、あるいはそのセリフから、私たち薬剤師が学ぶべき内容を考える『医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持』シリーズ。今回は、”健康”を管理される社会を描いたSF作品である「<harmony/>」を紹介します。進歩する医療や、新型コロナウイルスの広がりなどが影響して、”健康”でありたいという我々の意識は日々高まっています。この作品には、私たち薬剤師が”健康”を管理するということの意味や意義について、改めて考え直す重要な示唆が多く詰まっています。
  • 医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持
    マンガで学ぶ「チーム医療に求められる薬剤師の役割」 2021年11月20日 小原 一将
    医療をテーマにした有名なマンガ、ニッチなマンガを紹介しながら、そのストーリーやキャラクター、あるいはそのセリフから、私たち薬剤師が学ぶべき内容を考える『医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持』シリーズ。今回は、放射線技師を題材にした「ラジエーションハウス」を紹介します。放射線科医としての医師の資格を持ちながら、放射線技師として働く主人公の唯織の考えや働き方は、チーム医療に必要とされる薬剤師がどのような働き方をするのかを考えるきっかけになります。
  • 医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持
    マンガで学ぶ「高いプロ意識を持つ薬剤師であるために」 2021年11月3日 小原 一将
    医療をテーマにした有名なマンガ、ニッチなマンガを紹介しながら、そのストーリーやキャラクター、あるいはそのセリフから、私たち薬剤師が学ぶべき内容を考える『医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持』シリーズ。今回は、災害現場で活躍する医師を題材にした「Dr.DMAT~瓦礫の下のヒポクラテス〜」を紹介します。医療の現場では、様々なプロフェッショナルが患者さんの治療に関わります。その中で、薬剤師が持つべきプロ意識とはどのようなものかについて、瓦礫の下での医療を描いた本作品のシーンを交えて考えていきます。
  • 医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持
    マンガで学ぶ「薬剤師としていつもそこにいる理由」 2021年10月19日 小原 一将
    医療をテーマにした有名なマンガ、ニッチなマンガを紹介しながら、そのストーリーやキャラクター、あるいはそのセリフから、私たち薬剤師が学ぶべき内容を考える『医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持』シリーズ。今回は、病理医を題材にした「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」を紹介します。「10割の自信を持って診断する」という主人公岸の生き方や考え方は、さらなる成長を求められている私たち薬剤師にとって、学ぶべきことと忘れてはいけないことを示してくれます。
  • 医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持
    マンガで学ぶ「薬剤師の職能に誇りを持って働くために」 2021年10月7日 小原 一将
    医療をテーマにした有名なマンガ、ニッチなマンガを紹介しながら、そのストーリーやキャラクター、あるいはそのセリフから、私たち薬剤師が学ぶべき内容を考えてる『医療マンガで学ぶ薬剤師の矜持』シリーズ。今回は、麻酔科医をテーマにした「麻酔科医ハナ」を紹介しながら、薬剤師の職能に誇りを持って働き、若手薬剤師を導けるようになるために必要なことを考えます。

アクセス数ランキング

新着一覧

21万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。ご利用は全て【無料】です。

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

新型コロナ 業界動向 医療クイズ SOAP 薬歴 ebm 感染症対策 薬剤師あるある アセスメント 調剤基本料